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ミャンマー人と俺とお金の話

毎月25日は俺の給料日である。
この日を楽しみにバイトを頑張っていると言っても過言ではない。

自分の給料は銀行口座に振り込まれるわけだが、給与明細は手渡しで渡されている。

社員や日本に働きにきているミャンマー人、バイト関係なくその場に居合わせた人間に給与明細が順に手渡されるわけだ。

それはすなわち、他人がどれくらい稼いでいるのかを知る機会でもあるのだ。

ミャンマー人の1人が声をかけてくる。

「上野くん、いくらだった?」

それは子どもみたいなキラキラした目で聞いてくる。

俺は特に考えることもせず、スッと見せた。

「上野くん、頑張ったね!」

そう言う彼の目はどこか少し寂しげだった。

よくよく考えたら、俺の出勤日数は春休みだったこともあり20日くらい。一方、彼の出勤日数は日曜日が休みなため週6×4週だから24日くらい。
日給約1万円だとしたらおよそ4万円の差額が生じると思われる。

しかし、彼の給与と俺の給与と、その差額はない。

可哀想だとかは思わなかったけど、なんか心は少し晴れなかった。


多分、彼だけじゃないんだろうな。


日本に働きにきている彼らと俺とを比べたときに、体力も、能力も、その仕事に関する知識も安全管理の面でさえも確実に劣っている。なのに、時給換算すると俺のほうが確実に貰っているのである。

なんとも言えない気持ちに俺はなった。

そんな彼ともう1人ミャンマー人と俺は会社から家に帰る途中まで一緒に自転車を漕いで帰る。

俺はその時もまだ心は曇ったままである。

そんなことをお構いなしにミャンマー人の彼は夢を語り始めた。

「僕、アメリカ行きたいんだ。そのために英語を勉強している。だから今そのためのお金を貯めて頑張っています。」って。

俺の心はもっと分厚い雲に覆われた。


俺はなにしてんだ?なにがしてえんだ?


その日、家に着くまでの道が長く感じた。

目標をもつことも大事だし、どこに向かうのか明確にすることは必要だ。

俺にも目標は立てるべきだと思った。
でもそれも大事だけど、大事だけど、目の前のことを一生懸命やることにした。

彼らに劣らないぐらい、俺なりに精一杯働いて。分からないことは先輩に聞いた。彼らに聞いた。

働いた。汗水垂らした。

お金の価値観って人それぞれ違うけれど、マネーリテラシーも大事だな。

今日は頑張ったから甘いもの買って帰ろ。

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