ジストニアの克服前後の違い

もう終わってしまったイベントの記事だけど…
その中で非常に興味深い文言がある。
「曲の中の同じ箇所を何度も繰り返し練習すると、上達は早いですが、忘れるのも早いことが知られています。」

http://yipc.yafjp.org/events/2019%E5%B9%B411%E6%9C%884%E6%97%A5%EF%BC%88%E6%9C%88%E3%83%BB%E4%BC%91%EF%BC%89-1030-1245-%E6%A8%AA%E6%B5%9C%E3%81%BF%E3%81%AA%E3%81%A8%E3%81%BF%E3%82%89%E3%81%84%E3%83%9B%E3%83%BC%E3%83%AB6

自分の経験の中で、思い当たる節がものすごくある。

受験生時代や大学生の頃(ジストニア発症前や発症していた頃)にさらいこんだ曲を、しばらく触れずに久しぶりに吹いたとき、ぜんぜん指が回らずにまた一からさらい直し、ということがよくあった。

特に大学に入ってから、身近な人たちが同じように「久しぶりに吹く」のにも関わらず、割りとさらっと吹きこなしてしまうのに対し、自分は取り戻すのに時間がかかっていたのだが、あまり「なぜそうなのか?」ということは考えていなかった。

しかしそういえばジストニア克服後は、あまりそういうことがなくなった。
いや、もちろんさらい直すんだけど、感覚がぜんぜん違う。

確かに、ジストニアを克服していく過程、または克服後は、より丁寧に、じっくりと自分の記憶に根付かせる感覚はある。
身体的にも、ソルフェージュ的にも。

ジャズのアドリブを勉強していく中で、「なるほど、もしかしてアドリブって、根本的には暗譜なのかな」と思った部分がある。
様々なフレーズを、真の意味で覚える。
しかしそれをいざ本番というときに、柔軟にアレンジを加えていく。

単なる丸暗記ではなく、スケール、和音、構造、それらのすべてをきちんと理解し、覚え、体に、脳に染み込ませる。

ただ、それらを頭で理解するだけでもなく、それにきちんと体がついていくように体の使い方ももちろん工夫していく必要がある。
思ったときに、思った通りに体が動くように、日頃から様々な動き方、パターンを練習しておく。
これはクラシックでのスケール練習、エチュード等もその意味や狙いを含んでいると思う。

ジャズでも12keyの練習などは、耳の感覚だけでなく、体の動きとしても色々練習しておいて、いざというときに即座に反応できるように、日頃から準備しておく、という狙いがあるのかと思っている。

体だけで覚えるのは危険が多い。
耳で覚える、のが必要。
と10代、20代の自分の教えてやりたいなあ。
そして耳で覚える、にはまずは「声に出して歌うこと」だと思うのです。

もうひとつの大きな変化。
それは特に本番中、間違いを起こすほんの約1秒前からか、もしくはもっとそれより直前の0.○秒前に、「あ、間違う」って失敗の予測がつくようになったこと。
以前にはこの感覚はまったくなかった。

以前は間違ったその瞬間に「あ、やっちゃった」
だったのが、
「あ、やるな」という風に変わった。

これは今のところ自分の中では良い感覚として認識している。
つまり頭の中では行きたい道筋、正しいルートは認識しているけど、なんだかついついうっかり体が違う方向に向かおうとしてるのを先に察知する。
(そのうちそこからちゃんと瞬時に修正できたらいいなとは思っているが…)

少し別の書き方をすると、

「次この音程に行こう」としているのに、体が進もうとしたその先の指使いが「それじゃその音程は出ないよ」と先に脳が理解する。

12keyの練習でもこの辺りの感覚は非常に密に結び付き、上達してくると、頭で考えなくても、体で、感覚的に、次の音程を脳や耳がイメージし、指が勝手に着いてくる。

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