見出し画像

小説:ロミオとジュリ・エット(前編)

第1章:出会いとやり取り


東京のある普通の高校に通う樹里(じゅり)
和やかな家庭に育ち、素直でありながら
感受性豊かで、周りから愛される性格の女性

 夜遅くにベッドに横たわりながらスマートフォンを手に持っていました。
 彼女はとあるSNS上で「ロミオ」と名乗る人物の投稿を目にする。
 自分の愛猫の名前と同じその名前のタイムラインをついつい追ってしまう。
 水彩風景絵師を名乗るそのロミオの投稿している絵画はどれも夢で見た事のある場所だった。
 興味を引かれた樹里は、その投稿をクリックし、彼とのやり取りを始めます。
 鮮やかな言葉遣いと深い考えを持つロミオとのやり取りは純粋に楽しく、夢で見た事は追求せずに普段の会話をしているだけで樹里の心に響く事も多く、彼女は彼とのやり取りに没頭していきます。
 やがて、彼らは趣味や興味を共有し、毎晩の様に通話をする様になり一方通行かもしれないが特別な感情がほのかに生まれていた。
 しかし、初めてのその感情を樹里はまだ何も知らなかった。



 樹里の親友で幼馴染の瑛音(えた)は、樹里が最近とても楽しそうに「ロミオ」の話をするようになりひょっとして初恋でもしているのでは?と
 興味を持ち始めていました。
 好奇心旺盛な瑛音はついつい首をツッコミたくなり、樹里のフォロワーさんの中から、ロミオのアカウントを探し出し、彼の描く風景画を観た時、衝撃を受けた。
 いつも見る夢の中の風景と同じだ。
 「……え…一体どうゆう事?」

第2章:前世の記憶の発見

 ある晴れた日曜日、樹里(じゅり)は瑛音(えた)と昼食をとっていました。
 世間話もそこそこに瑛音が樹里に尋ねました。
瑛音「樹里、ちょっと変な事聞くけど、良く観る夢の話を前にしてくれてたよね?」
樹里 「え?うん。最近もまた見る事多くなってきて、私が仮面舞踏会をしてて、、」
瑛音「とある男性に会うんじゃない?」
樹里「そうそう、でも、、」
瑛音「途中でスカート踏んで転びそうになる。違う?」
  まるで見てきたかのように瑛音は樹里しか知らない様子を当てる
樹里「え?あれ?ここ話したっけ?なんで、知ってるの!?」
瑛音「…私もその夢見るの。」
樹里「え?!瑛音も!?」
瑛音「その時の会場って、、、コレよね?」
瑛音はスマホの画面を見せる。
そこには「ロミオ」が描いた風景が映っている。



樹里は驚いた表情で瑛音を見つめた。
樹里「え、、これって……どういう意味?」

瑛音は躊躇しながら、
瑛音「私たち、もしかしたら同じ時間軸の夢を前世の記憶を持ってるみたいなんだ。」
気づいてから瑛音は様々な分野での同じような体験をしている記事を探し、専門家の方に連絡を取り調べていた。
  実際にアメリカ1900年代後期に同じ前世の記憶を持つ6人の男女が居た記録も残っていた。
  彼らは別々にインタビューを何度も行ったが
驚くべき事に同じ記憶を共有していた。
 そして、夢で記憶の断片を観ていた。
そして、その記録を辿っていくとアメリカフロンティア時代の実在した6人の開拓者であったという。



 最初は驚いた樹里であったが、瑛音の表情は真剣そのものだったので、樹里は瑛音の言葉を信じ、彼女と一緒に前世の記憶を探ることを決意します。

 2人は一緒に過去を振り返り、それぞれが前世の断片的な記憶を思い出し、ノートに書き連ねて行った。
 そして、繋ぎ合わせたノートを2人で読み合わせるとそこには「ロミオとジュリエットの物語」が浮かび上がってきた。
 樹里は自分がジュリエットであり、瑛音がロミオだったことを知った。

第3章:澪の声

今日もカフェの一角で、樹里(じゅり)と瑛音(えた)は前世の記憶をノートに付ける為に話し合っていました。


 珈琲を届けにきた店員さんから、予想外に声を掛けられる2人
男性「その時にロミオがワインを一気に飲んじゃったんですよね。」
 驚いて声の主を見ると、落ち着いた表情の男性が微笑みながら立っていました。



