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地元にコーヒーの楽しさを届けて62年 ロコ ロースタリー「コーヒーボーイ」

あそびに行くと必ず自慢のコーヒーを淹れてくれる父。それはきまって〈コーヒーボーイ〉の豆で「今日の銘柄は深煎りだね」とか「甘みがあるね」とか、会話に花を咲かせる。いつのまにかコーヒーの楽しさを届けてくれている〈コーヒーボーイ〉のある日常風景だ。
その本店に取材に行くことになり、どんな人がどんな思いで作っているのか、ワクワクしながらお店に向かった。

二番町の通り沿いにある、少し時代を感じる二階建てのテナントビル。その一角にお洒落にリノベーションされた〈コーヒーボーイ〉本店がある。取材当日も隣の焙煎工場から煎りたてのコーヒーの香りが漂っていた。

オーナーの河内山さんとスタッフの皆さん。楽しそう!

「いらっしゃい」と気さくに迎えていただいたオーナーの河内山嘉浩(こうちやまよしひろ)さん。今回、周南市の老舗コーヒーロースタリーとして〈コーヒーボーイ〉を紹介させていただきたいと伝えると、「老舗になりますか〜」と感慨深げに答えてくれた。来年で、コーヒー豆を扱って62年。今のスタイルの〈コーヒーボーイ〉として25周年。まさに老舗!長年地域に愛されてきた歴史。河内山さんが コーヒー ロコ ロースターと自称する所以だ。

「まあ一杯どうぞ」といただいたコーヒー。デミタスカップとCOFFEEBOYのロゴがかわいい。
販売もしていて、特製デミタスカップ 1000円

コーヒーをより楽しく味わってもらうために

元々、先々代が和菓子の小豆店を営まれていて、先代がその経験を生かし1961年に『自家焙煎コーヒー豆の専門店』を始める。河内山さんは、東京の大学を卒業し、大手コーヒー会社に勤めた後、地元に戻りお店を継がれた。継がれた当時の〈コーヒーボーイ〉は、卸売メインで、小売は少しだけだったそうだが、『コーヒーをより楽しく味わってほしい』という想いで『自家焙煎豆の販売とカフェ』という新しいスタイルの〈コーヒーボーイ〉を展開することに。

1998年PH通りに1号店を出店

コーヒーボーイ1号店 PH通り店

当時は、それまでの喫茶店とは違うカフェの前払いシステムにお客様が戸惑われたとか。時の流れと、河内山さんの先見の明を感じるエピソード。その後、山口県内で次々と出店し、現在8店舗を運営。それぞれの地域に根ざした〈コーヒーボーイ〉を展開されている。

地域に根ざしたコーヒーとは

〈コーヒーボーイ〉の一番の特徴は?とお聞きしたところ、『地域に根ざしたコーヒーを提供すること』と河内山さん。豆の種類、生産地、焙煎する時期と気温と様々な条件の中で、煎り具合の最適を導き、コーヒー豆の内に秘めた甘味をしっかり引き出すことに力を注ぐ。

豆の内に秘めた甘味を引き出す焙煎の極意

本店の横には先々代が小豆屋さんをされていたときから使っている倉庫がある。奥の部屋に、大きな焙煎機が置かれている。あの幸せな香りはここから放たれているのだ。
コーヒーボーイで扱う豆は、およそ20種類。原産地は、コロンビア・エチオピア・メキシコ・エクアドル・ブラジル・グァテマラ・インドネシア・ハワイ等々。現地まで買い付けに行くなど、扱う豆は納得行くまで吟味する。

コーヒー農園での買付風景


年間30トン近いコーヒー豆を扱っているそうで、倉庫には、これから煎られることを待っている豆たちが山積みにされていた。

豆が入っていた麻袋の一部はアップサイクルに


伺った日は、セールを控え焙煎機はフル稼働中。時代を感じるビンテージな焙煎機は1960年代製のPROBAT社焙煎釜。しっかり現役で使えるように手入れされコーヒーボーイならではの個性を作り出している。操作しているのは、焙煎士の金近さんだ。
時間を確かめ、煎り具合を専用のスプーンで取り出し焼き色具合と香りなどをチェック。手際よく次々と焙煎していく。「あともう少し」「こんなかんじで」と忙しい中にもかかわらず、焙煎工程の一部を教えていただけた。「じゃ、出すよ」と釜の蓋を開けると、焼き上がった豆が滝のように冷却用のコーヒークーラーに流れ込んだ。その瞬間、香ばしい香りが部屋中に立ち込め、まるでコーヒーの中にいるような状態に。「このあともっと香りが出るよ」と金近(かねちか)さん。煎りたて直後から少し寝かせた時に本来の香りがたってくるそうだ。焙煎の極意、繊細さに驚かされた。

煎り具合をチェック


まさにコーヒーの滝と渦w


各地域限定・季節限定オリジナルブレンド

現在運営されている8店舗にはそれぞれオリジナルブレンドがあるそうで、期間限定で楽しめるらしい。今は萩のコーヒーボーイオリジナルブレンド。
ここ山口県の風土で美味しいと感じるコーヒーに情熱を傾けている。

