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コーヒーチェリーがやってきた。

謝辞:ご自身が大切に育てられているコーヒーの木に実ったコーヒーチェリーを譲ってくださいましたSG様に、最上級の感謝の意を表明いたします。
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コーヒーの木

コーヒー豆は、コーヒーの木という植物から収穫される農作物です。日本にいてコーヒー豆というと、いつもの茶褐色のコーヒー豆を思い浮かべる方がほとんどだと思いますが、あの姿になる前は・・・というと知らない方が多いと思います。今回は「コーヒーチェリー」と呼ばれるコーヒーの実を手に入れることができましたのでご紹介します。

まず、コーヒーの木はこのような植物です。アカネ科に属する常緑樹で、葉が大きくわりと深めの緑色で波を打っているような形状が特徴です。コーヒーの木は耐陰性もあるので部屋の中で育てることができますから、日本では観葉植物としてふつうに流通していて店主もネット通販で購入しました。アフリカや南米などにあるコーヒー農園では樹高が2mほどに剪定管理されていますし、野生のコーヒーの木だと樹高が10mにもなるものがあるそうですから、当店で育てている高さが50cmほどコーヒーの木(=写真)はまだまだ子供のような状態ですね。

主幹から側枝(そくし)と呼ばれる枝を伸ばして葉を増やします。葉の付け根の節のあたりに花芽が出て花を咲かし、受粉すると実をつけます。実は当初緑色ですが、熟すにつれて赤みを帯び、熟すとワインレッドのような色になります。コーヒー農園ではこのような色のコーヒーの実を収穫します。

ちなみに、この段階でもコーヒーの品質管理は始まっていて、熟し過ぎて実が黒く固くなったものや虫食い痕などがあるチェリーは収穫の段階で除外されています。その辺りの精度の高低でコーヒーのグレードが決まるものもあります。当店で取り扱っております高品質なスペシャルティコーヒーはチェリーの選別なども含めてすべての精度が高いわけです。

コーヒーの実

コーヒーの実を分解すると図の通りになります。

ごらんになって・・・まず疑問をもたれた方もいらっしゃると思いますが、私たちが日ごろコーヒー「豆」と呼ぶものは、実は種子、タネなのです。そも、世界の誰が最初に「豆」と呼んだか店主はいまだそれを知らないのですが、世界的にもコーヒー豆は「COFFEE BEANS」として流通しています。

赤い実のコーヒーチェリーの中にどーんとタネが入っていますね。赤い部分の果肉が薄いことも特徴です。タネ・・・と言いますか、コーヒー生豆本体はパーチメントと呼ばれる皮に守られていて、生産国にあるコーヒー農園などでは通常、パーチメントをつけたままの状態で精製処理が行われて出荷できる段階まで乾燥工程が行われます。いざ出荷という段階でパーチメントが脱穀されてコーヒー生豆の状態で輸出されていきます。コーヒー生豆の焙煎が行われると、そこでようやく皆さんおなじみ茶褐色のコーヒー豆になります。

食す

コーヒーチェリーを手に入れたらやりたかったことの一つ・・・。コーヒーチェリーを分解することもそのうちの一つでしたが、もちろん食べてみたい! というのも大きな野望でした。そして、食べました。チェリーをいただいたその日にさっそく。

酸味の濃そうな気がする赤い実の見た目からは意外かもしれませんが、無味無臭に近い味わい?でした。食べて、果肉を味わうと、最初の一瞬だけほんのり甘味を感じました。それは、うすい砂糖水のような果実感がない印象の味でした。

拍子抜けしたところもありましたが、これが、コーヒー農家の人が標高1500m、あるいは2000mにもなる農園でしっかり育てたコーヒーチェリーならば、すごく甘味があるそうです。このクラスの高地になると昼夜の気温寒暖差が大きく、そのためチェリーの甘味が増すようです。その果肉の甘味がコーヒー生豆に浸透することでもおいしいコーヒーの味成分が作られていきます。

食べた果肉の量は、イメージしていたよりも多かったです。いえいえ、他の一般的な果実やそれこそさくらんぼの類に比べてもコーヒーチェリーの果肉は少ないのですが、少ない少ない少ない・・・という知識がありましたのでそのイメージを膨らませすぎていたようでした。

そのうすい果肉の中からコーヒー豆・・・もとい、タネがポンポーンと弾け出てくるように口内に。あまかみしてパーチメントを破っていくとコーヒー生豆本体が出てきました。しかしながら、どこまでいっても、無味無臭。

すこしだけ草っぽい、いわゆる青っぽい味も感じましたが、これは果肉の味ではなくてパーチメントか生豆の味かもしれません。味がしたといってもこちらもほんのりでしたが。

果実は、動物が食べてタネを広く蒔いてもらってこそだと思うのですが、コーヒーチェリーは動物を惹きつけるような魅力には乏しいような気が・・・。それでも、8世紀のアフリカ・エチオピアでヤギがこの赤い実を食べた話がヤギ飼いのカルディ氏より伝わっていますから、高地のエチオピアに自生していたコーヒーチェリーもやはり甘かったのだと思います。甘いのも食べたいです。

タネのカタチ

通常の場合、1つのコーヒーチェリーには2つのコーヒー生豆(タネ)が入っています。チェリーを半分に割ってみると分かりやすいです。

これがチェリーの中ではコーヒー生豆の平たい(フラットな)面が向かい合わせになっています。この片側フラットな生豆が私たちがよく目にする焙煎されたコーヒー豆の形でもありますね。写真中央。

ところが、そうでない形の豆もあります。写真右側。フラットではなく全体的に丸っこいことが見てとれると思います。実は、1つのチェリーに生豆が1つだけ入っている場合があって、これはピーベリーと呼ばれています。・・・とはいえ、細かいお話ですが、ピーベリーが出てきたチェリーにも実際にはやはり生豆は2つ入っていて、その内、片方1つの生豆が生育不良などの理由で育たず、もう片方の生豆にだけ養分が供給されて1つだけで育ったものがピーベリーです。ピーベリーは、100gや200gの焙煎豆パックの中にも探せばすぐに見つけられるくらいには、あります。四つ葉のクローバーよりは見つけやすいかなと思います。

しかし驚きは写真左側。3つの生豆が組み合わさっています。もちろん、これも1つのチェリーに入っていました。トライアングルと呼ばれるようです。この形も、コーヒー農園動画などをみていると「映え写真」のように出てくることはしばしば。ですから、「ありえない!」という驚きではないのですが、そんな遠いお空の下の話だと思っていたものが先日、店主が生まれて初めて食した1個めのコーヒーチェリーから出てくるとは思いもよりませんでした・・・! 僥倖というほかないです。

まとめ

コーヒーは植物のタネだからこそ、タネの生育状態も一様ではありません。コーヒーは農作物で、アフリカや南米などでコーヒー農家の人たちが農業として、ビジネスとして、生活の糧として栽培しています。情熱を傾けて、時間とおカネを使って知恵を絞り、努力をして品質向上に取り組むことで信じられないような高品質のコーヒーを生産してくれています。コーヒー豆はそんな遠い国々から輸入されてきているものです。

当店で飲む1杯のコーヒーを、「おいしい」と感じていただけましたら、そんなストーリーに思いを馳せていただけると、またひと味違ったおいしさを味わっていただけるかなと、そして、店主としましてはこんなふうにもコーヒーの価値を伝えていけるといいなと思っております。(了)

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