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【 砂の城 】創作大賞

作詞が好きでいくつか創作しています。中でも【 砂の城 】の世界が好きです。
音楽には疎いので作詞をするだけですが、このような詞を書きました。

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            【 砂の城 】

もう恋は終わったはずの
乾いた心に通り雨
アフロディーテの気まぐれに
苛立つ不条理の螺旋
先に生まれたそれだけで 
あなたの未来を奪ってく

素知らぬ顔して運命と 
言えるほど大人じゃないの

2人の物語は 脆く崩れる砂の城 
掴まれた心ごと壊れてしまう
悲しくて 哀しくて
かなしいエピローグ

禁断の果実を食べた 
罪人(つみびと)は許されない
神の怒りにふれたから 
罰が下されるでしょう      

それでもいいと心が叫ぶ
倫理なんか捨て去るわ

結び違えた赤い糸 ほどかないでほどきたくないの 何もかも
ぜんぶ絡めとってよ
愚かな心もこの躰ごと

あなたと私は儚く消える砂の城 
それでも大人びた背中に
枯れた花が甦ってく

結び違えた赤い糸
それも運命と言うのなら
世界も神も敵にして
このまま堕ちてくわ

2人の物語は 脆く崩れる砂の城
いつか罰を受けるのが
私ならそれでいいの
愛される罪人でいいの
ただ一人のあなたに

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【 砂の城 】のコンセプトは、年上の女性が年下の青年に思いを寄せられる事がベースです。

彼女は、45歳のシングル。
お酒も飲まない、タバコも吸わない、お洒落やメイク、ブランド品にも疎く、二十歳の時にチェック柄と土星のようなモチーフが気に入って買ったヴィヴィアンウエストウッドの財布を20年以上使い続けるような女性です。

人並みに恋もし、結婚を考えた人もいたけれど、なぜか、2人になることが幸せではなく窮屈と思ってしまう。
だからといって、愛だの情が無いわけではなく、逆に溢れるほどの優しさと愛のあるひと。
しかも、仕事は順調、貯金もたっぷりあり、腹を割って話せる親友もいるし、何でも自分で考え決断出来るし1人でご飯も食べれるから、甘えるだけのパートナーは必要なく、可愛い甥っ子がいるから溢れる母性の行き先もある。

世間ではそんな40代を負け犬だの、終わってるだのいうけれど、彼女は道行く誰よりも楽しく、自分らしく幸せに生きている。
時折訪れる寂しさや孤独との付き合い方も心得てる。
ただ、恋をすることを卒業しただけのこと。
ただ1人でいるのが心地いい。
それだけのこと。

そんな彼女の前にずいぶんと年の離れた青年が現れる。
彼は29歳。
容姿端麗、頭脳明晰、なんとも言えない魅力的なオーラを放っているけど、子犬のような人懐っさと、ふっと見せる美しい横顔がとても印象的な人。
そんな彼がまるで一目惚れをしたかのように愛を語りだす。
純粋な彼の一言、一言に、乾いた心が一滴、一滴と瑞々しさを取り戻していき、真摯でまっすぐな想いに、忘れていた少女のようなときめきを呼び起こされ、彼を愛するのに時間は必要なかった


私の方が先に生まれた・・・。
ただそれだけなのに、きっと彼の未来を奪ってしまうだろう。
悩みに悩み抜いて、立ち止まろうとする反面、心が彼を求めてしまう。
ならば、誰も認めてくれない愛だとしても、たとえ悲しいエピローグが待っていようと、これもきっと赤い糸なんだと禁断の果実を口にする。
罰を受けるのが自分ならそれで構わないと。

そんな満身創痍の彼女に追い討ちをかけるように、世間が彼女を断罪する。まるで大罪を犯したかのように。

ある人は、騙されてる、何か裏がある。
ある人は、若い男に溺れた恥知らずだと。

それでもこの愛を貫くことを決める。たとえ2人の未来が風に吹かれ脆く崩れる砂の城のようだとしても。
繋いだ手の温もり
抱きしめられた腕の強さ
唇から伝わる熱い思い
抱かれるたびに知る本当の幸せ
その全てを信じてゆく

