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符牒、略号、ローカル用語、特殊用語

・特定の会社の中や限られたメンバーの集まりで使われている言葉(単語)
・比較的使っている人が多いけど、良く分からない、知らない用語や概念
に出くわすことが多々あります。

しかし使い方や使用場面を間違うと、恥をかくだけではなく、馬鹿にされるので要注意です。

よってプロジェクトなどでは、こうした言葉(単語)をきちんと理解して「業務標準辞書」「標準用語辞書」を作ることが必須になります。

●● 符牒 ●●

寿司屋で醤油のことを「むらさき」、お茶のことを「あがり」という類です。またTVドラマ古畑任三郎において古物市場のせり場面で有名になった、「せんまい(125)」「じっかんめ(165)」「ほんさん(225)」のようなものもこの範疇です。

これらは仲間内だけで使うのが原則なので、訳も分からず見様見真似で使うのはご法度です。極論すれば聞いて分からなくても何の問題もありません。

よくおじさん、おばさん世代が訳も分からず、
 「ktkr(キタコレ)」「kwsk(くわしく)」=ネットスラング
と書いてみたり、
 「こういうの、エモい、って言うんだろ」
とか言って若者から陰で笑われるようなものです。

また、寿司屋の「あがり」だって、酒飲みながらお造りつまんで最後に握り食べて赤だし飲んだ後、「あがり」(お茶)な訳で素人が板場の符帳を使うのは馬鹿げてます。

「お茶下さい」「醤油下さい」「おお(ktkrは感嘆詞に近い」「くわしく」
等々で用が足ります。

●● 略号 ●●

例えば、
 ASAP(As Soon As Possible)
 ETA/ETD(Estimate Time of Arrival / Estimate Time of Departure) 
 TBD/TBA (To Be Desided / To Be Assigned)
 CMB (Call Me Back)
とかがこの範疇です。

英単語の略号だけではなく日本語でも、
 コピペ(コピーアンドペースト)
 ワンオペ(ワン(マン)オペレーション)
 プチプラ(プチプライス)
等々、多々あります。

略語は初出時に正式用語を併記する(フルスペルアウトする)、というのが基本原則ですが、
 ・仲間内や関係者で符牒化した略語 (e.g. ETA、ETD、CMB、プチプラ)
 ・人口に膾炙している(と思われる)略語(e.g. ASAP、ワンオペ)
など色々なバリエーションがあるので、どんな場合でも初出時にフルスペルアウトするのが最善か?というとそうも言いきれません。状況を鑑みた判断をしないと、話し手書き手は馬鹿にされます。
(または、そんなこと知ってるよ、と怒りを買う)

●● ローカル用語 ●●

例えば、「給与控除」に対する「給与引き去り」とかです。「給与天引き」とかの言い方もあります。「給与引き去り」は行政系組織や、古い企業などで時々見かけます。
概念的には全く同じで、
 「給与支給総額(額面額)-社会保険料総額」×所得税率・住民税率
で求めた税金類総額+社会保険料総額にあたります。

ただし、この例で気をつけないといけないのは
 「給与明細・給与袋上の控除総額」≠「所得税法上の給与所得控除額」
の企業も多々あることです(むしろその方が多いと思います)。

例えば社員の福利厚生の一環で、六甲のおいしい水、とかの通販を会社が多少負担している場合、社員の購入費を「給与天引き」して「給与明細の控除額欄に記載する」なんてことはよくあります。これが非課税ではないことは明白です。要するに、「手取り給与以外の総額記載」をしているわけです。

このように法律用語や世間の慣用語と、お客さま固有の言葉の使用方法に差が出ることは多々あり、注意が必要です。この手の内容は、耳にしたとき相手にハッキリと定義を確認する必要があります。

●● 特殊用語 ●●

例として、工事管理工事監理、監理はどう違うのか、というようなものです。工事監理は法律用語(建築士法§2-(7))で、
 「工事を設計図書と照合・確認すること」
とされており、建築士の独占業務です。

これに対して、工事現場で「監理:XX組」とかの表示もよく目にします。
これは、施主と建築士事務所の間で締結される監理業務委託契約により、その内容が定められます。よって極めて広範囲になることがあり、安易に「ああ監理ね」とか受け取ると痛い目にあうことがあります。

●● 本質の定義を理解していない英単語 ●●

また、最近は概念をきちんと理解しないままに、英語単語をそのまま持ってきて使う、といったケースも多々見受けられます。1例としてパラダイムシフトの誤った用法を前に書きました。
元コンサルタントのつぶやき(1)正しい考え方、伝え方の心得<その1>

某知事はこれが好きなようで、
 レームダック (死に体、で十分ではないのか?)
 ワイズ・スペンディング (ケインズの言葉で、税金の有効活用)
 サステイナブル (持続可能な、と訳されるが一般には難解な概念)
 ダイバーシティ (多様性と訳されるが、本当に本質を理解してるのか)
など立て続けにしゃべっていることが多いです。

もちろん、ビジネス会話などで、B2B、B2Cの意味すら知らない(分からない)人には「そこから説明が必要ですか?」とうんざりします。

しかし、ダイバーシティ(diversity)を、
 「3シティ(city)方針=セーフシティ、スマートシティ、ダイバーシティ」
とか言われると、落とし噺なのか意味が分かってないのか混乱します。

よって、定義を述べずに(あるいは意味は分かってるでしょう的な上から目線で)、無闇矢鱈と使うのは避けるべきと言えます。

●● プロジェクトものにおける標準用語辞書の重要性 ●●

業務を標準化しようとするプロジェクトなどでは、関係者が使う用語や概念を正しく理解することが必須になります。従って、プロジェクト的に活動する場合は「業務標準辞書」「標準用語辞書」を作ることが不可欠です。
(単語:意味:備考(注意事項や同意語、反意語などを記載する)など)

プロジェクトに携わりこの種の物を作ったことがある方は、この辞書は相当な件数になることが経験則的に理解できるはずです。
(少なくとも数百用語は載せる必要がある)

また、これを作るとお客様社内や関係者間で、いかに定義が曖昧なままに業務をしていたかが浮き彫りになります。

特に、ローカル用語や特殊用語は、個々のお客さまが持つ意味をきちんと理解しないと、
 「そんなこと言ってない!」
とトラブルに発展することがあります。

お客様、関係者とのお付き合いのはじめは、その語彙が符牒、略号、ローカル用語、特殊用語のどれか見極めがつかないことが多いので、やむを得ず全部辞書化しておいて、関係者全員で内容共有し、徐々に必要な用語辞書に絞り込む、という非常に地味な作業が欠かせません。

関係者間の情報共有、お客さま中心主義という観点から強く心掛けるべきことだと思います。
 


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