【雑記】最近の『くりぃむナンタラ』を見ながら考えたこと
『くりぃむナンタラ』の様子が何やらおかしい。
どうも7月に入った辺りからいよいよ評判がすこぶる悪い。
具体的には「お笑い色薄めのヌルい企画ばかりになっている」というもの。
一体全体何が起きているのか?を自分なりに考えてみました。
あくまで部外者の想像・妄想なので悪しからず。
前提:番組は稼ぐためにある
まず大前提として『くりぃむナンタラ』は営利企業であるテレビ朝日が制作・放送しています。
つまり、その存在意義は「稼ぐこと」
テレ朝に利益をもたらすために放送されているわけです。
視聴者を楽しませるのはそのための手段であって目的ではありません。
佐久間Pは著書の中で以下のように述べた上で、番組を続けるには下記の要素どちらかを会社に感じさせなければならないと説明しています。
儲かる匂い
成長の匂い
現ニッポン放送の石井玄・元ANNディレクターも『アルコ&ピースのオールナイトニッポン0(ZERO)』が終了した後に「番組の人気を会社に全然アピールできていなかった」と痛感したエピソードを著書の中で語っています。
それがきっかけとなりニッポン放送に転職後はマネタイズを考える部署に。
佐久間Pの著書には『ゴッドタン』でDVD売上を立てたり『あちこちオードリー』で早期にオンラインイベントを開催したりして収益化を図ったエピソードや、『ピラメキーノ』を続けるために視聴率以外のKPIを会社と握ったエピソードが出てきます。
上で「稼ぐこと」と書きましたが、これは視聴率だけを指すわけではなく、何かしらで会社に貢献し、それを会社がOKと判断すれば番組は続くわけです。
逆に会社が「もうこの辺で損切りしよう」と判断すれば終わります。
まぁこれは何もテレビ局に限った話ではないですね。
自分が働くIT業界でもシステムのクローズやサービスの終了は日常茶飯事です。
『くりぃむナンタラ』も例外ではなく、会社(テレビ朝日)から課せられたKPIをクリアする戦いを日々やっているわけです。
くりぃむナンタラのKPIって?
恐らくテレ朝のKPIも視聴率だけではないと思われます。
例えばバラバラ大作戦は一部で「TELASA誘導番組」と揶揄されましたが、送客量や再生数をKPIに持っていたのはほぼ間違いないでしょう。
まぁあれもテレビ視聴者という大規模のユーザー基盤を持っていたら当然活用したくなるのでビジネス的には至極妥当な施策かなと。
地上波の番組本編そっちのけで前傾化しすぎな感はありましたがw
一時期のスマホ決済の各社の猛プッシュ(既存顧客を自社の決済サービスに取り込もうと全社躍起になっていた)みたいなものですね。
「ソフトバンク使ってるならPayPay使いましょうよ!」みたいなノリで「テレ朝の深夜番組見てるならTELASAも見ましょうよ!」と。
スーパーバラバラ大作戦・バラバラ大作戦の番組の中のいくつかはイベントを積極的に打っています。
これも視聴率とは異なるアプローチでの会社への貢献。
あざとくて何が悪いの?
トゲアリトゲナシトゲトゲ
キョコロヒー
※全部追えてるわけではないので漏れあると思いますがご容赦ください。
さらにドル箱である『アメトーーク!』は未だにTVerでの無料見逃し配信を解禁せずにアメトーークCLUBという有料会員サービスを始めています。
アメトーークも決して聖域ではなく、新たな稼ぎ方を会社から要求されていると読み解けます。
ではナンタラの場合は?
今のところ
TELASAやABEMAへの誘導は見られない。
番組イベントをやる雰囲気はあまり感じられない(私の主観込みの印象です)
やたらZ世代を謳った企画が増えている。
ゲスト出演者もジャニーズや坂道グループが増えている。
といった辺りから「若い視聴者を掘り起こす」ことなのではないかと思います。
もしくは「別に年齢層は問わないけど新たな視聴者を掘り起こせ」で、それを受けた現場が若年層に狙いを絞っているのかも。
YouTubeチャンネルも番組の既存ファンを楽しませるよりもネット経由で新たな視聴者の獲得を狙ったものだったのではないかと。
更新停止の理由はシンプルに損切りなのかなと思います。
期待した効果が得られないならダラダラ負け続けるより潔く撤退した方が良いですから。
(もちろん番組ファンとしては再開してほしいなと願っています)
シンパイ賞からの不可解な継投
ところで『くりぃむナンタラ』は昨年10月に『爆笑問題&霜降り明星のシンパイ賞!!』が終了した後を引き継ぐ形で始まりました。
これは会社が「シンパイ賞は損切りしてナンタラに任せよう」と判断したということです。
(もしくは会社に評価されるための番組内容のテコ入れ変更を嫌った現場が潔く散る道を選んだ)
ただ、そう考えるといくつか疑問が湧いてきます。
シンパイ賞がクリアできなかった目標ってナンタラならクリアできそうなものなのか?
