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ドル円相場の未来と円預金の危険性

私は為替は一切やらないし、詳しくもない。円建てドル建て両方で資産持ってるけど為替相場はほぼ気してない。でも円が私が子供の頃の値段になってしまったことはショックだ。今後どうなるのか?今日は私なりの為替の理解とドル円相場の今後について考えてみる。

1ドル300円の時代

私は今年の6月で55歳になる。いよいよアラカン突入だ。だから覚えている。私が物心ついた小学生の頃、1ドルは約300円だった。中学時代は約250円。

高校に入った1985年、日本はバブル成長期。円高だ円高だと騒いで1ドルは約120円から150円の間になった。高校2年で初めて家族旅行でアメリカに行った時も(それぞれの街に1泊しかしないで弾丸であちこち旗を持ったガイドさんとグループで回る超忙しいパッケージツアー)全てを頭で150円で換算していた覚えがある。

そのほんの10年前に1ドル300円だったのだから、アメリカの不動産や資産は円建てで半額になったわけだ。だから日本人はアメリカの土地や資産を買いまくった。あれがバブルのクレシェンドだった。

1991年にバブルは崩壊。でも円高はそのまま進んだ。1990年から1995年の5年間で1ドルは100円を切った。

私は1992年、大学を卒業と同時に日本を出てスペインに行ってしまったけれど、卒業から数年でスペインでもらっていたお給料が円換算にして初めの予定よりすごく目減りしたのもよく覚えている。

あれから34年。その間、2回ほどドルは100円を切ったけど、日本の失われた30年のほとんどの間、1ドルは100円から150円の間で推移してきた。

それがここへきて、1ドルがガッツリと150円を超えてしまった。今40歳以下人達はこんな相場は見たことがないだろう。

34年間高値を更新しなかった日経225が似たタイミングで高値を更新したのも面白い。円が安くなったから海外からみると日本株が安く見える、というのもきっとあるのだろう。

実際、ドル建てでは日経225はギリギリまだ高値を更新していない。

為替相場を長期で動かす根本的な要因は?

30年以上もの間、国内経済が停滞し、金利はずっとゼロだったのになぜ円高はずっと続いたのか?よくはわからないけど、でもやはり、根本的には日本が作るものを海外の人が欲しかったからだろうと思う。特に車。

ここで基本に戻って為替とかは何かを考えてみよう。政府の介入とか、金利差とか地政学的リスクとか、短期で為替に影響する要因は五万とあるけど、結局、長期ではどれだけ日本の外の人が日本円を必要とするかによって円の価値は決まる(はず)。

私の配信をいつも聞いてくれている人は知ってると思うけど、私は例え話が好きだ。だからここでも例えを使ってみよう。

ちなみにこの例えは私が自分で理解しやすいように考えたものなので、ピンとこなかったら悪しからず。

まず、国を会社と考えるのだ。そうするとわかりやすい。日本株式会社(日株)、米株式会社(米株)、中国株式会社(中株)、などなど。これらの会社はその会社が作る物の大多数はその会社の社員のためのものである。

ほとんどの社員はその会社の敷地内に住み、その会社が作るものを食べ、使う。その買い物に必要な通貨はその会社の株だ。ほとんどの人はその会社のどこかの部署で働き、お給料はその会社の株でもらう。そのもらった株で毎日の必要なものを買って生活している。

普通の会社でも得意不得意があるように、日株にも作れるものと作れない物がある。例えば、日株は石油が作れない。石油の代替になる原子力発電はできるけど、今、その部署はお休み中で働いていない。

だから、日株を活動させるために、石油は他の会社(国)から買うしかない。米株とはたくさん取引があり、そこでは石油を売ってる。そこで米株から石油を買いたいが、米株はその支払いは米株の株式であるドルで受け付ける。そこで、日株は日株の株式である円をドルに変える必要がある。

ここで問題は誰が円をドルに変えてくれるかだ。米株で働いている人は皆お給料をドルでもらっているから、彼らが売ってくれるかもしれない。でも彼らがドルを売るということは彼らのドルを円と交換する、ということ。

この手元に残った円はもちろんまた誰かとドルに交換してもらうことも可能だけど、最終的には円は日株が作った商品と交換するためにあるのだ。

これはデパートの商品券なんかをイメージすると分かりやすい。そのデパートで欲しいものがなければその商品券はあまり価値がない。他のお店では使えないのだから。

日株が作る物が欲しくなかったら円はいらない。そうなるとドルを円に交換してくれる人が減る。これが円安の根本的な原理。

Made In Japanの栄光と低迷

日株の株式である円が戦後、ものすごい勢いで対ドルで値上がりした(円高になった)のは、日本が作るものが(円が安かったこともあり)安くて高品質だったので世界中の人が買いたがったから、が一番大きい理由だと思う。

