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迷わず推せよ 推せばわかるさ

みなさんは「推し」は居ますか?

今回は読書感想文

この年始に積読(つんどく:買って読まずに積み上げて置く書籍のこと)から一冊手に取った本がことのほか面白かったので、今回は読書感想文の回です。

コロナが変化を5年短縮した

皆さんご存じの通り、コロナによってライブやイベントなどに大きな制限がかかるようになり、飲食店は受難の時期を迎え、我々食品業界のようなその辺縁系も巻き込みながらサービス消費の世界が激変しています。

以前のエントリでも触れましたが、「おうち時間」が増えたため、スマホでゲームをしたり、ネットフリックスやAmazonプライムビデオのようなサブスク動画サービスを購入が拡大しました。その他にも今まで東京ドームで行われていたような音楽ライブもインターネットでチケットを購入することによって配信で見るようになったり、さらにはゲームそのもののプレイがエンタメになってしまい、「誰かがやってるゲームを見る」なんてことまで成立して来ています。

そういった変化にうまく乗って大ヒットしたのが「鬼滅の刃」であり「シン・エヴァンゲリオン」だったそうなのですが、その辺りがどうやって工夫されていったのかを解説するとともに、「「萌え」が終わり「推し」に移って行った」をキーワードにエンタメの変化を紐解いていくのが本書です。

古くて新しい「推し」という概念

「推し」という概念は昔からある概念であり、特定の何かを応援の形です。宝塚歌劇団やアイドル、ジャニーズなどがその鉄板パターンですが、何故それが今改めて規模を拡大して出て来たのかと言えば、「話題にしたり応援したり追加購入したりすることをSNSでシェアし、同じ話題で盛り上がりたい(つながりたい?)」ということだそうです。これが「推し活」です。特定の何かに時間や資金をただただ流し込むことではありません。成程、身に覚えがあります。笑

実はかつての「推し」との違いは「引退が無い」という点です。宝塚のトップスターもアイドルも最後は引退します。引退されてしまう(ゲームなら「終わってしまう」)とそれまで応援していたファンは「今までつぎ込んできた時間とお金は何だったんだろう」と虚無的な感情に襲われます。それを避けたい、失敗した感を味わいたくないというニーズを加えたのが今の「推し」だそうです。

以前はテレビが作った「半沢直樹」も香川照之さんと堺雅人さんの豊かな表情筋の活躍により(これは私の解釈w)、放送中はSNSを席巻していました。残念ながらこちらは原作があることもあってその後の拡大をみませんでしたが、要はああいう熱量をなんとかして維持するということです。

具体的には、現在のゲームや話題のアニメは絶え間なく追加コンテンツを出していって収益を上げます。それは単に限定品の物販のような形だけでは無く、鬼滅の刃の様にTV再放送をからめてみたり、ポケモンGOの様に常に新しいポケモンを加えたりゲーム性を加えたりしながら間接的に本家のゲームブランドを高める形であったり、といった新しい形をとりながら、買い切りコンテンツだけではない莫大な収益と裾野の拡大をもたらしました。

日本独特の「極み」

しかしながら、筆者によるとこういう時間もお金も継続投入する「濃い」コンテンツは日本独特だそうです。アメリカ、あるいは中国においては日本のゲームや映画なんかよりはるかに稼いでいる、規模の大きいものは沢山あるし、ワールドワイドに認知されているものは沢山あります。知名度みたいなものでは日本は後塵を拝していますが、ここまで充実した長く楽しめるコンテンツを作れるのは日本独特のノウハウなので、こういった路線で勝負するのがいいのではないか、というのが筆者の結論です。

上記の他、産業の規模や映画産業・TV産業の歴史の日米間の違い、そういったものがデータを揃えながら分かりやすく解説されています。「鬼滅の刃だのフォートナイトだのイカゲームだの一体何なんだ昨今の流行は!?」と思われている方はきっと興味深く読むことが出来ると思います。

私は製造業の人間ですが、キャラクターものでも何でもないけれども、何とかこういう「ストーリーから入れ込んでいく」という形を食品にも取り入れられないかなぁとずっと考えています。特にあのジェラートとかいいと思うんですけどね。色々考えて名案が降りてくるのを待ちたいと思います。


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