まさる

小説を読むのが好きです

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いきつけの店

「いきつけの店」 そんな言葉に憧れる。 もちろん、お金のない大学時代に通ったお店はある。 安い、早い、味はそこそこ。 サークルの仲間と毎週のように通って、怪しいハイボールを浴びるように飲んだが、それはただ何回も行っただけ。 店長と仲良くなることはなかったし、店員さんと顔見知りになることもなかった。 もっとこう、友達未満、知り合い以上の関係。 家でも職場でもない、第三の場所。 そんなお店が、大人になればできるのかと思っていた。 大学を卒業しいろいろあって月日も流れ、東京

    • たった一度の乾杯

      一度だけ。 父と乾杯したことがあるのは、その一回限り。 ※ 「ありました。合格です」 その留守電は、僕の中学入試の合格発表を観に行った父が吹き込んだものだ。 遠方の学校で、しかも(たしか)平日だったので、父が車で見に行ってくれたのだった。 留守電を聞いていたので、もうこれで解放された~と思いつつ、その日も塾へ通った。今思うとなぜ行ったのかよくわからない。 その日は、父が車で塾まで迎えに来てくれて、家族で祝う手はずになっていた。 迎えの車に乗ったあと、父が「ちょっと寄り

    いきつけの店