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第8回テーマ「VUCAの時代の要は中間層の連帯化」

バブル世代(現53歳以上)とZ世代(現23歳以下)の若者との意識の格差が顕著に出はじめた。滅私奉公、個人より会社が優先、辞令がでればどこにでも飛んでいくバブル世代。一方、幼少期の頃よりスマートフォンを片手にSNSの住民としてネットサーフィンよろしく、どこへでも自由に往来し、同朋意識に重きを置くZ世代。今多くの企業ではこの真逆の価値観が混在し、双方が戸惑いと混乱の中にいる。

そして、その間(はざま)で揺らいでいるのが、中間管理職に代表される世代だ。もはや、この揺らぎにどこまで耐えられるのか、我慢比べの様相を呈している。バブル世代の頭の中は、「上司なのだから自分の指示に従うのは当たり前、少々きつく当たるのは指導の一環」とパワハラ、モラハラ何のその。一方、そのような組織に自分の未来が見えないと次々に辞めていく若者たち。丁度その間で辞めていく部下を慰留しきれずにいる中間層。

今まさにこの3階層の価値観の違いが「離職が止まらない」という現象で浮き彫りになっている。この3階層に必要なのは、お互いを理解するために話し合う場だ。仮に立場的に若手は難しいとしても、旧人類と中間管層で「離職が止まらない」問題を真摯に受け止め、胸襟を開いて、今後のあるべき姿を話し合う時ではないか。つい先日のことだが、私のクライアントで、数千億規模の食肉加工会社の事業部長が営業マンA氏を「ただ気に入らない」という理由で、地方への異動を命じた。A氏は家庭の事情で難しいと懇願するも「異動に不満があるなら辞表を出せ」となり、そのまま退職に至ったという事例がある。これは昭和の時代の漫画に出てくるような話であるが、実際これと似たような例は未だに後を絶たない。

私は勃発して止まないこれらの問題を解決すべく、中間管層の方々へ「ホンネで語るミーティング」をいたるところで仕掛けている。まずは、この中間層に溜まっている不満を吐き出しもらい、慰労と共感の場を設けること。お互いの想いを吐露することで孤独感は癒され、連帯感を高めることに繋がる。組織というものは、上からの圧力が強ければ強い程、下の者は上司の顔色を窺わざるを得ず、結果として横の連携が弱くなるという特徴を持つ。この混沌とした状況から抜け出すためには、上下双方の価値観を理解する中間層の活力を高めることが必須だ。

そのための第一歩が先に述べた、中間層のホンネを吐露する場作りなのだ。もはや建前主義ではBUCAの時代は乗り切れない。ホンネにこそパワーがあることを認めよう。この変革の行き着く先は、従来の縦型組織の延長線上にはない。中間層を中心とした一体型組織に向かうべきだ。職位にパワーを持たせるのではなく、それぞれの役割の機能化に注力する新な組織。

そしてこの一体型組織の運営の前提となるのは「お互いを尊重する」という精神性。この組織は「上司は部下より偉い」というポジショニングパワーではなく、お互いへの敬意と感謝をモチベーションの源泉に据える。この意識転換を図ることは、組織形態の進化を図るとともに、人間としての更なる成長を期待することでもある。
(日本食糧新聞掲載 令和3年11月15日)

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