パリは札幌より北なのに温暖なのだ【社会科が苦手な人は、ぜひ読んでほしい】

普通に考えるならば、北半球においては、北に行けば行くほど寒くなる。
まあ、常識と言っても過言ではない。

しかし、100%そうなのかと言えば、否である。

その典型的な例が、タイトルに書いたパリと札幌。

まずは、両都市の北緯を確認しておこう。

札幌:北緯43度
パリ:北緯48度

おっと、5度も違うのかと改めて知った。

つまり、札幌よりもパリの方が少し北に位置しているわけだ。
にもかかわらず、北海道の冬は厳しく、札幌だって例外ではない。パリは?といえば、温暖湿潤で穏やかな気候なのである。

なぜこんなことが起こるのだろうか?

複数の要素が関係しているのだが、その中でも代表的なものが風と海流。

まず札幌が位置する北海道周辺には、2つの寒流がある。
覚えている方も多いだろう。
千島海流とリマン海流だ。

まずは基本知識として、海流から理解しておこう。
海流ってのは、常に一定方向で流れている海水の巨大な流れのことで、大きく分けると寒流と暖流がある。

寒流は高緯度から低緯度方向へ流れている。つまり、極点から赤道方向に向かう流れである。当然、冷たい水が流れているわけだ。
対して暖流は赤道側から極点に向かう流れなので、常に温かい。

話を戻して、北海道周辺には2つの寒流が流れている。つまり、北海道は、陸地が冷たい水にさらされ、1年中冷やし続けられているということになる。

ではパリはどうなのだろうか?

パリを含む、西ヨーロッパの西側には北大西洋海流という名の暖流が流れている。だから、1年を通して温かい水で陸地は温められる。

この海流の違いだけでも、パリの方が温かいのが想像できる。

北海道はずっとプールに入っていて、西欧は風呂に入っているのだから。

加えて風である。

北海道上空にはシベリアから張り出した冷たい空気の高気圧と、そこから吹く寒風にさらされている。つまり水と陸だけでなく、空気も冷たいのだ。

一方のパリ上空には、偏西風があって、北大西洋海流から蒸発した温かくて湿度十分の空気が陸側に常に供給されている。つまり空気も温かいのだ。おまけに、蒸発した水分が偏西風に乗って陸地上空に流れて雨になるため、湿度も高くなる。

他にも要因はあるのかもしれないが、上に挙げた条件だけでも気温がかなり違うのだろうなと、こどもでも想像できるかと思う。

話しが、コロンと変わってしまうが……

私が塾に勤めている時に保護者から「社会は暗記教科でしょ?」という声をよく聞いた。いやというほどに。

実は保護者だけなく、生徒の大半も同じように考えている。最悪の場合は、教えている教師もそう思っていることがある。

しかし、上に書いたことを理解すれば「社会は暗記教科ではない」ということに気づくのではないだろうか。

暗記をしようとすると結果だけを頭の中に詰め込むことになる。つまり教科書に書いてあることを、そのまま丸暗記するのだ。それに対して、社会科に興味と関心を持って学ぶ人は、理屈や理由を考え、結果と結びつけて理解しようとする。そうすることで、圧倒的に覚える量が増え、絶対に忘れないようになるのだ。

同じようにして理由を知り、考えていけば、緯度が高い北海道よりも、新潟の方が豪雪地域だということも納得がいく。これは暖流:対馬海流から供給される湿った空気が、日本アルプスにぶつかって上昇気流になり、雲を形成することが要因だ。ここに至っては理科の内容も取り入れなければ理解できないかもしれない。

同じ社会科の歴史を紐解いていけば、太平洋沿岸地域が発達した事情や背景も理解できるようになる。

公民だって、開国から太平洋戦争後の流れを知れば、なぜ今の法律や仕組みになっているのかがわかるのだ。

結論:社会科は暗記教科ではない。

いただいたサポートは、おじさんの活動費としてとんでもなく有用に使われる予定です。