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映画を早送りで見る?!

今回は読書感想文です。

結論から言うとメッチャ面白かった

どこで見かけて買ったか忘れたのですが、面白そうだったので買って読んでみたら非常に面白かったです。語彙力が全く無いみたいになってますが、経緯を正直に話すとこうなります。笑

以前もどこかのエントリで書いたのですが「世代が違うと全く価値観が違う」というテーマの延長上にある内容です。(リンク貼ろうと思ったのですが、自分がどこで書いたのか忘れてしまいましたw)

著者は以前DVD雑誌の仕事をしていて、物凄く沢山の作品を見なくてはならない為早送りで見ていたが、後日改めて通常再生で見て見たら作品を誤解していたことが分かり、いたく反省したという経験があるそうです。一方昨今の10代や20代の若者は1.5倍速で見ることがふつうであるという話があり、またNETFLIXには~倍再生という機能が実装されていることも有り、一体どういうことなのだと大学生や業界の方々にヒアリング調査をして書いたものが本書です。

追い立てられる若者たち

そもそも若者世代が早送りで映像を見るのは、これも以前このnoteで触れましたが、「時間資源が貴重」だからだそうです。「最初と最後だけわかればいい」「台詞が少ないシーンは飛ばしても問題ない」「必要ならもう一度見ればよい」そういった発言がヒアリング調査でも相次いで出てきます。そして、そういう見方をするので「セリフ回しや描き方が説明的で分かりやすいものが好まれる」のだそうです。確かに最近セリフが多いドラマも多いですね。

私達はデフレにさしあたって「コスパ(コストパフォーマンス)」と言い続けてきましたが、彼ら彼女らは「タイパ(タイムパフォーマンス)」を重視するのだそうです。では、そこまでして何故見るのか、「だったら見なくてもよいのでは?」という意見も聞こえてきそうです。
しかし彼らは仲間とLINEでずっと繋がり続けており、誰かが「これがいい」といったものは、賛否はともかく知っておかないと会話に参加できないという強迫感があるのだそうです。確かに私達が若いころあるいは10代だったころにはLINEなんて全員で共有されるコミュニケーションツールなんて存在していませんでしたから、実際今の人達は大変だろうなと思います。

個性が欲しい

そして彼ら彼女らの少なくない人たちが「個性」を欲するのだそうです。「ナンバーワンよりオンリーワン、競争より個性を」といわれてきた世代であるし、また就職活動となれば「個性的で目立つことが良い」とされていることからも、そのプレッシャーも相当である気はします。面接でどんな経験をしてきたのか掘り下げるのは本人よりも面接官の仕事である気が私はするんですけどね…。

それはさておき、面白いことに、私たちの世代では「オタク」という言葉に肯定的な意味はあまりありませんでしたが、彼ら彼女らには「何かに詳しく、話の幅を広げられる人」という点で前向きな評価が与えられているそうです。私達には「オタクとは何かに対して膨大な時間やお金を費やしている人(それ故に詳しい)」「それでいてハマるのはコミュニケーション能力が乏しいから」みたいなレッテルを貼っていた時代です。
しかも彼ら彼女らは「オタクの対象は何でもいいわけでは無く、コミュニケーションの幅を広げられるものが良い、しかもそれをタイパよく手に入れたい」のだそうです。うーん、所変われば品変わるとはよく言ったものですが、世代も変わると本当に違いますね。私もオタクとして肩身の狭い思いをしてきたものですが…。笑
その一方で彼ら彼女らのつらいところは、SNSやネットを調べると、同じジャンルでもっと詳しい人がいくらでも見つかってしまい、そうそう簡単にオタクにはなれないのだそうです。
それ故か、自分が好きなジャンルのものごとでさえ、「自分は大して詳しくないのかもしれない、間違っているかもしれない」という恐怖感はあるのだそうで、とにかく「失敗したくない」という思いにもつながり、やっぱりみんなが勧めるものにまず乗っかるのだそうです。矛盾してて本当にむずかしい…。

とにかく快適に

そんなプレッシャーに晒され続けている為か、彼らは興奮やカタストロフィをあまり好まない人も多いのだそうです。ドラゴンボールにあったような「修行して強くなる」という苦しい過程や、ストーリーが二転三転する急展開は「疲れる」のだと。その典型が最近流行の「転生もの」だそうで、「主人公が何らかの最強の才能を持って物語がスタートし、淡々とその能力を見せつけていく話の展開」というのが良いのだそうです。登場人物に寄り添ってしまい苦しくなったり、展開にハラハラするのは好きではないそうです。せめてものプライベートなので穏やかに暮らしたいそうな。

この様な調査内容を踏まえ、著者は「彼ら彼女らの環境に理解できるところもあるし、説教をしたところで始まらないので、エンタメの作り手側が変わって行かねばならない」という趣旨で総括してこの本は終わります。ここでは本当にザックリとしかまとめていませんので、興味を持たれた方はご一読をおススメします。また、そういった世代のお子さんをお持ちの方も「ああ、そういうことなのね」と思うところも出てくるかもしれません。本書に示されている姿が、今の10代20代30代の全てでは無いし、この描き方が正しい姿を示しているのかもわかりませんが、実際にそう考えている人達が存在することは確かで、本書をきっかけに色々と考えていくことが大切なのだと思います。

何事にも通じるのではないか

本書はあくまでエンターテイメントに限ってまとめてありますが、製造業やサービス業にも通じるのではないかと思います。何故なら、これから彼ら彼女らの世代が消費の中心に入ってくるからです。
「失敗はしたくないのでみんなの勧めるものに乗りたい。」
「でも個性は欲しい。試してみたことで話題の中心になりたい。」
「でもステルスマーケティングの様な仕込みは嫌い。」
「一つ終わったら次に行きたい(話題はどんどん変わる)」
この辺りを踏まえた時、事業としてやっていくのは今まで以上に難度が高そうですが、それでも対応していかねば今のままではやっていけなくなるかもしれません。その点でも本書はとても面白い視点を与えてくれた気がします。
大切なことは、以前も書きましたが、「理解できないので今の若者はダメだ」ではなくて「違いを認識して、彼ら彼女らなりの幸せに役に立つサービスやモノを生み出していくこと」なのだろうと思います。

猛暑で外に出ると大変ですから、エアコンの効いた部屋で読書してみるのもいかがでしょうか。新書なのですぐ読み終わりますし。
以上、今回は読んだ本のおススメでした。

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