推しのこと

「夢ならばどれほどよかったでしょう……」とは誰もが知っている名曲のようなのですが、わたしはモーニング娘。やハロプロやそのほかアイマス、うたプリなどのアニソンや2.5次元舞台関連の音楽しかほぼほぼきかないものですから、この歌をよく知らないのに、このフレーズだけは覚えていて、先週(もう先週になっちゃった)の月曜日の18時過ぎ、ちょうど30分くらい残業をして、仕事を終えてスマホを開いたその時から、何度も何度も頭をよぎるのです。あとは「一瞬たりともキュンしたわたしが馬鹿だな」「男なんてなんて信じない だってだって嘘ばかり」とか、そういうフレーズが、仕事をしている時と眠っているとき以外、常に頭をぐるぐると流れています。いまだに信じられないし、受け入れられない。でも、楽しみにしていた6つ子ちゃんねるのイベントが中止になり、来月の有休申請をいつだそうか迷っていた染さまとの朗読劇が降板になり、リアフェドラマの新作が降板になり、A3で担当していたキャラクターの声が無音になり、10月から始まったレギュラー番組ニンスマンが降板になり、様々な媒体で放送予定だった、彼の出演作品の放送中止がどんどん発表になって、順番がどうだったかはもうわからないけど、毎日そういったニュースが情報として入ってくる。だから、夢ではなくて、これは現実なのだ。

推し関連の舞台やイベントに行く日、テレビにでる日、配信番組、インスタライブ、そういった予定が発表されるたび、スケジュールに書き込むのが好きだった。目立つように赤いハートマークで印をつけていた。仕事は大嫌いで辛いけど、推しを推すためにはお金が必要だ。仕事のシフトをみると気分が落ち込むが、赤いハート印をみるとそのために頑張ろうと思うことができた。いまのスケジュール帳をみると、ハート印の上にすべて×がついている。虚しい。なんのためにわたしは生きているのだろう……。
彼のことを考えるたび、気が重くなるので、今まで集めたグッズや出演作の円盤など、なるべく目に入れたくはないのですが、部屋中に彼の写真やらポスターやらカレンダーやらアクスタなどがちらばっているし、スマホの中には、アイドル時代にリリイベに通って撮った2ショット写真やら、Twitterに載せていた画像だとかが溢れていて、どれも削除できず、捨てることも片付けることもできず、そのままになっています。出演作の円盤も今はとてもみれる気分ではないのですが、でも、どれもわたしにとっては大切な作品で、大切な思い出で、大好きだった。劇場でみる、舞台の上の「小澤廉」が何より1番好きだった。だから信じられないし、信じたくない。夢なんじゃないかと今でも思っているけれど、スケジュールのハートの上から書かれた×をみるたび、これは現実なんだと、思わされています。

彼のことを初めて知った時、なんてかっこよくて、笑顔が素敵なひとなんだろうとおもった。知ったきっかけは、2.5次元舞台あるあるで「好きな作品が舞台化されて、推しキャラに配役された」からである。(※いろいろありましてわかりやすく書くとこういう表現になるのですが、厳密にいうと推しキャラクター役になったわけではありません。舞台化発表されたときめちゃくちゃ炎上したあれです。察してください)その後はじめてその例の舞台で彼をみた。2.5次元舞台ではキャラクターの再現度なんかが演技の上手下手よりも重要視される傾向にある、とわたしは勝手に思っていて、その舞台では厳密にいうと推しキャラ役を演じたわけではないけれど、彼の舞台に立ったときのオーラ、キラキラした笑顔、立ち振る舞い、カテコ挨拶でのちょっとおバカなところ、すべてすべて推しキャラに似ていると思ったし、それがおそらく俳優本人のキャラクターなんだということがなんとなくわかって(※後にインタビューやイベントでその作品に関して「キャラクターを演じるわけではないから、原作を読み込むとかキャラクターに寄せようとかは意識しなかった。他の2.5作品との違いはそういうところ」的なことをいっていた、ような気がする)とても好感が持てた。なによりあの顔である。好みのど真ん中だった。少しずつ、彼の過去に出演した作品をみたり、雑誌を買ったりして、彼のことを覚えていった。そんなとき、写真集の発売イベントがあって、わたしは友人の付き添いとしていったんだけれども、当日券でもチェキがとれると聞いて、せっかく新宿まで行ったし…と思いながら、3冊写真集を買ってチェキを撮った。なにをいったらいいかわからなくて、「6月に見た舞台すばらしかったです、ほんとにかっこいいですね」なんていってしまったと思う。彼は言われ慣れているであろうその言葉に、笑って「ありがとうございます」といってくれた。初めての接触イベントでも好印象だったから、ますますのめりこんでいった。
そのころ彼はアイドルグループに所属しており、そのグループがメジャーデビューすることになったので初めて男性アイドルのCDリリイベに足を運んだ。場所は、池袋サンシャインシティの噴水広場。メンズアイドルの現場のなんたるかをよく知らないまま、とりあえずCDを3000円分購入して、2ショット撮影券をゲット。その後場所取りのためにひとりで噴水広場にたっていると、周囲のファンがざわざわと騒ぎ出した。何かと思ったら、メンバーが出てきて、チラシかなにかを配っているようだった。そのなかには、白いアイドル衣装を着た彼もいた。彼と仲の良いらしいファンが子供を連れていて、しゃがんで子供に笑顔で話しかけている様子を遠目にじっとみていた。子供が好きなんだなぁと微笑ましい気持ちになった。そのうち、彼はその場所を離れて他のイベントを待っているファンに話しかけていく。ひとりでじっとたっていたわたしのところにもきて、「B2takes!の小澤廉っていいます。よろしくお願いします。これからライブあるんでよかったらみていってください」そういって、お辞儀をしながら、丁寧にわたしに名刺をくれた。写真付きの名刺だ。あなたをみにきました、ということができず、「ありがとうございます」とお辞儀をして、両手でその名刺を受け取った。とても嬉しかった。白いアイドル衣装の彼は、本物の王子様にみえた。もう配信停止になっているようだが、GYAOのかまいたちさんの番組で「2.5次元界の天然キラキラバカ王子、小澤廉です!」などというキャッチフレーズを自ら言っていじられていたが、まさにその通りで、王子様のようにわたしには見えていたし、今でもまだ先週の月曜以前の彼のことはそう思っている。そのときもらった名刺はお守りのように、大切に大切にジップロックに入れて保管している。ジップロックで大切に保管といえるのかどうかはつっこまないでください。わたし基準ではめちゃくちゃ大事にしています。
そのあとは、リリイベに通って、彼がアメリカを横断する番組を毎週見て、イベントに通って、舞台に通って……そんなふうに、どんどんハマっていった。小澤廉が「推し」になっていった。

