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【俳句鑑賞】春の航小浦小浦に人降ろし 桃子

春の航小浦小浦に人降ろし 辻桃子

2月4日は立春。といえども、まだまだ北風に体を苛められている頃合い。この日を過ぎると、体感的には冬のままであっても、小さな春らしいものを見ると心が浮き足だっていることに気が付く。

私は普段、とても水辺を好む。息づまると水があるところに行きたくなる。東京でいたときもそうで、浅草の隅田川の川辺や勝鬨橋や築地市場を眺めることができる川辺沿いに行っていた。

しかし、冬だけは水辺を愛する足が引っ込んでしまう。さすがに寒いので水辺紀行はお休みするのだ。冬の間に水辺に行きたい行きたいと、蹲っていた思いが、春の訪れとともに動きだす。

隅田川は屋形船がたくさん通行する。どの船も舟人の楽しい宴の匂いを棚引かせながら航行する。岸辺で航行を見ている私にもそれが伝わってきて嬉しく感じる。屋形船の舟人は、楽しい時間を過ぎて船を降りたらどこに向かうのだろう。

辻桃子の句。春の麗らかな空気の中、小浦小浦に下船していく人たちの浮足立った空気を感じて、私はまったりしてしまう。冬を耐え、新しい生命が芽吹く頃の春を愛する日本人の心を感じる俳句だ。

春めいてきて客寄せの声高く masajyo

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