「身体」

 7月からBankART1929 が運営しているR16スタジオを借りて、制作することになった。Online上でベルリンのレジデンスプログラムに引き続き参加することになったのである。
 R16スタジオというのは、もともと空き地だったスペースをBankARTが横浜市から借りた、30平米程の区間が10個ほど連なっているスタジオである。天井の高い空間に併せて特徴的な空間構成に、外からの風が絶えず出入りし、とても気持ちが良い。半分外であるため、天気の影響をもろに受けるものの、普段の室内ではしづらい作業が可能である。
 空間に呼応するように、興味の赴くままに素材と道具を持ち込み、素材との掛け合いの中でそれぞれの作業のタイミングや内容を決めていく。動きながら作り、そしてそれをしばらく放置しておき、また元の作業に戻ったりして制作していく。じっとしていると不安に飲み込まれてしまうが、できるだけ考えずに手を動かすことは自己肯定につながるようで、作っている時だけ嫌なことを忘れることができる。閃きと動作の繰り返しで、少しずつしか実現化できない、恐ろしいほど非効率な作業に私は救われている。
 オンライン上ではベルリンとのやりとりが続く。先日は、私と同じくコロナで渡独できていない、アーティストのプレゼンテーションを ZOOMミーティングで聞く機会があった。パソコン上で見る彼の作品からは、室内に持ち込む泥感みたいなものを想像した。無味無臭のインターネット上での作品鑑賞に違和感と歯痒さを感じつつ、やり取りを終えた。
 コロナの影響でITC化を意識する一方、美術作品と身体の存在感を再識し、また今日も一歩制作を進める。

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