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江戸農書〜江戸時代は今よりもサステナブルな社会〜明治史観に騙されている現代日本人〜自給自足カレッジ特別講義〜自給自足カレッジ132

この週末、岡山県総社市から自然農法家の高内実さんに、わざわざ三重県多気町のVISON農園まで来て頂いて、大変貴重な「江戸農書」のお話を自給自足カレッジの受講生有志の為にして頂き、大変有意義な時間を過ごせました。

講師の高内実さんのプロフィール


明治維新以降の否定的な江戸時代の捉え方が、如何に間違っているか。長州、薩摩、による和魂洋才や富国強兵といった明治以降の動きの中で、平和で環境保全型の循環社会を理想的に実現していた江戸時代の実態が、如何に歪めて伝えられてきていたか。
こういう姿が、大変よく分かる本当に素晴らしい内容でした。

史実として、明治以降第二次世界大戦までの80年弱の間に、日本政府は戦争によって400万人の庶民を死に至らしめていますが、江戸時代の300年間、江戸幕府は他国との戦争によって庶民を殺しておらず、時代劇に出てくる「切り捨て御免」等の武士による町民殺傷は、少なくとも江戸の町の中では無かったと言います。

明治以降は戦争に次ぐ戦争



まず、高内さんは、戦国時代は、庶民を味方につけた大名が力をつけて行く過程として捉えて、はじめに戦国大名の北条早雲の話を取り上げられていました。北条早雲 は優秀な農民を集めるために、7公3民を6公4民にしたと言います。

北条早雲


織田信長の義理の父の斉藤道三は、岩清水八幡宮や領主の酷税に苦められていた商人を、楽市楽座という無税制度を取り入れて、商人を集め国を富ませた。

斎藤道三について解説される高内さん


豊臣秀吉は、太閤検地によって、それまで領主からだけでなく、有力な寺社仏閣等々から何重にも課税されていた庶民を解放し、一気に3公7民にして、庶民を味方につけた。また、刀狩りで兵農分離を行なって、平和な社会で庶民が幸せに暮らせる社会への礎を築いた。

秀吉は庶民に大人気だったとの説明


徳川家康は、新田開発を奨励して、貧しく虐げられていた農家の次男以下を生かす政策を実施。

また、江戸時代の大名は、災害対策してとしての庶民の為の教育を武士の為の教育以上に奨励していた。岡山県では、大洪水をきっかけに、1000年保つ学校として閑谷学校を庶民の為の学校として作り、それは武士の為の藩校よりも立派であったと言います。

国宝閑谷学校は350年経ってもびくともしない。


明治以降は、教育の意味合いが変わり、富国強兵の為の教育に変化してしまっていて、それは現代も続いていると高内さんは、説明されていました。
また、徳川吉宗は、諸国山川掟を定めて、各地に
それが元になって名産品が生まれたといいます。

江戸時代に生まれた各地の名産品



また、江戸時代では循環型社会が理想的に実現されていて、様々なリサイクル業が発達していたと言います。紙屑や古着の回収業、鍋釜等の壊れた金属製品を直してくれる鋳かけ屋。石臼の目立て屋、包丁の研ぎ屋。提灯の張り替え屋や傘の古骨買い等々キリがないぐらいです。

江戸時代のリサイクル業


極めつけは、肥汲み屋で、江戸の街が120万人もの人が生活しながら、ロンドンやパリと大きく異なり清潔に庶民が暮らせていたのは、人の糞尿さえも循環させるべき資源として買い取られて、近郊の農家に堆肥の原料として供給されるような循環型システムを実現されていたと言います。その際、大奥から出る糞尿が最も高価であったという話を高内さんはされていました。江戸の街の死亡率は糞尿を川に垂れ流していたロンドンやパリと比較して、非常に低かったようです。
 また、お米で納税させる事で、資産も溜め込ませる事なく循環させていた話も、なるほどと思わせられました。
また、江戸時代の農業は大変効率が高く、欧米の7〜8倍であったと、西洋からの調査団が書き残しているようです。

江戸の死亡率の低さと高効率農業



江戸農書には、新潟の農民がお伊勢参りに30泊31日で行ったというエピソードなんかも出てくるようですが、その間、江戸や大阪、京都なんかにも立ち寄って来たが、やっぱり自分の村が一番だと書き残していると話されていました。

江戸時代は、毎年国民の6分の1=400万人がお伊勢参りできた



高内さんの話を伺っていると、洋才にばかり目を向けている現代日本人は、物を粗末に扱い、大量のゴミを燃やし、その物を買うために自分の時間も無駄に使って、お金ばかりを気にして、精神や健康を蝕んでいるようにも見えてきます。江戸の庶民と比較してみると、現代社会が環境破壊型社会で、ひとも幸せにしていない姿が浮かび上がって見えてくるようでした。

その他、農業に関しても様々な話をされて、ちょっとここには書ききれない感じですが、江戸時代の地方には沢山の農書が書かれており、以下のような農書を読むように進められていました。

農業全書
100以上の地方で書かれた江戸農書


高内さんオススメの農書
 津軽農書(青森)、除稲虫ノ法(秋田)、農民の勤耕作の次第覚書、伝七勧農記、農業順次(茨城)、農業自得附録、やせかまど(新潟)、耕稼春秋(石川)、耕作仕様考(富山)、農事遺書(石川)、山本家百姓一切有近道、一粒万倍穂に穂(岡山)、耕耘録(高知),富貴宝蔵記,園圃備忘(福岡)、農業全書(福岡)、徐蝗録

高内さんが下記のFacebook の投稿で書かれている江戸農書にある基本観「天ー地ー人」。現代人の基本観である「人ー地ー天」とは、真逆の生き方から学ぶものは大変多く、ここに書ききれなかった農業技術に纏わる話を含めて、沢山のお話をして頂きました。

天•地•人


もう既に行き詰まりを見せている洋才をベースにした生き方から、明治以降の時代と江戸時代を見比べる事で見えてくるものを踏まえて、新しいサステナブルな社会を作って行くという方向に、これから大きく舵を切るのが良いのだろうと、高内さんの話を聞いていて強く思いました。

高内さんのお話しで、自給自足カレッジが掲げる「クォーターファーマー」という新しいライフスタイルは、その一つの方向性を示しているのではないかと、意を強くする機会となりました。

クォーターファーマーという生き方、社会貢献に興味のある方は、是非下記の自給自足カレッジのサイト等を見てみてください。

NOTE(自給自足カレッジ)
https://note.com/masahirokoshiba/

ホームページ(自給自足カレッジ)

https://self-sufficient-life.jp

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