見出し画像

(小説)不条理 1章

[道理をつくさないこと。道理に合わないこと。]

納得が出来ない。
何故そんな事をされないとダメなのか分からない。

(起)
産まれた時から命の危機を間近で感じる日々。
明日、食べる物も約束される事はないので水しか飲まない日もある。

(何故僕らはこんな生き方をしないといけないの?)

そんな生活の中でも母と兄妹だけはいつも自分に優しく微笑んでくれていた。
寒い時は体を引っ付けて皆んなで寝た。
暑い時は母が涼める場所を教えてくれた。
ご飯も毎日ではないが大きなお肉を用意してくれる時もあった。

早く僕も大きくなって皆んなにご飯を用意出来る様に頑張るね。お母さんいつもありがとう。

(承)
そんな日々の中、私が日課の散歩中に綺麗な黒い毛色の可愛い女の子と目が合った。

可愛い子だなぁ。僕らとは住む世界が違うと母さんが言ってたけどお話しするくらいは良いのかな?

勇気を出して声をかけようと近づいてみた。
すると驚いた事に見えない透明な壁がある。
話しかけても声が聞こえないのか、返事はない。何とか透明な壁を抜けれないかと考えていたらいきなり上から大きな袋が降ってきて力任せに入れられてしまった。
僕は慌てて飛び出そうとしたが出られない。

いきなり何故閉じ込めるの?何も悪い事をしてないのに。

(転)
すごく揺らされた後に大勢の子たちがいる部屋に入れられた。
必死に泣いても誰も助けてくれない。
怖い。悲しい。家族に会いたい。

お母さん、、、助けて。

ここにいる子たちは誰なんだろうか、壁を越えた隣にも泣いてる子がいる。

初めて孤独という感情が芽生えた。

外にいる時は食べ物がなくても優しさがあった。
外にいる時は風が冷たくても温もりがあった。
外にいる時は暑い日でも涼む手段があった。
ここには少しのご飯があるだけ。

(結)
何日過ぎただろうか、僕は抱き抱えられ外の世界に出た。

大きな動く絵がニコニコしてこちらを見ている。でもなんだか温かくて居心地が良いのを感じた。
それは母や兄妹が向けてくれた温かい感覚である。
何かすごく懐かしさ感じ、そのまま僕は眠ってしまった。


続く

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?