私が初めてアメリカに1年学部留学した1991年、家電コーナーに行くと日本のメーカーの物がたくさんあり、みんなアメリカのメーカーのものより値段が高かった。日本の車も大人気だった。

1996年、Whartonに行った時も他の学生達と散々吟味して選んでグループ割引で一緒に買ったラップトップは東芝のものだった。

でも今は違う。アメリカの家電のお店には韓国の製品ばかり並んでいる。日本製のラップトップなんてほとんど見ない。

これは1950年からの日本の輸出入のデータ。1980年頃に輸出が輸入を大きく上回るようになり、1991年のバブル崩壊後もそのトレンドはそのまま2007年頃まで続いた。

それがはっきりと変わったのが2010年ごろ。2010年以降はほぼ毎年、日本の輸入は輸出を上回っている(図の青い線がマイナス)。

このタイミングがドル円相場のトレンド変換のタイミングと重なる。

日本はかつてアメリカとの貿易摩擦が外交問題にまで発展するほど半導体、家電、車などの製造業が強かった。

それが日本の人手不足や雇用法による高い人件費のせいで日本の製造会社は海外での製造にシフトした。そうなると、日本企業の利益ではあるけど、もう日本からの輸出ではない。よって輸出額は落ちる。日本円の需要も落ちる。

さらに、韓国や中国の技術の台頭で日本の製造業の世界的競争力が相対的に落ちてしまったというのもあるだろう。先ほども言ったように、アメリカの店頭で見る家電で日本製のものはもうほとんどない。車も韓国製のものを随分見るようになった。アメリカでは中国の車は全く見ないけど、ヨーロッパでは中国産のEVがたくさん走っているらしい。

輸入額の方が輸出額より多い、ということは円に対する需要がドルに対する需要より低いことになる。

さらに日本では今ほとんどの人がほぼ毎日アメリカの子会社のサービスを使っていると思う。Apple, Amazon, Google, Microsoft, Metaなどのメガキャップのサービスはもう完全に日本の日常に溶け込んでる。

日本人がこれらのサービスに払うお金はほとんど日本には残らず、最終的にはどこかで外貨に交換されてしまう。つまり、日本円が売られる。一昔前にはこんなことはなかった。

長期的に円高に転じる見込みはあるのか?

しかも円の金利は低い。そしておそらくずっと低いままだ。なぜなら金利を上げると日本の財政赤字はもっとひどくなるし、国債をたくさん持っている銀行達が含み損で財政不安定になる可能性があるから。

となると、今後安定的に円高になるためには日株が作る製品またはサービスを日本の外の人が欲しがる必要がある。その未来が全く見えてこない。

その未来を視野に入れるためには日本の優秀な若い人たちを外資や海外に取られてしまう現状を打開しなければならない。でも雇用法があるから、大会社は人が切れないから高いお給料は払えないし、スタートアップも育ちにくい。

雇用法がなくなることはあまりにも痛みを伴う改革なので、おそらくそれよりも酷い痛みを全国民が実際に経験して、「それよりはまし」という状況にならない限り、あり得ないだろう。

つまり、金利は上げられないし、輸出できる製品やサービスは急にはできない。焼石に水的な為替介入以外、円高に作用する要因が見当たらない。

中国がやってるみたいに、半導体の製造に国のすべての意識と努力を全集中したら中長期ではなんとかなるかもしれない。でも全集中しているようには見えないし、少なくとも中国の本気度には程遠い。

つまり、円安は少子化と同じくらいトレンド変換が難しい難題のように思える。

円預金だけに頼る資産形成の危険性

となると、円預金だけに頼る資産形成は本当に危険だ。

円預金は元本保証だから絶対安心、というのがどんなに怖い迷信か分かるだろうか?

ドル単位で見ると円の価値が減っているのは分かりやすいと思う。

でも例えば物価で見ても円の価値は下がっている。同じものを去年と同じ値段で買えないのだから。

株も。株価が上がるということは、株価を単位にしたら円の価値が下がっている、ということ。

円預金は、円という単位で見ているから減っていないだけであって、円以外のなんの単位で見ても、円預金とは毎年価値が減ることがほぼ確実な資産なのだ。

せめて外貨預金に分散することは大事だと思うし、できれば日本株や米株にも投資したほうが長期では実は安全だと私は思う。

もちろん、ちゃんとリスクを理解した上で納得してやることが前提だけど。ちゃんと理解しないで「へー投資のほうが安全なの?じゃやろっかな」みたいな感じで始めるとどこかで必ず来る暴落で売ることになるので損をする。

でもちゃんと勉強すれば株投資は長期では預金より安全になり得る。

株に投資して損するのが怖い、と言いながら毎年必ず損することがほぼ確定している円預金に集中投資するのはいかがなものか、と心から思うんだけど、全資産円預金の実の弟を説得できない姉が通ります。

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