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タケノコをどう楽しんでもらうか

Kiss FM KOBEさんでお世話になっている「はい、こちらひょうご食材丸天開発室です」のコーナーで出している試作品をどうやって作っているのか。主に私の頭の中を公開します。

そもそものコーナーの趣旨

「はい、こちらひょうご食材丸天開発室です」のコーナーの趣旨は「兵庫県で産出される農水産物をお家で簡単に美味しく食べる方法を2つ提案し、視聴者が投票で製品化を選ぶ」というものです。5週で1クール回しており、その時期に旬を迎える食材を兵庫県農水産部の皆さんから推薦頂いています。

コーナーを始めるにあたって当社の開発部に「仕事増えるけどやってもいい?」と聞いたところ「アイデア出しが一番キッツイので、そこを社長がやって貰えるなら、製品落とし込みはやるんでイイっすよ」という回答が得られたので、今でも何を作るかは私が決めています。

タケノコの問題点

このコーナーのメニューを考える時にいつもスタート地点とするのは次の2点です。片方の時もあれば両方の時もあります。

①その食材の良いところに注目してもらえるようにする。
②その食材の避けられがちなところを消してやる。

今回のタケノコというやつは、視聴者の投稿を見ても「若竹煮」「炊き込みご飯」「天ぷら」など和風のものが多く並んでいました。特に「出汁」を使うものが多かったので、それは避けてやろうと思っていました。世間には白出汁的な調味料はたくさん売っていますし、私がつまんないからです。笑

そしてタケノコといえば春の食材です。春を感じる食べ方に仕上げたいなぁ思いました。
また、生のタケノコを灰汁抜きしながら茹でて…というのは忙しい家庭ではなかなかしんどいだろうと思いましたので、レトルトパックで売っている「タケノコの水煮」でも再現できるものにするという枠もはめることにしました。
その他、タケノコそのものにはあまり味が無いという点があります。味がつけやすい一方、扱いを間違えると何を食べているのか分からなくなるのでそこは注意点になりました。

春を感じさせたい

先述の様にタケノコには味があまり無い。それどころか若干独特の臭いもあります。しかしあの独特の食感は春そのものです。なんとか上手に春の味を乗せられないかとまず一つ目の候補として考えました。

春と言えば春キャベツなど葉物野菜もたくさん出てきます。しかしイマイチ「口から春」というインパクトはありません。そこで目をつけたのが山菜でした。山菜と言えば春の天ぷらによく使われるイメージですね。タラの芽、フキノトウ、こごみ、ウドなど色々あります。天ぷらは食材の香りを楽しむものなので山菜は選ばれているわけですから、これは使えそうです。

次にどの山菜を選ぶかですが、家庭で使いやすいものがよいので、こごみのような灰汁抜きが必要なものはパスしました。香りもそんなにありません。タラの芽は甘くておいしいですがちょっと高いんですよね。これもパスです。
5月くらいまで販売されていて手に入りやすく、今回は大人の味ということでフキノトウを選択しました。あのほろ苦い感じ好きなんですよね。これまでずっと子供も意識してきましたが、今回は変化を入れて大人に焦点を合わせることにしました。

肝心の調味料は何にするか。当社は醤油屋ですが、「醤油を使わなければいけない」なんてこだわりはこれっぽっちもありませんので融通無碍です。タケノコは味が薄いので、ここはガツンと味噌を選択することにしました。山菜味噌はどこかにありそうで、相性も悪くはないはず。

そうだ。田楽みたいにしてトースターで焼いて焼味噌にしたら美味しいのでは?

