チームや職場にITツールを導入するなら必ず説明しておきたいポイント
(2021/6 追加)
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個人でITツールを使いこなしている人でも、チームに使ってもらおうとすると、意外とつまづくことが多いようです。これまで、その理由をなかなか言語化できなかったのですが、この記事では、個人用ツールとチーム用ツールの根本的な違いについて解説します。
個人でバリバリいろんなツールを使いこなしていたよ、という人でも、不慣れな人が多い職場への導入では非常に苦労することが多く、また悲劇も起きやすいので、気をつけるべきポイントも合わせてお伝えします。
この記事は、職場やチームにITツールを導入したいけど、チームメンバーはそういったツールに不慣れで、なかなかうまくいかない!とお悩みの方向けです。チームですでにツールを使っているとか、メンバーがバリバリとツールを使いこなせるといった状況の人には、まったく役に立たない内容なので、そういう方はスルーしてください。
個人用ツールには、「みんな」という概念がない
個人用なので当たり前ですが、逆にその「当たり前」に慣れている人からすると、チーム用ツールの概念がなかなか理解できないようです。
チーム用のツールには、基本的に、みんなの場所・みんなのモノ、という概念があります。その中に、私のモノ・私の場所を作ることはできても、始めるためにはまずこの「みんなの場所」が必要なのです。
この「みんなの場所・みんなのモノ」という概念をスッと理解できる人と、できない人がいるようです。
分かっている人からすると、みんなもわかるよね? となりがちなので、分かっていない人が「何が分からないのかが分からない」(日本語ムズカシイ)。
でも、多くの人、個人用ツールしか使ったことがない人にとっては、みんなの場所・モノがあるということに慣れていない。初めての体験になるので、戸惑ってしまうのです。また、ツールによっては、みんなと私の境目がわかりにくいこともあります。
具体例を挙げてみましょう。
個人用ツールの考え方
Google系のツールは、基本的に「全部、私の場所・モノ」という考え方です。
例えば、個人用のGoogleドライブという「私の場所」があって、そこに「私のファイル」を置く。フォルダもファイルも突然誰かに見られることはない。なぜなら、それらは「私の場所・モノ」だから。
Evernoteも同じ発想です。自分が作ったアカウントが「私の場所」になり、その中のノートブックもノートも「全部、私のモノ」です。
個人用ツールは基本的にこういう考え方です。
もちろん、GoogleでもEvernoteでも、他の人と共有したり、共同作業をするための機能はあります。ただ、その場合も、場所やモノは必ず誰か持ち主がいます。他の人と共同作業をするときには、持ち主が「共有」する、相手に公開するというアクションをする必要があるので、「私のモノ」と「誰かに見せているモノ」の境界線はとても明確です。
チーム用ツールの考え方
一方で、チーム用のツールは、まず「みんなの場所」があって、その中に「私の場所」を作ることもできる、という考え方になっています。こちらも具体例を見てみましょう。
例えば TimeTree は、家族・パートナー・友だちと共有して使うことが前提のカレンダーアプリです。ですから、まずは家族のカレンダーという「みんなの場所」を作ります。そこに家族やパートナーを招待するので、そこに書かれている予定は「みんなに見える=みんなのモノ」という形です。
LINE WORKS も同様の考え方になっています。まず最初に「みんなの場所」を作る必要があります。その中に、「みんな」よりも小さな単位である「私たち」の場所になるグループやトークルームを作っていきます。そこに書かれる内容、やり取りされるトークは、「みんな」や「私たち」に見えるモノという形です。
どちらも、「まず最初にみんなの場所を作る」という点が、個人用ツール、例えばGoogleカレンダーやLINEとの大きな違いです。
そして、どちらのツールも、個人的なモノ、他の人に見せたくない私のモノ(予定やメモ、資料など)を入れる場所が欲しいな、という場合は、「みんなの場所」の中に「私の場所」を作れるようになっています。
つまり、チーム用ツールには、「みんなの場所・モノ」と「私の場所・モノ」が両方存在するのです。とてもシンプルで当たり前のことですが、これをスッと理解できる人と、できない人がいます。理解できない人、不慣れな人が、何の説明もなくこういう状況に置かれると、混乱してしまうのです。
ありがちな間違い、起きがちな悲劇
個人用ツールで最初にやることは、自分のアカウントを作ることですが、チーム用のツールはまず誰かが「みんなの場所」を作らないと始まらないのです。また「みんなの場所」を作る人は、ひとりでなければいけません。
よくある間違いや誤解が、チームでツールを使いたいのに、「みんなが、『みんなの場所』を作ってしまう」ことです。個人用ツールを使いはじめるときのように、全員が「新規作成」や「アカウント登録」をしてしまうと、このような事態に陥ります。こうなると、誰も「みんなの場所」に集合できないので、チームで使うことができません。
次に起きがちな悲劇が、「みんなの場所」を「私の場所」と勘違いする人が出てくる、「みんなのモノ」を「私のモノ」と勘違いして操作してしまう(例えば、不要と思って削除するなど)ことです。
これが起きると、分かっている人は「なんでそんなことするの!(怒)」となるし、分からない人からすると「なんでこんなに分かりにくいの?」となり、「よく分からないから怖い、使わない」となってしまいます。
お互いに不幸ですね。
ITツールに不慣れな人に伝えてほしいポイント
チームや職場に、新しくITツールを導入しようと考えている方は(きっとあなたにとっては『こんなの当たり前じゃないの?』と思っているでしょうが)、以下の内容を説明してみてください。
きっと、周りの方に理解してもらいやすくなると思います。
■「みんなの場所、みんなのモノ」という考え方があることを教えてあげる。
まずは、このツールはそういう考え方でできているんだよ、と伝えましょう。言われなければ分からないけど、言われれば分かるという人はたくさんいます。
■ 自由に触ってよい「あなたの場所・モノ」を用意する。
ここは「あなたの場所」、これは「あなたのモノ」だから、自由にいじって大丈夫だよ、と伝えましょう。とかく、会社や組織では「間違ったことをしてはダメ」という圧力がかかりがちです。人は経験しないと覚えないので、間違った操作をしても問題ない場所・モノを提供しましょう。
せっかく導入しようと頑張ったのに、「ウチの職場、遅れてる人ばっかりで全然ダメで…」という方を、たくさん見てきました。
ちょっとした掛け違いから混乱や反発を招いてしまうことも多々あります。
この記事がITツール導入の際のヒントになり、無駄な悲劇を避けるための一助になれば幸いです。
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