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荒木経惟(アラーキー)の写真集 その1

荒木経惟先生(以下:アラーキー)の写真集を初めて買ったのは大学1年生くらいだったろうか。
あの頃は飛ぶ鳥落とす勢いの天才写真家として、数々の雑誌等に写真が掲載されていました。
当時、篠山紀信先生も宮沢りえさんのヌード写真集などで、写真に興味のない人にも知名度は高く、独特の世界観を作り出すアラーキーは好みが分かれるところだと思います。

大学1年生の私は、「俺も大人なんだぜ」みたいに格好付けてアラーキーの写真集をかいましたが、アラーキーの写真を見ても何がよいやらさっぱりわかりませんでした。
それ以来、アラーキーの写真集は買ったことがないのですが、50歳をすぎて、今改めて見てみると、アラーキーの世界観や表現したかったことがわかるようになりました。
今年1年間で私が購入したアラーキーの写真集・書籍は12冊(kindle含む)
今回は、そのうちの2冊について感想を述べたいと思います。

さっちん

アラーキーを写真家として有名にした作品です。
街で出会った少年(小学生くらい)が昭和の街中で活き活きと動き回る様が収められています。
どこか懐かしい古びたアパート、上半身裸で泥まみれで遊ぶ姿、そして子供達の純粋な笑顔。どれも懐かしい写真ばかりです。
令和の時代、街は綺麗になり、生活はより豊かに便利になりましたが、街から子供達が消え、楽しそうな笑い声や、元気な笑顔を見ることが無くなりました。すこし不便、でも明るい未来を想像できた昭和の良き一面を記録した名作ではないでしょうか。

愛しのチロ

アラーキーは最愛の妻、陽子さんとの間に子宝に恵まれず、我が子のように可愛がっていた愛猫のチロちゃんがいました。そのチロちゃんの愛らしい様子や妻、陽子さんが亡くなった後のチロの姿を写真に残しています。
前半は、アラーキーと陽子さんがチロちゃんを溺愛でしている写真で構成され、ほのぼのとした雰囲気が伝わってきます。
しかし、後半は一転して洋子さんが亡くなった後、どこか寂しげなチロの姿、そして一番悲しみのどん底にいたはずのアラーキーの心情が伝わる描写になっています。
愛と悲しみの両面を感じる作品です。


次回に続く(たぶん)

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