澪「ロミオとジュリエットの話、面白そうですね。」
 先程の彼の言葉に興味を抱きながらも、樹里と瑛音は彼がなぜそんなことを言うのか警戒しながら
樹里「あの、、なんでソレを?」
樹里は素直に尋ねた。
澪「すみません、急に声をかけてしまって。僕は澪(みお)です。えーと、、、「ロミオ」ってハンネで絵も描いていたりします。って言ったら分かるかな?」
瑛音はまだ訝しんでいたが
樹里はやっぱり。と思い納得した。
樹里「ロミオさん!ここで働いてたんですね!カフェ店員って言ってたけどまさかこんな所で初めてお逢い出来るなんて、嬉しいです」
澪 「僕もだよ。樹里さんと多分……エノンさんですよね?」
瑛音「わー!瑛音と言います!SNSの名前を言われるとなんか恥ずかしい!!」
瑛音は慌てて自己紹介をする。
澪「いやいや、僕の方が百倍恥ずかしいですよ。ロミオですよ?」


 澪の言葉はスムーズであり、彼の表情には不思議と親しみが溢れていた。
 樹里と瑛音は彼の出現に戸惑いながらも、彼の落ち着きに安心感を覚え
澪「ところでやっぱりそれは、前2人が言ってた夢の中で見た記憶の断片を話してたのをまとめたノートかな?」
樹里「はい、、ロミオ、、澪さんはあの風景はどこで観たんですか?」
澪「僕も夢の中で観ていたんです。それを2人が夢で観たと言ってたので、かなり調べました。」
樹里「じゃ、澪さんも記憶を、、」
澪「そうですね。結論から言うと、あの風景は北イタリアのヴェローナの実際に存在していた城の内部や教会、御屋敷でした。」
  澪は更に言葉を続ける
澪「もともとあの「ロミオとジュリエット」という物語は1476年に南イタリア、サレルノの詩人、マスッチョ・サレルニターノがシエナを舞台に書いた悲恋の物語がそのベースになっているという説が有力だ。そこからヒントを得たイタリアの作家ルイージ・ダ・ポルトが「ロミオとジュリエット」を1530年に発表。さらに、マッテオ・バンデッロなどのイタリアの作家たちが脚色して出版したものをイギリスの詩人アーサー・ブルックが英語とフランス語に翻訳し、それをシェイクスピアが劇用に仕上げたという。しかし、僕達は同じ夢を共有している。このことからもしかしたら過去に本当に起こった出来事なのでは無いか。というのが僕の仮説」
 微笑みながら話す澪によって新たな記憶の断片が繋がっていく。

第4章:前世の運命への直面

樹里(じゅり)と瑛音(えた)は澪(みお)との出会いを喜び、彼らは前世の愛の物語について熱心に話し合った。
 時間が許す限り、澪の働いている喫茶店で
3人は過ごした。
 時には樹里の高校帰りに立ち寄り、澪と2人で話す時もあれば、瑛音の調理専門学校への悩みを澪に相談する事もあった。
 季節が1つ変わる頃、沢山の情報で溢れた。記憶を辿って行って情報が増えれば増える程
3人は前世の悲劇の運命に直面することを迫られました。
澪「ちょっと外の空気を吸おうか」
澪がそう言ってテラスの前の公園に2人を呼ぶ。
そこの公園のベンチに座って、向かいにいるお弁当を広げて幸せそうに笑顔で語っているとある男女を見つめながら
澪は深いため息をつき、樹里と瑛音を見つめ
澪「君たちの前世の物語は美しいものだったが、同時に悲劇でもあるんだよね。」

樹里と瑛音は視線を向け、澪の言葉に耳を傾けました。

澪「君たちがロミオとジュリエットだったとしても、その愛は悲劇的な結末を迎え、死を選んでしまった。」

彼の言葉は静かながらも力強く、樹里と瑛音はその深い意味を理解しました。
彼らは前世の運命を直視し、再認識しました。


樹里「でも、起こった過去は、、変わらない。
私たちは前世の記憶を辿ることは出来たけど
悲劇の運命は変えることは出来ない。」
樹里がポツリと呟く。

澪は微笑みながら、彼女に答えました。
澪「過去の運命は変えることは出来ないよね。でも、未来はこれから作っていくものだね。」

樹里と瑛音はその言葉を噛み締めた。

告知

今回企画としてロミジュリを小説にして
声劇にすることになりましたので
事前に読んで貰いたいとnoteにまとめました。
当日はラストシーンのみ声劇にしますが
そこまでに至る部分も事前に読んで頂ければ
より楽しめるのかな。と思って素人が書いております。
文章的におかしな部分も多いと思いますが
微笑みながらまろやかに読んで頂けると
嬉しいです。

オープンチャット「恋みくじ~Loveletter~おみくじ堂 恋みくじ公認」にて公開中

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?