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ギター10

新潟に戻ってから、さまざまな会社を転々とした。
その度に自己嫌悪とひどい鬱のような状態になったが、私は基本的に楽天的な人間であり、なんとかなるさ、というアホな考えなしである。

何個目かの会社で働いていた時、一緒に働いていた先輩で、ブルースについてものすごく詳しい人がいた。

私はブルースについては、あまり知識がなく、黒人が作った音楽のジャンルの一つでジミ・ヘンドリックスも影響を受けている。くらいしか知らなかった。
しかし、その先輩をキッカケに私はどんどんブルースに惹かれていった。

バディガイ、ヒューバート.サムリン、マジックサム、ライトニングホプキンス、ジョン・リー・フッカー、サン・ハウス、マディ・ウォータース…まだ存命の人も、亡くなった人もいるが、調べれば調べるほど、ブルースは奥が深く、魅力的だった。

元々は、ミシシッピ川とヤズー川の三角州(デルタ)地帯で綿花の収穫の為に奴隷として働かされていた黒人労働者が、仕事の疲れを癒す為に始めた、ハラーという労働歌(合唱)が源流だとのことだが、日本にも
労働歌として、各地に甚句があるが、それと由来が似ているなとか勝手に一人で妄想するのはとても楽しかった。

デルタブルースとして、一番初めに有名になったのは、チャーリーパットンであり、ほぼ彼と同時期かやや後にロバートジョンソンがいる。

特にロバートジョンソンは親指でベース部分を弾き、残りの指で高音パートを弾くという、ウォーキングベース奏法を確立した人であり、その神がかり的なギターの技術から、クロスロード(四辻)で悪魔に魂を売った代わりに技術を得たとか、そう言う伝説を貪るように読んだ。

そして、デルタ地帯から新しい土地を目指したブルースマンたちが北上し、シカゴでコミュニティを形成し、シカゴブルースというブルースを作ったと言われる。

その代表的な人が、マディウォータースであり、彼はシカゴのゴッドであった。

バディガイやジュニアウェルスのコンビもかれのファミリーのようなものであった。

そして、60年代になると、ヨーロッパの白人の間でブルースに夢中になる若者が現れ、需要があるとの事で、毎年アメリカから選ばれたブルースマンのメンバーでヨーロッパツアーが行われた。

アメリカンブルースフォークフェスティバルというのがそれであり、特にハウリンウルフはヨーロッパで絶大な人気を誇った。

そのツアーを見ていた白人の中に、ローリングストーンズのメンバーやエリッククラプトンがいて、おそらくは驚きの視線で本物のBluesを聴いていたのだろうと思う。

デビュー前のジミ・ヘンドリックスがバディガイのギターを口をあんぐり開けて聴いていたという話があるくらいであり、当時の最先端のロックギタリストがいかにブルースに影響を受けていたかが分かる。

私は、白人のやるホワイトブルースも好きだが、やはり黒人の演奏する本物のブルースが大好きだ。
人種差別をするわけではないが、黒人の持っているリズム感やギターのコードの選び方、間の取り方は独特のものであり、いくら白人や日本人が真似をしても同じものにはならないし、同じものをひく必要もないが、理屈抜きに素晴らしいのだ。

特にマジックサムなどがみせるブギなどの爆発的なグルーブの凄さは、聴いてみれば一聴瞭然なのである。

もちろん、白人がやるブルース、とくにクリームやロリーギャラガーなどは素晴らしいものであり、音楽に対する熱量の高さとギターの演奏技術には感動する。

私はその会社にいた間、先輩から教えてもらったブルースマンのCDを買い漁り、どっぷりはまっていた。
その先輩はまた素晴らしいギタリストでもあり、いつだったか楽器店でアコギで先輩が弾いたブルースは本当に素晴らしいものであり、今でも生で聴けた事に感動する。

そのような出会いもあり、私はすっかりブルースや、ギターに完全に夢中になった。

その会社を辞めた後も私は、中古のギターや機材を買ったり売ったりしながら今に至る。

最初に戻るが、ブルースはロックの源流であるが、ロックミュージックにおいて私の中でジミ・ヘンドリックスは絶対的な存在であり、神のようなものであるが、ジョンフルシアンテもまた教祖のような存在だと言える。

彼のギター(音楽)は独特のものであり、他のギターが上手いだけのギタリストとは別次元だと考えている。

彼はギタリストであるとともに作曲家でもあり、素晴らしいボーカルの持ち主でもある。

そして彼は、音楽が生活の中で第一のものであり、その為におそらく命を捧げていると思う。

純粋であり、金儲けや音楽以外のことについては、全く関心がないようにも見える。
そして作り出す音楽は、秀逸なメロディと美しいハーモニーに彩られており、聞くものの心をとらえて離さない。

私はこれからも音楽を聴き続け、ギターを弾き続けるだろう。

その限りない魅力の虜となった私は、死ぬまで旅を続けるのだ。

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