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日本の製造業の競争力低下原因 顧客理解の欠如と過剰カスタマイズ

日本の製造業は、その競争力をどんどん落としていきます。最も大きな理由は、日本製品の価格が高いからだと思っています。今までは日本人の給料が高いのでしょうがない、とうそぶいていたのですが、そんなことは嘘だとバレてしまっている。高価格の原因はいくつも複雑に絡まり合っている組織的な要因によるものだと思っています。

まず、顧客を理解していない。これは、卸モデルを採っているということもありますが、設計部門や製造部門の地位が高いからだとも思います。つまり、営業の言っていることを聞かず、自分たちが作りたいものを作る。顧客のニーズを理解していないので、製品の中で手の抜きどころがわからず、その結果BOM原価自体高い。多くのEMSは日本企業はいい部品を使い過ぎていると言っています。節約しても顧客に評価されるから大丈夫だという自信が持てないのです。

その結果、ユニクロのようなSPAだけでなく、ワークマンや神戸物産、ドンキのような小売が作り出した製品に天下のパナや東芝が負けるのです。小売は市場に近く、何をお客さんが受け入れるのか、価格を含めた感覚が研ぎ澄まされている。

また、製造とマーケティングの全体を指揮している職位や部門が曖昧で、セクショナリズムの結果、各部門が好きなような原価を押し付け、結局積算で高額になるのですが、それを社内調整によって解決するのではなく、営業に押し付けて高く売らせる。つまり客がしわ寄せを受ける。

次に、特にBtoBによくあることですが、顧客ごとに製品を作ってしまっている。それでコンペに勝てるとかスイッチングコストが上がるのだとか思っているのだと思います。その結果、ものすごい数の製品数がある。

カスタマイズについてABCすればいいとかという簡単な問題ではないのです。カスタマイズは転炉キャストやコンパウンドの製造のような深い上流まで影響が及び、ライン稼働率や原材料の廃棄率に影響し、更には情報システムなどのコストにまで影響します。つまり、製造原価だけでなく管理コストも押し上げている。これも、結局は顧客理解が足らないことによるんですよね。本当は標準品で何とかなることが多いのです。その証拠に、キーエンスは一切製品をカスタマイズしていません。

更に、製法の革新にチャレンジしていない。欧州や新興国の企業は価格を下げるために製法の革新を真剣に行っています。その一方、日本企業はJapan as No.1と持ち上げられた過去を忘れられず、自分たちの製法に自信をもってしまっている。製造部門の地位が高いことも、この変な自信を壊せない理由の一つでしょうね。トップダウンのアプローチがないので、アーキテクチャが汚く、モジュール化のようなことが本当に苦手だと思います。

最後に、結局、円安や法人税制の優遇、金利低下などで生まれた利益を全然競争力改善に投資せず、貯め込んでいる。税制の優遇は税引後のキャッシュを研究開発投資に使えるため、企業競争力を高めるように見えるのですが、税金で取られるよりは当期に将来の競争力のためにエクスペンスしようという動機を削ぐことになってしまっている。

なんとかしたいですよね。本当に。

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