令和元年予備試験再現答案 民事訴訟法

令和元年の民訴は、民法と商法で時間を大幅に食われた分、焦りで論点落ちかつ実質的途中答案となり、最悪の結果でした。正味の得点は、設問1の固有必要的共同訴訟の検討の部分のみだと分析しています。

民訴自体、ロースクールでも成績がトップで、自信を持っていただけに、歯がゆい結果でした。

この答案は、得点できない答案とはどのような答案かという点で参考になるかと思います。ぜひ、反面教師としてください。

第1 設問1
1  本件訴えは,X1らの甲土地の売買契約に基づく所有権移転登記手続請求訴訟である。他方,本件では,X1がYに対する訴状送達前に死亡している。ここで,民事訴訟においては,二当事者対立構造から,訴訟係属の時点で二当事者対立構造が生じていない限り,訴えは不適法となると解される。そのため,訴訟係属の生じる,被告に対する訴状送達(民事訴訟法(以下略す)138条1項)時点で当事者が死亡している場合には,訴えは不適法となる。
 本件訴えは,売買契約に基づく所有権移転登記手続請求権を訴訟物とする。そして,甲土地の売買契約は,X1及びX2が共同購入したことによると主張する。そのため,X1及びX2が売買契約の買主と主張し,原告として訴えた「当事者」(133条2項1号)である。
2  もっとも,本件訴えは,上記の通り,X1らが甲土地の共同購入を主張している点,複数の者が当事者となっている共同訴訟の形態である。ここで,共同訴訟人独立の原則から(39条),一方の原告が死亡しても,他方の原告にかかる訴訟手続は影響されない。他方,本件訴えが,複数人が当事者となることが法律上要請される,いわゆる固有必要的共同訴訟にあたる場合は,X1の死亡により,X2の訴訟手続に影響が生じ得る(40条1項参照)。そこで,本件訴えが固有必要的共同訴訟にあたるかが問題となる。
(1)  固有必要的共同訴訟は,当該訴えが複数人間において「合一に確定」する必要がある共同訴訟形態をいう(40条1項参照)。その趣旨は,訴訟共同を法律上強制することで,訴訟物たる実体法上の権利又は法律関係に照らし,証拠資料のみならず訴訟資料をも共通化させ,統一的かつ一挙的に複数当事者間の紛争解決を図ることにある。そのため,当該訴訟が,複数当事者間において「合一に確定」すべき場合にあたるか否かは,訴訟物たる権利又は法律関係の実体法上の内容,性質(管理処分権の共通性など)を踏まえ,当該複数人にかかる紛争の終局的解決のため,訴訟資料の共通化を図り矛盾なく統一的な判断が法的に必要となるか否かにより判断されると解される。
(2)  本件訴えは,上記の通り,売買契約に基づき所有権移転登記手続請求権を訴訟物とする。そして,X1らは甲土地を共同購入したことを主張する。ゆえに,訴訟物は,特定物債権たる性質のものであって,給付が契約の当事者たるX1ら両名に向けられるものである以上,X1らが不可分に管理処分権を有するものであるといえる。
 かかる実体法上の権利の内容及び性質を踏まえれば,本件訴えにおいて終局的な解決を図るには,訴訟資料をも共通化し,請求原因となる売買契約の成否がX1ら両名において矛盾なく統一的に判断される法的な必要があるといえる。
(3)  したがって,本件訴えは,X1らにつき「合一にのみ確定」すべき場合であるから,固有必要的共同訴訟にあたる。
3  そうすると,本件訴えは,X1ら両名の訴訟代理人Lがいるため,訴訟手続の中断は認められないが(40条1項,124条1項1号,同2項),X1を単独相続したAの関与なく進行することになる。そして,このままでは,訴訟係属が生じない以上,訴えは不適法と言わざるを得ない。他方,争点整理終了時点まで手続が進行している点,不当であるように思えるが,合一確定の法的必要がある以上,やむを得ない。
4  したがって,X2は,Yの同意を得て本件訴えを取下げ(261条2項),再度Aとともに訴えを提起すべきである。
第2  設問2
1  既判力(114条1項)を根拠にZの主張を排斥するには,そもそもXY間に生じた前訴判決の既判力がZに及ぶことを裏付ける必要がある。
2  ZはYから所有権移転登記手続を経ているため,「承継人」として115条1項3号により拡張を受けるという構成については,本件は口頭弁論終結前であるため,採りえない。
3  そこで,原則に立ち返り,前訴判決の既判力が,単に登記名義の移転を受けたにすぎないZとの関係でも,実質的に「当事者」と同視できるとして,115条1項1号に基づきZに及ぶとの法律構成が考えられる。
 すなわち,Zは,Xから本件訴えにかかる強制執行を免れる目的で,所有権移転登記名義を受け,単に名義人となったにすぎない。他方,給付の目的は,所有権移転登記手続である。そのため,売買契約に基づく所有権移転登記義務を負うYの地位と実質的に同視することができる。
                            以上

【順位ランク】F

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