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現代アート「My fair prisoners!?3」の四代目坂田藤十郎さんの調書とエッセイ※全文掲載

この方も、亡くなりたてほやほやです。 歌舞伎役者の方です。 山城屋の方で、僕に生前「My Fair Prisoners!?」を頼んでくれていたんです、非常に残念です…、実際に会えなくて。でも、こうやって作品に参加してくれました。 名前は、四代目坂田藤十郎さんです。

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                            My Fair Prisoners!?調書

囚人番号:20201115163236

名前:罪人           

懲役:88年

服役した刑務所:京都府京都市

音楽:民謡、美空ひばり

映画:「夫婦善哉」、「七人の侍」

本:「人間の証明/森村誠一」

罪:色々な女に入れ込んだ

喜:子供の成長、芝居が成功した時

怒:今の厚生労働省

哀:戦争、ひもじい思い

楽:芝居をしている時

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                                           「罪人」さん

 幼少期は、チャンバラばかりやる悪ガキだった。その悪さを直そうと親が思い、歌舞伎の修行をさせた。当時「罪人」は、不安で一杯だった。先が全く見えない不安の大きさを知った小学校時代。 師匠との関係は良かった。だから頑張れた。師匠の為が半分、自分の為がもう半分だと考えていた。

 扇千景との出逢いが、自分を大きく変えた。替えてくれた。本当に感謝している。しかし、人気者になり、勘違いを起こした。多くの女性を相手にしてしまった。妻に面目が立たない。でも当時は、それを止める方法がなかった。有名税に嫌ってほど悩まされた。もっと早く有名税を知りたかった。

 芸には多少の自信はあるが、この先千年を考えると、恐ろしくなった。自分の代で終わらせた方がいいのではないか、そこまで考えた。それは妻も子供たちにも言えなかった。

 日本の事を知るために、留学でもしたかった。したかった事は山ほどある。そのやりたさと天秤にかけ、女遊びを選んだ程度の男だと、「罪人」は吐露した。これが、有名税の怖さである。経済的な余裕と引き換えに、精神的な鎖に脚を獲られてしまう。有名人だからこその悩み。ここまで話してくれた。

 引退のない世界では、精進に精進を重ね、芸を磨く。それを言葉ではなく、正した生きる姿勢で答えてくれた。    (了)

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※この方も刑期を終えました。


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