これで概ねプランは決まりました。開発部に伝えて補助的な材料の選択と、保存性を踏まえた製品への落とし込みをお願いしました。担当のI君は味噌の中から白みそを選択したようです。試食した所若干塩加減が強かったので、保存性を確認しながら少し塩分を落とす事だけお願いしました。

土壇場で修正

私はよくやるのですが、開発部との打ち合わせに無い事を前日に思いついて、収録の時に段取りを変えたりします。笑
これは上手くいけば後日開発部にフィードバックして製品ラベルに記入したりします。今回は3点変えてしまいました。
1つは「フキノトウ味噌」のレシピを発見したので、料理は全く異なるのですが、「苦みを抑えるためにごま油で炒める」という工程を拝借しました。

もう1つは食材調達の段階で「木の芽」が手に入ったので「木の芽味噌」の要素を拝借することにしました。木の芽味噌はもともとタケノコ料理に良く使われる伝統的な調味料です。

通常はタケノコを和えるものです。ここで卵の黄身を加えることを思い出しました。今回の調味料はすこし塩分が高いので味が濃いなぁと思っていたので、それをコクを加えつつ穏やかに出来るので黄身はピッタリのはずです。これで1つ目の「たけのこの山菜味噌のもと」は完成です。

最後は調理法です。タケノコは味が薄いので、味噌だけではない下支えの味が欲しかった。天ぷらではよくお出汁ですこし甘く炊いてから天ぷらにすると美味しいと言われるような、あの感じです。炊くところまで行くと二度手間なので家庭向けではありません。

そこで「昆布水」を思い出しました。いつも見ているポンテベッキオの山根さんがよく使われる手法です。

これを家庭に持ち込んでやろうという事で、「ほんだしみたいなのでもいいけど、昆布茶があったら少しだけ水に溶いてフライパンで炒め煮にしてから味噌をつけてね」とすることにしました。

意外なものを食べさせたい

2つ目に取り掛かります。先述のようにタケノコは和食系の味付けによく合います。日本で良く食べられているものですからね。風土が合うのは当然です。しかし、繰り返しになりますがそれでは面白くない。

タケノコとはちょっと違いますが、「メンマ」という食べ物があります。ラーメンではおなじみですし、欠かせない食材と言ってもいいでしょう。家庭用だと桃屋さんが瓶詰めを作られていますね。

メンマは麻竹(マチク)という竹が材料の発酵食品です。この辺をヒントに出来ないかなぁと考えていた時に、「だったらコレが合うだろう」と思い付いたのがキムチでした。もちろん発酵を待ってる時間は家庭ではありませんので浅漬けタイプを考えます。検索したら出てきました出てきました。検索ヒット数は多くなさそうですがどううやらタケノコのキムチは存在するようです。

漬け込み時の味の入りやすさと、肉との食べ合わせやすさを考えてこちらの写真にあるように2ミリくらいのスライスにすることにしました。
肝心の味づくりですが、実は当社ではカルディコーヒーファームさんで販売されている徳山物産さんの「水キムチの素」を製造しています。

今回は赤いキムチですが、漬け込んでいい塩梅になる塩分濃度などは分かっているので、開発部はそんなに苦労しないはず。あと今回は私の好みでバッチリにんにくを効かせてもらうことにしました。
試食では問題なし。開発部では割と辛味をハッキリさせてくれましたが、肉と合わせるつもりだったので問題ないだろうという事でこちらは修正なしで完成としました。

こちらの現場での修正

タケノコキムチの場合は単独で食べたり、ご飯と一緒に食べるより、肉と合わせる方がタケノコの食感も生きて美味しいだろうという事は考えていました。食材調達を考えた時に、サンチュと荏胡麻の葉が手に入りそうだったので、いつも見ている肉のプロフェッショナルさんがやっていたサムギョプサルを参考にあのスタイルで収録に臨むことにしました。

最終的な出来ばえ

ああでもないこうでもないとやってきましたが、最終の姿はこうなりました。

ご飯が変わっていますが、これはさらに春を追加するために「刻んで水にさらしたミョウガと煎り胡麻の混ぜご飯」にしたためです。これから夏にかけて美味しいのでおススメですよ。混ぜるだけですし。

想定していなかった効果としては、黄身を混ぜたことで山菜味噌の粘度がゆるゆるになってしまったことと、逆にトースターに入れたら黄身に火が入って固まって味噌そのままより食べやすくなったことです。結果オーライ。笑

こんな感じで今回のご提案となりました。気になる方はradikoのタイムフリーで「Kiss FM KOBE シャカリキ4月17日朝9時25分あたりから聞いてみてください。そして、よかったら投票してくださいね。

注)投票サイトは週ごとに更新されます。投票受付は来週いっぱいまでやっています。

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