萩ブレンドは萩店で販売中


2022バレンタインday特製ブレンド
春のイチオシ ブレンドNo.143 ミモザ 1400円(200g)
ミモザに合った淹れ方のご紹介 ハチミツのアレンジが美味


ペアリングに、めずらしいお菓子も少し。


「No.178を200gで」 3桁の数字(プロダクトナンバー)はテイストや焙煎度合や口あたりの目安

コーヒーボーイオリジナルのパッケージの3桁の数字(プロダクトナンバー)について聞くと。100の位が産地。10の位が焙煎の深さ。そして1の位が口に含んだ時の濃厚感だそうで、好みの目安を知るための工夫。「今日は133ある?」「いつもの178で!」とか会話ができる。なんだかプロっぽい。嗜好品ゆえの好みの多様性の近似値を思い図れるアイデアに感動。ちなみにこの日は、焙煎の深さと口に含んだ時の濃厚感が中間値に近いものを購入することにしてみた。No.657(中米のストレート・焙煎5・濃厚感7)

豆を選びやすくするアイデアが素敵、お試しのパックが横に並ぶ。
迷ったらパックを買われてからリピートできる。
プロダクトナンバーの仕組みはシンプル
ブレンドの定番が3種と他ストレートなど9種程度が専用ラックに並ぶ。
基本的に主観の強いポップは使わず、No.でお客様の嗜好に寄り添う。


周南市外の各店舗

旅するコーヒーボーイで、全国へ。


全国に〈コーヒーボーイ〉の魅力を伝えるために、ポップアップストアーも展開している。コロナ禍で現在は休止中だが、終息後再開する予定。
コーヒーボーイのたびは続く。

山口のカフェ文化を未来につなぐ活動


コーヒーの基礎を知るハンドドリップ「ワークショップ」をはじめ、カフェ開業のサポートする講座なども開催している。他にも1歳未満の赤ちゃん連れのママに、デカフェと焼き菓子をプレゼントする「山の子コーヒーボーイ」企画など、山口のカフェ文化を未来につなぐ多くのローカリティーな、活動をされている。「将来、山口県にコーヒーアカデミーを作るのが夢」と語る河内山さん。着実に夢を近づけている。


なぜ名前がコーヒーボーイなの

カルディーくんが印刷された、かつてお店で使っていたビンテージなキャニスター

今や地元のコーヒー通で〈コーヒーボーイ〉を知らない人は居ないと思うが、「なぜ名前がコーヒーボーイなの?」と思う人は多いのではないだろうか。その名前の由来を聞いてみると、エチオピアに語り継がれる『カルディーの伝説』からきているとのこと。(より詳細はHPで)それは6世紀、アビシニア高原にいた カルディーという男の子が、放し飼いにしている山羊たちが食べた木の実の効能に気づいて 味わいしらべ、飲用したのがコーヒー豆だったという話だ。未知の食に果敢に挑んだカルディーの勇気と冒険心をたたえ、またコーヒークロップの人類最初の発見者として 社名を『カルディー』=『コーヒーの男の子』=『COFFEEBOY』と名付けたそうだ。果敢に挑む伝説のカルディー少年の姿と、河内山さんの様々な活動の挑戦には何か通ずるものがある気がした。

何事にも「楽しむこと」

こだわりを伺うと、「こだわらないこと 笑」という河内山さん。なにごとにも『楽しむこと』という思いが伝わる。〈コーヒーボーイ〉の経営理念に「コーヒーの幸せをサポートする」とある。世代や抽出のスタイル、豆のグレードにこだわらず、お客様が「広く多く長く」コーヒーを楽しみ、幸せを感じていただけるために。作り手もしっかり楽しみ、挑戦していくということだろう。

リアル珈琲少年

「魚釣りをするために会社を経営することにした」と冗談が出るくらい、子供の頃から大好きな釣りとともに瀬戸内の海を親しむ河内山さん。趣味の魚釣りは海外まで足を運ぶほどだそう。何事にも真に楽しむ姿がわかる。ちなみに、魚釣りから得るものは魚だけにあらず、コーヒーづくり、ビジネス、人生にも大きな影響を与えてくれていると話す。
次の展開を伺うと、いずれ県外にも出店し、どこに居ても、ここで培った経験を生かして、コーヒーで人と地域をつなぎたい。そのためにも「コーヒーを楽しく味わってもらえる場所」を提供したいと語る河内山さん。淡々と話す言葉の中に見える熱い信念は、その実現はすぐ近くにあると感じさせる。
まさに、何事にも楽しみながら果敢に挑戦する珈琲少年がここにいた。

◎取材を終えて
書ききれないほどの情報量に〈コーヒーボーイ〉の歴史を感じつつ、さてどれを掲載しようかと、ちょっと悩ましい取材となった。しかし、おかげで当たり前のように飲んでいた1杯のコーヒーに、作り手の思いやヒストリーを知ることができた。明日の一杯がまた楽しくなりそうだ。

COFFEEBOY B&G店 (BEANS & GIFT店)
徳山コーヒーボーイ
山口県周南市二番町2-9
Tel:0834-22-3543
営業時間:10:00〜19:00
定休日:無休
Web:徳山コーヒーボーイwww.coffeeboy.co.jp


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