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散り椿シーン3

散り椿シーン3

城代家老石田玄蕃と榊原采女。

瓜生新兵衛が、丁度平山道場で平山重五郎と面談している頃、扇野藩内にて城代家老石田玄蕃と榊原采女が対面していた。

榊原采女は、「明年春に新たに城主して来られる千賀谷政家様は、新たなる御改革をお望みです。民を案ずることこそ武士の勤めかと存じます。」
それに対して………
城代家老石田玄蕃は、榊原采女に対して「采女、いい加減新田開発は、諦めたらどうだ。
新たなる開発は扇野藩の財政を危うくするだけだ。」「よいか、田中屋が独占販売している扇野和紙利益があるおかげで扇野藩の財政は、潤っているのだ。」
それに対して采女は、「御家老達だけがその恩恵を受けているのは、見逃せません。」と応じる。
家老石田玄蕃は、「亡き先代に代わって明年春に来られる若殿の力を頼りにしているのだろが、そうはいかんぞ弟君もおることだしなぁ」と意味深く言う。
気色ばんで、采女が「これは聞き捨てなりません。若殿に何かあると言われるのか!」と玄蕃に問いかける。
玄蕃は、「そうは言ってはおらん。よいか采女、若殿の側用人として藩政に係わるなら清濁合わせ飲む度量を示せ」と言い切る。
采女は、玄蕃を睨み付け出て行く。

夕刻、石田玄蕃邸に十蔵が駆け込んでくる。庭先で石田玄蕃に瓜生新兵衛が、戻ったことを知らせる。
「何だと、新兵衛が戻って来ただと!厄介な奴が戻ってきよった。京で始末しておけば、おい新兵衛から目を離すな」と十蔵に命ずる。
夕刻、東吾は自分の屋敷に戻り、姉の美里に、「山回りの途中で瓜生新兵衛に会いました。」と告げる。
里美は、「新兵衛様に……姉上は一緒でしたか?」と東吾に尋ねるが、東吾はにべもなく「一人でした。あの厄介者が……我が家は色々とありました。気を付けねば」と苦々しく言い捨てる。
里美は、「東吾!」とたしなめる。

早朝、瓜生新兵衛は坂下東吾の屋敷に出向く。玄関先で東吾と出会い、東吾は、「姉から昔のことは色々と聞きましたそうそうに、藩を立ち去られたら如何でしょうか」と迷惑そうに新兵衛に言う。
奥から出て来た里美が「新兵衛様、お懐かしゅうございます。」と満面の笑みで迎える。そして、東吾に「失礼な!帰ったらちゃんとご挨拶してもらいます」と怒気をはらんで言い切る。

東吾は、篠原三右衛門邸に向かい。篠原三右衛門と瓜生新兵衛のことを聞く。
三右衛門は、「新兵衛のことを知ってもそなたの為には、ならんぞ」と一旦は断るが、東吾が「仮にも身内のことなので…」と懇願すると、三右衛門は8年前のことを話し出す。「新兵衛、そのたの兄源之進、采女とわしの4人は、平山道場でお互いに鍛え上げ、硬い絆で結ばれていた。稽古の帰りには、よく坂下邸に行ったものだ。何せ篠殿、里美殿と言う二人の美女がいたからなァ。わしは、いずれ篠殿と采女が婚姻するものと思っていたが、篠殿が選んだのは、新兵衛だった。あれにはわしも驚かさせられた。」
東吾は、「何故姉は新兵衛殿を選ん打のでしょうか?」と尋ねる。
三右衛門は、「采女の養母だった滋野様が身分が違うと反対し、篠殿に好意を持っていた新兵衛を選んだのだろう」
東吾は、「滋野様の反対がなければ姉は采女様に嫁いでいたのでしょうか?」と三右衛門に再び問いかける。
三右衛門は、「男と女のことは、よくわからん。しかし、美鈴のことを不幸にしたらわしが、叩き切ってやるからなァ。」と真剣にそして笑いながら東吾に言う。
東吾は、ただはにかんでいるのだった。

城内の遠く雪を頂く山が見える石垣のところに、榊原采女が笑顔で風景を眺めている。
そこに、城代家老の石田玄蕃がやって来る。采女に向かい「新兵衛を呼び戻したのは、そなたか?」と問いかける。采女は怪訝な面持ちで、「新兵衛に戻られて何か御家老に不都合なことがあるのですか?例えば、8年前のことをほじくり返されたら…」
「妙な詮索はするな。我が藩にも色々と揉めごとがあった。それは、云わば権力争いだった。」と石田玄蕃は答える。
采女は、「悪事を働いた者が、他の誰かの責任にすれば、いずれ自分の身に返ってくるでしょう。違いますか?」と玄蕃に問いかける。それに対して玄蕃は、「そのたの父は誰に切られたのかまだわからん。案外、近くにいた者やも知れぬ」と采女を牽制するが、采女は「仮にも信じられぬ詮無いことと」一蹴する。

東吾が、城内の仕事場で書き付けを行っていたところに十蔵がやって来る。「瓜生新兵衛がそなたのところに来たであろう、いまどこにいる?」と尋ねるが、東吾は「出て行くよう申し伝えました。あの男が今どこにいるのか存じません」と答え、十蔵は「知らんのか…」と気を落とす。
仕事道具をまとめ部屋から出て行く東吾、廊下に出ると端に膝を着く。榊原采女がやって来たのだ。
「瓜生新兵衛が帰って来たそうだな、武士の命は儚いものだが、花🌸は散って行くがまた明年花は咲く。
篠殿とも会いたいものだ。新兵衛に近く我が屋敷に来るように伝えてくれ」と東吾に言い渡す。

東吾の屋敷の囲炉裏端、新兵衛と里美が並んで座っている。里美は盛んに泣いている。姉の篠が死んだことを新兵衛から聞いたのだった。
そこえ東吾が勤めから帰って来る。里美の様子を見てどうなさいましたかと尋ねる。
里美は東吾に向かって「姉上が亡くなられたそうです。さぞかし新兵衛様と御一緒で幸せだったことでしょう」と新兵衛に言う。新兵衛は、苦しげに「慎ましい生活しかさせてやれなんだ。拙者には過ぎた妻であった」と言葉を絞り出すように言う。
東吾が、「采女様が姉上のことを心配されておられました。早速お伝えしなければ、新兵衛殿には近々屋敷に来るように仰いっておられました」と新兵衛に伝える。
新兵衛は、険しい表情で「あやつには、いずれ参ると伝えてくれ」と言いその場を離れる。

夕げの際、東吾は「新兵衛様は、いつまでこの屋敷におられるのですか!」語気を荒げる。すかさず里美が、「当主は貴方ですが此は親戚付き合いのことですから私が決めさせて頂きます。」と東吾に釘を刺す。

夕げの後、縁側で酒を飲む新兵衛外は雨が降っている。里美に篠との約束を話す、散り椿を篠の代わりに見ること、散り椿は春椿明年まで待ちませんと答える。
そして、榊原采女を助ける約束。それを聞いた里美は姉の気持ちが采女にあったとすれば、申し訳ないことです。と頭を下げる。新兵衛は、頼みごとをされてわしは、嬉しいのだと言う。そしてやるべきことをするだけだ…………と。
里美は、ではお切りになるのですか?と尋ねるが、新兵衛は、「里美殿までそう言われるか、今でも鬼の新兵衛が祟っているようだ」と自虐的に笑う。


最後迄御覧頂き感謝致します。
続けてストーリー4を書いて参りますので御覧ください。

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