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SOU・SOUの地下足袋

 おいらが長年愛用している地下足袋。浅草の祭り用品店あるいは職人用専門店で売っている地下足袋とは一線を画す優れたグラフィックと実用性を兼ね備えているこの地下足袋。これは京都の若林株式会社、ブランド名SOU・SOUの各種地下足袋である。
 本店は京都だが、東京は青山店があり、おいらはそこで買う。この青山店は2013年3月のオープンだが、それまではお台場のヴィーナスフォート2階の噴水広場に面して東京店があった。
 おいらは2006年秋頃にここで地下足袋と劇的に出会い、大好きになって以後地下足袋生活をしている。地下足袋生活というのはけして大げさにいっているのでなく、リアルに毎日足に履く物はほぼ100%地下足袋だ。例外はハードレインの時の長靴と庭用のサンダル位である。それゆえ今や地下足袋はグラサンと共に、おいらのトレードマークとなりつつあるのだ。
 さらには自分で履く事はもちろん、ことあるごとに友人・知人に勧めまくり、今では多くの友人が愛用?いや、少なくとも所有している事は確かである。つまり私的に地下足袋伝道師になっているということだ。
 この素敵な柄の地下足袋が歩くのに向くのはもちろん、走っても自転車に乗っても優れていること、そしてドライビングにも是非使って頂きたいと心から思うからである。
 地下足袋の弱点は表面が布なので雨が沁み込む。これはよろしくない。対策としては防水スプレーを厚めに塗布することだが、これにも限界はある。ぐっしょり覚悟で履くか、ここは素直にゴム長靴にするしかない。意外と知られていないが地下足袋を履いている時にハイヒールで踏まれると想像を絶するぐらい痛い。そういった趣味の方なら堪えられるのかもしれないが、おいらはゼッテー無理だ。
 そもそも地下足袋は機能性の高い日本独特の履物だ。足の親指が独立しているとつま先に力が入り、大地を足全体でとらえることが出来る。足場の悪いところでもしっかり歩ける利点を生かし大工、鳶など職人のツールとして現代も使われている。この機能一点だけでも、外国の、特に欧米の文化圏の靴とは比べ物にならないほど優れている。
 そもそもであるが、おいらは動物学者でも人類学者でもないが、地下足袋の優位性は、じっと手を見ればわかるのだ。親指と他の4本が対向して物を掴むことができる。そういう風に人間は出来ているのだ。人間の足の指は直立歩行の長い歴史の中で現在のようにはなったが、DNA的に親指と他の4本は独立して機能するのだ。そこに下駄や草履のように親指と人差し指の間に鼻緒を挟むことにより履物と足の間にダイレクト感が生まれる。足で履物を掴んでいる感覚である。
 そこいくとたとえ何万もする紳士靴でも、足にピッタリではあってもやはり足との一体感に乏しいと言わざるを得ない。やはり西洋文明の浅いところはこうやって地層のように時々現実として現れるのである。さらにいわせていただくと、ハイヒールなんてのは、女性を逃がさないための束縛具としか思えないような形状と構造をしているではないか。踏まれると痛いし。
 西洋文明を馬鹿にするわけではないが、靴に限らず衣類全般が狩猟民族の欲しい物は力で奪い、捕らえたら逃がさない的なDNAで成り立ってると思う。もちろんおいら個人的な考え方であるが、真実に違いない。
 そういうおいらもSOU・SOUの地下足袋と出会う前は、西洋靴を履いていた。履いていたばかりか、浅草の靴メーカーの非常勤顧問や今は大変評判で自動車評論家御用達のドライビングシューズを作っている南千住の靴メーカーのアドバイザーもしていた。だから靴を造る行程や構造などはその辺の靴屋のボンクラ店員よりは詳しいと思う。
 それだけに、あのお台場の店であの日出会ったSOU・SOUの地下足袋は本当に衝撃的であったのだ。工事現場ではなく、普通にいやフォーマルにも使える地下足袋なんて凄い発想だと思ったわけだ。実際にフランスやイタリアのフォーマル(ドレスコードはブラックタイ)なパーティーにSOU・SOUの地下足袋で出席したことがある。おいらの足下を見た(弱みにつけこまれる意味ではなく)フランス人もイタリア人も凄く誉めてくれて、どこで売っているのか聞かれるほどだった。
 イタリア人レーシングドライバーのマルコ・アピチェッラも甚く気に入ってお台場の店に連れて行ったらいきなり3足もお買い上げだ。そのまま帰ろうとするから「君の持っているソックスだとこれは履けない。2本指ソックス買わないと」といって1ダースほど買わせた。
 ともかく歩くときも走るときも大地を的確に掴み、蹴ることが出来る。歩いていても疲れにくいし、走っても理想的な蹴りと着地が出来る。そういえば少し前のTVドラマで地下足袋メーカーがマラソンシューズ作る話があった。まさに走ることにも優秀な世界最高にして日本独特の履物だといってもいいだろう。
 おいらは自転車に良く乗るが、自転車で止まるときの足付きも素晴らしいし、ペダルへの対応性も良い。ここで脱線するが自転車にはビンディングペダルという専用ペダルと専用シューズで足をペダルに固定するものがある。踏込む時以外に引くときもペダルに駆動力がかけられると、ロードバイクの多くの方は使っているが、あれほとんど効果ないからね。特にペダリングが上手い人はフラットペダルの方が効率が良という研究結果があるのだ。まあビンディング信者もいるから、あくまでおいらの考えということにしておくが、逆に止まるときにビンディングがうまく外れないと倒けることになる。都会の道路では非常にリスキーだよね。
 さて同じペダルでもクルマのそれを操作するのにまた、地下足袋は非常に良いのだ。エンジン回転を落とさないようにアクセルを煽りながら、スピードをわずかに殺すためにブレーキペダルに親指をかける。このリアルな感覚
はその辺のドライビングシューズでは到底マネできない。ある意味ペダルを正確に操るという意味ではレーシングシューズよりも格段に優れているともいえる。レースに使うにはFiAから公認をとる必要があるが、使用すれば、おいらのスーパーコンピューターで試算したところ、鈴鹿でコンマ5秒速くなる。たぶん。

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