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知らないものは探さない

新聞の発行部数が減っている

ここ最近「新聞の発行部数が下がり続けている」という話がネットで流行しています。

まずデータを見て見ましょう。

一般社団法人日本新聞協会ホームページより抜粋

すごいですね。20年間で4割くらい消失しています。新聞各社、特に地方紙は本当に大変だろうと思いますし、漏れ伝え聞くところによると、配達を担当するサービスアンカーは折込チラシも減るし部数も減るしで非常に厳しく、撤退が相次いだために特定のアンカーが複数新聞社を担当することもあるなんてこともあるとかないとか。

何故発行部数は減っているのか

これについては色々な理由があるかと思います。
・ヤフーやSNS、テレビでニュースは見ることが出来るから。
・ゆっくり読んでる時間が無い。
・お金がかかるから。

良く耳にするのはこの辺りでしょうか?人それぞれだと思いますが、ヤフーやTwitterでは公式なニュースが各新聞社から出されていますし、満員電車じゃ新聞は広げられないし、まして夕刊なんて読んでいられない、そして新聞も結構お金かかる(大体月当たり4~5000円)のは事実です。

ちなみに私は新聞を捨てるのが面倒で、webやアプリで購読しています。

新聞事業は購読料や広告が主な収入源ですから、発行部数が減ると収益の減少はスパイラルに陥ります。

家に新聞が無い子供達

そうすると起こり得ることは「家庭に新聞が存在しない子供」「新聞を読んでいる親を見ていない子供」が出てきます。その是非を議論するつもりはありません。単に現象として出てきます。

私の記憶では、朝は父親が新聞を読んでいました。そのせいで私も1面だけは読むようになりました。父親が新聞を会社に持って行ってしまうので、母親はもう一紙とっていました。リビングには大体新聞が転がっているのが私の子供の頃の原風景です。

ところがそれが無くなるとなれば、今の子供たちが大人になった時、「新聞くらいは無いと」という意識は生まれません。自然と購入するものの対象からは外れます。

「知らないものは探さない」

私は「攻殻機動隊」というマンガとそれを原作にしたSFサスペンスアニメが大好きなんですが、その中で政府の機密ファイルが持ち出された事件で出てくるセリフが「知らないものは探さない」です。その寓意は「その存在や価値を知っている者しか、探し、手に入れようとは思わない」ということです。

新聞もそうなるのかもしれませんねと言うのが今回の前振りの趣旨です。育った家に無ければ、例え親がスマホアプリで読んでいたとしても、子供たちは親近感を持ちません。これはある種、新聞という文化の危機かも知れません。

私達食品業界でもそういう危機に陥っているものがあります。例えば「干瓢(かんぴょう)」がそうかもしれません。

干瓢といえば、寿司の太巻きなんかには欠かせないものですし、甘く炊いた干瓢で作った干瓢巻はお好きなお子さんも居るかと思いますが、太巻きはもっぱら買って来るものになってしまい、家で作ることが無くなってしまうと、普段から購入するものでは無くなってしまい、日常の文化から消えかかっている様にも見えます。ちなみに食品新聞社によると、干瓢消費量は20年間右肩下がりだったものが、このコロナ騒ぎで寿司店が打撃を受け、追い打ちになっているようです。

「え?干瓢ってこんな形してたの?」という方もおられるかもしれませんね。マルユウガオというウリ科の植物の実を細く削いで作ります。

実は私達醤油業界も他人事では無く、醤油の消費量も以前触れた通り右肩下がりになっており、自宅で料理する機会も減ってきて、業界自体がどんどん小さくなっているのは事実ですし、「和食離れ」なんてよく言われます。醤油も文化ごと消えてしまう日が来るかもしれません。同じ減少傾向をたどりながら干瓢はダメで醤油は大丈夫な理由なんてありませんからね。

子供に何を経験させよう?

使われなくなって衰退しつつあるものは他にもたくさんあります。ガス機器が進化して必要とされなくなったマッチ、電卓が手ごろな価格になって使うことが減った算盤、エンタメの選択肢が増えたので部数が減り廃刊も増えた雑誌、軽く安い樹脂の収納にとってかわられた箪笥、もう数えだしたらキリがありません。

しかし、逆に重宝するものもあります。例えば私が幼少の頃は祖母宅はまだ風呂を焚いていましたので、新聞紙・木材の端切れ・オガライト(おかくずを固めた固形燃料)の着火効率の良い組み方なんかは見て覚えました。マッチの使い方も教わりましたね。
また彫刻刀や肥後守、のこぎりなんかでいっぱい手も切りましたが、刃物の扱いは慣れている方です。これらのことは無くなっていった文化ですが、今ではキャンプやBBQで重宝する知識ですよね。場合によっては災害時のサバイバルにも役立つかもしれません。

親は子供に何を教えるべきか頭を悩ませるものです。ともすればスマホの扱いやインターネットの怖さをどうやって教えよう、などといった目の前の問題に終始しがちですが、「無くなって行きそうなんだけど、使えるから、あるいは教養として一度経験させておいたほうが良いな」と思うものも考えておいた方が良いのかもしれません。

新聞がそれに値するかは分かりませんが、何も知らずに子供が頂き物の金の装飾の入った高級食器を電子レンジにかけて台無しにする前に教えておかなきゃいけないこともありますよね。笑

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