ただ人を愛しただけ
それの何が悪いんだと
そして彼女は世界一幸せで、愛される罪人になる
世間や神を敵にしても

これが彼女のストーリー。



そして彼にもストーリーがある

東京のオフィス街にある小さな洋食屋。誰もが懐かしさを感じる古き善き雰囲気を残すこの店は、週に数回、わずか3時間しか営業しない。

そんな店にいつも一人の女性が来店する。
彼女はお気に入りの窓側の端の席に座り、必ずオムライスを注文する。
オムライスが運ばれるとパチパチと写真など撮らずにスッと両手を合わせ
「いただきます」   と言う。
そして美味しそうにオムライスを頬張っていく。
その姿を厨房から見ている一人の男性がいる。

それが彼だ。

頭脳明晰な彼は学生時代に会社を立ち上げ、どんどん大きくしていき今は時代の波に乗るベンチャー企業の社長である。
そんな彼がなぜ小さな洋食屋の厨房にいるのか。

彼は幼くして両親を失くし親戚の家で育てられた。
そう聞くと不幸な生い立ちのように思えるが、叔母の家で1つ年上のいとこと兄弟のように育ち、叔母夫妻を親のように慕い、その後産まれた妹と本当の家族のように、温かい家庭で幸せに育ってきた。

今や社長となった彼が洋食屋にいる理由。
それは天国の母親との唯一の思い出を守るためである。
彼の記憶に鮮明にある母親との思い出は、食卓でオムライスを前に向かいあい、手を合わせ
「いただきます」と言って頬張る幸せな瞬間だった。
そんな幸せのオムライスを作り、母親を感じる時間のために彼は厨房にいる。

わずかな営業時間の中、たくさんのお客様が訪れる中で唯一彼女だけが
「いただきます」
と、手を合わせる。
幸せそうに頬張るその姿に、どこか母親の面影が重なる。
そんな彼女に興味を持ち、いつしか視線が彼女を追い、もっと知りたくなっていく。向かいのオフィスビルに勤める彼女の退勤時間に合わせて待ち伏せし、絶妙な距離感で最寄りの駅まで歩いたこともある。


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あくまでも、個人的な意見だが、まるでストーカーのように思えることも、誤解を恐れずに言えば、すべて紙一重。
愛と執着は表裏一体。相手が恐怖を感じたらアウトで、トキメキを感じたらセーフな気がする。

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彼はその後も、近くのcafeで背中越しに座ったり、電車で向かいに座ったり、彼女を見続けていた。
そして彼はついに行動に移す。

自分の会社と彼女の会社とのコラボレーションを企画し、社長として彼女の前に現れる。
彼女にとっては初めましての社長だが、彼にとっては心を掴まれた愛しい女性。
初対面からアプローチしてくる若くて有能な彼に、多少の訝しさを感じ戸惑う彼女と、今まで誰からも感じられなかった溢れるほどの温もりと安らぎを彼女から感じている彼。
真っ直ぐな彼は、倫理や秩序というブレーキをかける彼女の檻をぶち壊す。

そして彼女が少しずつ彼のストーリーを知っていくたびに、お互いの愛が深まっていく。
彼にとってはかけがえのない愛。
でも、彼女にとってはきっと罰を受けるだろう愛。
たとえ形や思いが違えどこれも純愛である。
決して繋いだ手を離さないことが、気まぐれなアフロディーテへの復讐になるだろう。


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ある日の彼女の日記には、こう書いてあった。

「 あなたにとって彼はいったい何なのか?」
いつか神にそう問われたら、迷わず私はこう答えるでしょう。

【 共に生きたい人ではなく
      一緒に死んでもいい。
              そう思える人】

                           ・・・だと。

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2人の物語が儚い砂の城になるのかは、まだ決めかねてます。
ただ、切ない現実も
悲しいリアルも
幸せに死ぬために、全身全霊で愛に生きる彼女の前では
きっと無力だろう。。

#創作大賞2022

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