彩の国100mile完走記
国内最難関レースのひとつ、彩の国100mileに初参加。過去最高に苦しみ、その分存分に楽しんでなんとか完走できました。
1.基本スペック
2011年、38歳の秋にダイエットとサーフィンの体力向上の為に走り始めた初老
2016年、湘南国際マラソンで初サブスリー。PBは2時間53分台(姫路2019、東京2024)
初トレイルレースは房総横断70k2016、以降主なレースは奥三河PT2018、恐羅漢2018、KOUMI100mile2018、 UTMF2019(二十曲峠)、 UTMF2022、房総横断70k2023など
月間走行距離は300km〜350km位
2.準備
(1)練習
2022年秋からの1年間はあまり家を空けられない状況だったので、当然大会出走も無し。来るべき日に備えて基礎走力だけは維持しておこうと最低限のジョグだけは継続。
2023年秋、色々と状況が改善して再び大会に参加できる状況になってきたので、2024年の勝負レースを検討。UTMF(Mt.Fuji100)は大会に出てないからポイントが足りず…。歳も歳だしこの先何があるか分からないので、今やれることをと彩の国チャレンジを決意。クリック合戦にも無事勝ち抜き覚悟を決める。
出走するからには絶対完走!!を目標に準備を開始。まずは走力を上げるべく、年末から苦手(嫌い)なスピ練を導入。1年間休んでいたランボーズに再加入して、ツワモノ達からの刺激をたんまりもらいながら練習。その結果、東京マラソンで4年ぶりにサブ3に返り咲けた。
走力はもちろん大事だけど、彩の国でより重要なのが延々続くギザギザトレイルに耐えられる屈強な脚。東京マラソン以降は近所の坂と階段で登り降りを繰り返す練習を開始。1周1kmで100mアップを10周〜。少し時間が取れる時は鋸山に行って1.5km300mアップを4本〜とか。どちらも保冷剤を入れたザックを重しに背負って練習。スピードより楽に感じるペースで淡々と登り降りすることを意識しながら。
試走は3回。Southの核心部(kinoka〜竹寺〜高山不動)をメインに30km〜40km。North一周とSouthのサンピア〜葛城観音間は時間がなくて試走できず。
練習の一環で3月の厚木トレイル50kにも参加。大山区間の長い登りをしっかり動き続けることができ、9位/100人中と想定外の好結果。練習の方向性が間違ってなかったと自信に繋がった。
また、東京マラソンからの約2か月で3万m近く登った。自分にしたら考えられない数字で、これも自信になったし、以前と比べて登り苦手意識が少なくなった。
補強としてこれまた嫌いな筋トレを継続。と言ってもアブローラー(膝コロ)とスクワットを各50回、週4〜5回のみ。食事制限は最低限、ビールは基本週末のみ。これを半年間続けて3kg程体重を落としつつ筋肉をつけた。
(2)装備
シューズ:salomon S/Lab GENESIS
今大会に向けて唯一新調。過去最高に自分の足にフィット。トレイルをこんなに気持ち良く、楽に走れるんだとびっくり。軽いし足さばき良いし言う事無し。
その他は信頼と実績のあり物で。ザック:salomon ADV SKIN 12
フィット感最高、暑さには弱いかソックス:injinji トレイルミッドウェイト5本指
トラブル無しインナー:innerfact シームレスインナーパンツ
擦れ無しランパン:TNF エンデュリスレーシングショーツ
フィット感、収納力どれをとっても最高上インナー:TS DESIGN TS DRYノースリーブ
ミレーアミアミのジェネリック版ノースリーブ:patagoniaスリーブレスキャプリーンクールデイリー
グローブ:seriaで買った100円手袋
薄手の滑り止め付。指部分を全てカット手首にbuff
汗拭き用帽子:milestone MSC-013
自分のデカい頭にもゆったりフィットするありがたいキャップ日除け:montbell WICクールキャップシェード
Northで使用。首周りに直射日光が当たらないので使用した価値あったサングラス:ANSWER4
ロードのみ使用レイン:TNFフューチャーライト
未使用シェル:TETON.BROS ウインドリバーフーディ
未使用アームカバー:ORENO
スタート後2kmで外したヘッデン:Ledlenser H8R ×2
頭と腰で2灯使い。明るさは正義
(3)補給
固形物をメインに普段の練習から使っている物を中心に選択。
柿の種(梅味)、AEONの5個入ミニチョコパンとクリームパン、AEONの(ウィダーイン風)ゼリー、セブンイレブンのチョコチップクッキー、ラムネ、メダリストジェル、梅干し、塩タブレット等々。
40分ごとに必ず何らか補給することと、エイドでしっかり食べることを意識した。
(4)レースプラン
制限時間は35時間 。過去のリザルトからNorth8時間40分、South1 12時間、South2 13時間にサンピア滞在時間を入れて34時間20分で想定タイムを作成。途中の関門を考慮すると結構ギリギリな設定。
試走していないNorthを最小限のダメージで想定タイム通りに終えられれば、Southの核心部分は何度か試走に行っていたのでこのタイム設定なら多少の余裕があると考えた。最大目標は完走だけど、あわよくばSouthで上げて33時間を切りを目論む計画。
(5)レース前日〜当日
金曜日は有給休暇を取りゆっくり起床。15時に会場入りして受付。目に見えるひと全てがツワモノに見える。
長居すると雰囲気に飲まれて弱気になりそうだったので、早々に退散して東飯能駅近くのホテルにチェックイン。近くのレストランで夕飯をたっぷり食べて、装備の最終確認をしてから20時には消灯。緊張からか寝つきが悪く熟睡とは言い難かったけれど、とにかくベットで横になり目を瞑り身体を休ませた。
4時に起床してたっぷりと朝食を食べ、足首と膝にテーピング、出すもの出して5時前には出発。5時半頃会場入り。昨日よりさらに周りの人たちがツワモノに見える。怖いので直前まで車で待機。
6時半にトイレ(小)に行ってからスタート地点へ。何人か知り合いの方と挨拶したりなんてことない話をしていたらスタート時間。緩さのお陰でリラックスしてスタート。
いざ!