この2つの番組を見てる層って結構被ってないか?
「シンパイ賞は見てなかったけどナンタラは見る」という層ってテレ朝の評価に響くほどの絶対数いるのか?
例えばサッカーならスピードが強みのFWが相手チームにスペースを消されて上手く機能していない場合は背の高いヘディングに強みを持つFWに交代してロングボール中心に戦い方を変えます。
ここでスピード型の別のFWと選手交代しても「スペースが無い」という同じ問題に直面するだけで勝率は上がりません。
シンパイ賞とナンタラは視聴者層という観点でそこまでタイプが異なる番組なのか…?
つまり、そもそも最初からほぼ負け戦だったのでは?と思えてくるわけです。
自分はそう思っていたのでシンパイ賞の最終回直後にこうツイートしました。
(今の状況を見て後出しジャンケンで言ってるわけではないですよと一応w)
火中の栗を拾ったと言えば多少聞こえは良いですが炎上案件の火消しに差し出されたとも言えます。
そして、テレビ番組に限らず炎上プロジェクトにおいて仕切り直しのご祝儀込み期待値で乗り切れるのは1ヵ月程度です。
総理大臣が変わると最初は支持率が上がるけど1ヶ月も経てば「こんなもんか」な数字に落ち着く世論調査の結果みたいな。
60分枠への拡大
そこに追い討ちをかけるように4月から放送時間が60分に拡大しました。
会社が求める貢献は単純計算で2倍です。
10年近く深夜の30分番組を作ってきたチームが60分番組を作るというのは脱皮が相当大変と推察されます。
初回こそ往年の人気企画『ビンカン選手権』を持ってきましたが、その後は『手遅れになる前に相方に伝えたい!』が尺埋め的に番組後半に放送されるように。
あくまで私個人の印象ですが間延びしている回もありました。
これは完全な憶測ですが予算もそこまで増えてないんじゃないかな…
少なくとも枠が60分に拡大したから予算も2倍なんて景気の良い話は今時無いと思う。
営利企業である以上、常にコスト削減の余地を探ってるはずなので。
テレ朝が金銭感覚の狂った成金企業でもない限り必要最低限の予算しか割り当てられないでしょう。
思うこと
つまりナンタラが直面しているのは
シンパイ賞が成し遂げられなかった目標(自分は「若年層視聴者の獲得」と推測)の達成
60分番組に見合った会社への貢献
60分に拡大したことによる制作コストの増加
正直かなり苦しそうに思う。
ただし、僕がここで言いたいのは「スタッフの皆さんも大変なんだから面白くないとか言うのは止めよう」ということではありません。
面白くないと感じた番組について「面白くない」と感想を述べる権利を視聴者は有しています。
コンテンツの中身については感じたことを述べていい。
もちろん出演者やスタッフへの誹謗中傷はダメですけどね。
僕がナンタラの現状を見ていて思うのは「コアなお笑いファンは残念ながらビジネスに繋がらなかったのだろうか?」ということです。
シンパイ賞はお笑いファンの視聴率は高かった印象で、終了時も惜しむ声がツイッター上では結構見られました。
ただ、それは営利企業が事業として番組を続けるには不十分だった。
だから番組は続かなかった。
後を継いだナンタラも苦戦気味で、既存ファンも離れそう。
自分も最近のナンタラが面白いとは正直あまり思えません。
ただ、お笑いファンの声に応えても地上波テレビで戦う武器にもうならない時代なんだとしたら…
ちょっとネガティブな気持ちになってしまいます。
奇しくもナンタラは今夜は放送休止で、明日深夜にTBSで放送される『ソウドリ』内で『くりぃむナントカ』の話題が出るようです。
スタッフとの深い絆。
番組のテイストが変わってもくりぃむの2人が取り組み続ける理由がここにある気がして、それは外野の視聴者からはなかなか分からない部分なので純粋に聞いてみたいなと。
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