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二枚貝の食中毒対策の話

Kiss FM KOBEさんで放送して頂いているコーナーで、今月は「牡蠣(カキ)」を扱っています。兵庫県は名産地の一つということで選ばれました。さて牡蠣に限りませんが「二枚貝」の食材と切っても切れないのが「食中毒」という問題です。今回はそれに触れます。

ちなみに「中毒」とは読み下すと「毒に中る(あたる)」となります。それで中毒って書き方になるんですね。「当たる」と「中る」に意味的な差はあまりないようですが、「的に中る(命中)」や「毒に中る」は「中る」がふさわしい様です。

食中毒の種類

さて食中毒と一言に言っても、実はいくつか分類があります。
A.毒物を摂取して中毒症状を起こす(誤って毒キノコやフグの有毒臓器を食べた等)
B.細菌やウイルス、寄生虫を摂取して中毒症状を起こす(傷んだものを食べた、アニサキスを食べた等)
まずこの二つに大別されます。食中毒で救急に連絡があるようなものは8割くらいはBだそうなので、ここではBについてお話します。

Bも多いのは二つに分かれます。細菌性とウイルス性です。寄生虫は件数はそれほどではないようです。細菌性は「病原性大腸菌」や「ウェルシュ菌」などですね。ウイルス性は「ノロウイルス」「ロタウイルス」などがよく耳にする名前です。
生物学上は「細菌」と「ウイルス」については代謝可否とか大きさとかアルコールが効く効かないとか抗生剤が効く効かないとか色々違いがありますし、細菌の中でも「増殖して悪さをする」のと「毒を作り出して悪さをする」のといるのですが、「お腹を壊す」という点では変わらないということでここでは細かく言及しません。大切なのは対策です。笑

二枚貝の食中毒

牡蠣をはじめとする二枚貝はウイルスによるものが多い様です。二枚貝は海中で沢山の海水を飲み込んで吐き出すという作業を繰り返す中でプランクトンを濃しとって栄養にして育ちます。しかしその過程で体内の臓器でノロウイルスなどをため込んでしまうという性質があります。ノロウイルスは加熱すれば感染性は失われますので、つまり生食が二枚貝の食中毒に直結することになります。

では「生食用」と販売されている牡蠣は?って気になりますよね。これは基準があります。常にサンプル検査がされており、牡蠣の中の細菌数が一定数以下でなければなりませんし、「細菌数が一定以下の海域で採れたもの、もしくは管理がされている人工海水で一定期間置いて浄化されたもの(吐き出させる)」とされています。
(注 細菌は一個体内に入ったら即中毒になるかというと、実は種類によって必要な数が異なります。

二枚貝の食中毒対策

加熱用と銘打って販売されている二枚貝(牡蠣・アサリ・ハマグリなど)の食中毒対策は「加熱」が最も確実です。冷凍はダメです。アニサキスは冷凍によって死滅しますが、細菌やウイルスは冷凍では機能停止せず、解凍したら元に戻ります。

牡蠣で問題になるのはノロウイルスです。ノロウイルスも加熱は有効です。ノロウイルスが人体への感染機能を失うのは「85℃以上で90秒以上加熱」という条件が実験的に分かっています。しかし、気を付けて頂きたいのは、「ノロウイルスに対して85℃以上90秒以上加熱」なのであって「牡蠣に対して」ではありません。牡蠣の内臓がその温度に達するには加熱してからしばらく時間がかかります。
「鍋料理なら3分以上」というガイドラインもあるようですが、これも牡蠣の温度(例えば冷蔵庫から出したてなら5℃とかです)によります。冷えているなら時間を延長したほうがいいかもしれません。ご自宅で冷凍保存していたものなどならなおさらです。
私たち人間だって、真夏に冷房で体が冷えていると、炎天下に出てもしばらく汗かかなかったりしますよね。あれと同じです。

牡蠣を加熱するときは、透明がかった身が白くなって、さらに過熱で縮んで中までアツアツになってから、これがポイントです。

それから、牡蠣のひだは牡蠣殻の破片がついていたりして汚れている場合があります。ここも加熱非加熱問わず、調理する前によくゆすぐことをおススメします。

折角旬を迎えた牡蠣、お腹痛くならずに美味しく食べたいですよね。加熱温度に気を付けて楽しんでいただきたいと思います。

現在病院はどこも大忙しです。ノロウイルス中毒で手を煩わせないように気を付けることも、私たちが出来る医療関係の皆さんへの感謝の一つの形ではないかと思います。


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