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夕方のこわさ

私の住む町は夕方になると人間より植物の力のほうが強くなる。
夜の散歩は本当に本当に恐い。

人間が住みやすいよう手が入った里山地帯だが、植物はいつだってスキあらば蔓を延ばし根を張り巡らせ葉っぱをもりもり繁らせ、無言で逆襲を仕掛けている。

夕方の植物は昼間には出さない独特の存在感を出してくる。
生臭いいやらしい匂いもしてくる。
命の野蛮な鼓動が聴こえてくるようで、私はいつも少しおののきながら、そばを歩く。

あなたがた自然のこの地球上での存続の長さといったら人間なんて遠く及びませんよね。一瞬の瞬きみたいなものでしょう。
今はおおいなるあなたがたの恩恵に私たちは預かっていますが、いつかはサッサと人間まるごときっと、おいとまします。
それまでつかのま、遊ばせてください。
すみません、お邪魔してます。

自然はフラットだ。
自然は愛そのものなだけで、私たちのことなど一ミリも愛していないだろう。
いつか自然に私も殺されるかもしれない。
こわいな。
でも、その時はやっちゃってください。
遠慮なんか、しないですもんね。存じてます。

そんなことを思ってうっとりとしながら、今日も散歩を終える。


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