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おっさんのアニメ観 2.キャラ

2.キャラ

 外見(身長、体重、髪型、目の大きさ、鼻の形、服装など)、性格、性別、年齢、出身、過去(エピソード)、家族(先祖、家系)、友人、仲間、同僚、部下、上司、仕事、住居、癖、能力、長所、短所、趣味、生活、好き嫌い、言語、恋愛、癖、考え方、価値観などなど、キャラを構成する要素は多数ある。

 キャラには普通とは異なる部分(特殊能力など)を設定する。普通からの距離が大きいほどインパクトは増大する。インパクトの代償として犠牲になるのが共感性である。なんの変哲もないキャラだと視聴者は自分との共通点が多いため自然と共感ポイントも増える。しかし普通とはかけ離れた部分については、インパクトが大きいほど想像の範疇を逸脱する。そのため理解することができず、結果共感もできなくなる。

 そこでキャラに求められるのがギャップである。超越したポイントを持つ代わりに、どこかしらポンコツな部分を作りこむ。ここに共感部分が発生する。超人が持つ視聴者自身との共通項に安心し、意外性とともに受け入れられる。わかりやすい例だと、『魔法科高校の劣等生』におけるお兄様。戦略兵器級の魔法を操る俺TUEEEEの無敵の魔法師だが、高校では判定指標の関係で劣等生として扱われたり、人体調整?のせいで感情がほとんどなかったりする。

 ただ、そのまま放置するとストーリーが平坦になってしまう恐れがある。キャラ自身にポンコツ部分の克服努力をさせると話を進行しやすくなる。ストーリーに起伏を設けることも容易になる。『巨人の星』だと星飛雄馬は、プロ野球選手としては稀な小さな体躯の影響で「球質が軽い」という弱点を、大リーグボールを習得することによって補っていく。

 逆のパターンもある。一見至極普通のキャラが常識外な行動に出る場合である。こちらもギャップが発生するし、意外性を発生させることもできる。『進撃の巨人』において、ライナーとベルトルトが実は……とか、クリスタが実は……という展開。

 では、何でもできる完璧キャラ、逆に何もできないダメダメキャラはどうするか?どこに共感部分を作るか。答えは「善」に徹する。悪行に共感する人は稀だが、善行に共感する人は多いことを利用する。正義と定義される行いをさせることで、共感を生む仕組み。プロセスを阻害する要因があれば、乗り越える過程を描くことでドラマを発生させられる。完璧キャラの例を挙げるなら、『SAO』のキリトだろう。彼には欠点らしいものはない。(コミュ症ではあるが…)そこでグランドクエストであるアインクラッド攻略を達成させる。グランドクエストクリアにより、ゲーム内に閉じ込められた全ユーザーを解放する。ダメダメキャラの例は思いうかばない。というかそういうキャラのアニメをたぶん私は見ていない。

 キャラは常に画面に映りこみ、ストリーを進める部品である。視聴者はキャラに自身を投影し、一部を重ね合わせて共感する。魅力的なキャラを作り上げることは難しいが、成否のカギとなる部分である。

 また、見た目=キャラデザも重要である。現実ではあり得ないハイスペックなルックスを持つ人物ばかり登場するが、それは見ている人を心地よくさせる工夫と割り切る。また現実世界ではあり得ない緑や青の髪は当たり前。色でキャラの性格を刷り込むのは暗黙のルールになっている。『プリキュア』が5人になった頃からその傾向が強いのではないだろうかと個人的には思う。2人の時はシンプルに白と黒だった。さらに遡ると(アニメではないが)戦隊モノ(〇〇レンジャー)がルーツになっているのかもしれない。
キャラがかわいくないのに成功したのは、『まどマギ』ぐらいか……ホームベース。

 ラノベ原作の場合は絵師の、漫画原作やゲーム原作の場合は原作の絵がアニメ用に改めてデザインされる。多少の差異は発生するが概ねイメージを損なわない程度に改変され、大抵は原作信者にも受け入れられるレベルに収まる。

 キャラで忘れてはならないのはライバルである。強キャラであればあるほどよい。『バクマン』の新妻エイジは最たる例。最初から最後までライバル=超えるべき壁として立ちはだかっている。またアニメではないが、失敗例として真っ先に思い浮かぶのが『北斗の拳』。ラオウを倒した後は完全な蛇足。集英社の都合で無理やり連載を引き延ばしたせいもあり、その後は新ライバルを確立できないままに人気は下降線を辿った。『サイコパス』シリーズは、一期は狡噛と槙島のライバル関係構築が成功していたため名作だったが、二期のライバル関係が朱と局長、朱と鹿矛囲とに分散されたことに加え、鹿矛囲のキャラ立ちがイマイチだったおかげで駄作になってしまった。1クールで両立は難しかったのかもしれない。

 ヒロインの存在は不可欠である。男性をメインターゲットとしている商業アニメにおいては、魅力的なヒロインの存在如何で視聴継続率に大きな影響を与える。ただし無闇矢鱈に登場させればよいというものではない。悪例は『残響のテロル』。ヒロインの存在そのものが商業的理由っぽい。シリアスで緊迫感のあるストーリーの進行を阻害しているとしか思えない。いなくてもよい存在である。

 キャラと一言で表現できないほどの要素があり、それぞれが重要である。これらのバランスがうまく整い、キャラ同士の関係性も構築できたものが良作になるのは間違いない。

3.ストーリー へ続く


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