3.レース展開
(1)North
ペースを上げない、1Lの水分はエイド毎に飲み切る、40分毎に補給する、エイド滞在は5分以内、キツくても絶対に自らはリタイアしないを念頭に、中盤から後ろくらいの位置でスタート。抜かれても気にすることなく楽なペースを維持。その割に登りでなんとなく脚の動きが悪く、余計な負荷がかかってるなと感じながら進む。暑さはあまり感じずに、むしろ山中では涼しいくらい。
40km過ぎから脚攣りの兆候が始まる。気付かぬうちに暑さにやられてるんかなと思いつつ、まだ始まったばかりだぜと水分塩分をしっかり摂取して誤魔化しながら進む。
Northを終えて8時間44分。設定+4分。上出来。
(2)South1
Northをほぼ定刻通り走れたのと、Southは何度か試走していて要所は分かっているので、うまくいけばもう少しタイムを狙えるかなとリスタート。まだ暑さの残るロードをしっかりと走って進む。
トレイルに入って早々から激しい脚攣りが。登りで脚を上げると攣り、下りのなんて事のない林道をゆるりと走っていても攣る。何をやっても攣る。その都度立ち止まり、後続ランナー達に先に行ってもらう。脚攣り対策が足りなかったかとかなり焦る。とは言え時間はまだまだたっぷり。とにかくペースを落として歩きを多く入れて焦らずに前へ進む。
夜中に入ると涼しくなってきたのもあるのか、気づいたら脚攣り祭は終わりつつあった。眠気は殆どなし。コースは試走して何となく先が分かる。真夜中の山中をほぼひとりで気持ち良く走り続け、ペースも想定通りに進行。South1の夜中がある意味一番楽しめたかも。
South1を終えて設定▲9分。見事な定刻運行っぷり。これはイケる⁉︎
(3)South2
サンピアに入るとチームメイトはもちろん、見知らぬ方々からも暖かい声援を貰えてチカラになる。そして、ここからはチームの仲間をペーサーに一緒に走れる。これはイケる⁉︎
と思ったのも束の間、いざスタートしたら身体がめちゃくちゃ重くなっていて一気に現実に引き戻される。夜明けと共に眠気もやってきた。まぁ簡単には完走させてくれないよね、これこそが100mileレースだし彩の国だよね、と。
まだまだ焦る時間じゃないと平地は淡々と走り、登りは歩き、降りはゆっくり進む。
分かってはいたけれど覚悟していた以上にSouth2はキツい。試走時のフレッシュな脚ならともかく、100kmを超えた脚には登り降り全てが堪える。累積標高も7,000mを越えて未知の世界。なんなら平地も辛くなってきた。
補給も固形物は全く食べる気にならず、ジェル少々と西吾野駅で仕入れたミルクティーをちびちび飲む程度に。
100万回はやめたいし逃げ出したいと思った。山中でどこに逃げるんだよとツッコミ入れつつ前に進む。
そんな時にスーパーペーサーが深呼吸してとか水分補給してる?とか、このペースなら問題無しです、とか適切且つ前向きなアドバイスを続々とくれて本当にありがたかった。正直言ってひとりだったら完走できなかっただろうなとその時も思ってたし1週間経った今でも思ってる。本当に感謝。
最後のエイドを出て残り5km。全歩きでも完走できますがタイム狙いますか?とペーサーの問いかけ。本音では1分1秒でも早くゴールしたいと思ったけれど、走ると内臓が揺れて気持ち悪いわ身体のあちこちが痛過ぎるわでとても走れる状態じゃなかったので確実な完走、歩きを選択。途中2人(3人?)に抜かれたけど追いかけるチカラは全く無し。最後まで走りたかったなと少し悔しさもありつつ。
長いトレイルの下りを歩き続け、ロードが見えてきた。安堵と共に気が緩み、初めて完走できると実感がブワッと湧いてきた。感涙。やたー!
下山して少し走ってみるもすぐに気持ち悪くなったので、残りのロード2kmも全歩き。
多くの方々からの暖かい歓声に迎えられながら34時間16分で完走。
4.走り終えて
完走して極々狭い界隈でしか知られてない「サイラー」の称号を手に。嬉しい。めちゃくちゃ嬉しい。こんなに嬉しいことは久しぶり。終わってみれば想定ペース通りだし。
とは言え課題は山積み。走力はもちろん登坂力、補給計画、エイドでの過ごし方、心配で無駄に多くなり重い装備等々。
特に補給計画。終盤は練習時に使ってた固定物が全然受け付けず失速に繋がった。翌朝体重測ったら3.5kgも減ってて40年ぶり(?)位に50kg台突入とかまぢか。
あとは下りの走り方。元来ビビりな性格でセンスもないところ、ここ数年は視力、動体視力共に悪化して遅くなる一方。着地の衝撃をうまく逃せないからダメージが大きくなり、1週間経った今もまだ母指球から足先が痺れてる。少しでも改善しないと。
最終盤でも元気に走って追い抜いていくランナーも多数。皆さん本当に強い。自分もまだまだ精進あるのみ。
とは言えこの歳になると休養も大事。しばらくはレースの余韻と激しい筋肉痛に浸りながら、好きな物を食べて呑んで過ごします。
こんな内容で役に立つのか分かりませんが、来年以降、サイラーを目指す多くのドヘンタイ達の一助になれば幸いです。