彼のことを少しずつ知るうちに、お酒が飲めないこともあって俳優やスタッフ間の飲み会に参加せずすぐに家に帰ること、プライベートで仲良くしている俳優仲間はあまりいないこと、などを聞いた。わたしはいわゆるリアコではなかったので、どんなに本人やマネージャーが「お付き合いしている女性はいません」といっても、彼女はいるだろうと思っていた。べつに彼のプライベートには興味がなかったし、舞台界隈でつながったまったく別の俳優を推している友人と、「打ち上げにも出ないで早く帰るってことは、きっと結婚していて、家にかわいい奥さんと小さい子供がいるから、早く家族に会いたいんでしょ」なんて勝手に想像して笑いながら話していたこともある。
本当にそうだったらよかったのに。
それなら、移ったばかりの大手事務所に切り捨てられることも、数々の作品を降板して、たくさんの関係者に迷惑をかけることもなく、炎上してファンが多少減るだけで済んだのに。おそらく。

文春の出した記事は、思い出すだけでも恐ろしく、えげつない内容だった。あれがすべて真実なのだとしたら、ただの、おそらく認知すらされてないファンは、どうしたらいいのだろう。考えてもどうもすることはできないのはわかり切っているのだが。彼を擁護することもできない。彼がまた表舞台に出てくるとも思いたくない。1週間たったいまでも、彼をみたくもないし思い出したくないと思っている。彼と共演の多かった俳優さんやスタッフさんたち、彼が出演していた作品とそのファンのことを考えると、申し訳ない気持ちでいっぱいになってしまう。わたしがそう思ってもどうしようもないのに。彼を通じて、たくさんの若手俳優を知った。共演作品でのイベントで、彼との絡みはもちろんのこと、彼関係なくトークが面白くて、好きになった俳優もたくさんいる。その人たちのことも、おそらくもうみることはできないし、彼のせいでその人達に多大な迷惑がかかったこともわかっているので、好きだとTwitterなどでいうのも憚られてしまう。今日放送のネプリーグ、好きな俳優がそろっているからみたいけれど、観ていいのかどうかわからない。だってわたしの「推し」は「小澤廉」だから。文春オンラインの動画で、「おそらくネプリーグだと思うんですけどその収録直後の小澤を直撃しました」といわれてしまったから、きっと、今日のネプリーグに小澤廉が出演するはずだったんだろう。他の俳優のファンたちの間でもそういう認識になっている。「小澤がでているから推しのネプリーグが放送中止になったら恨む」「どうか小澤だけカットして放送して欲しい。編集大変だろうけど…」そんな意見をたくさんみた。本当に申し訳ない。小澤が出る予定だったかどうかは今となっては闇の中だがきっとそうなんだとおもう。ごめんなさい。放送できてよかった、ともぶっちゃけ素直におもえない。だって、もし推しがでてたなら、みたかったし……あれさえなければ、と思っちゃう。わたしがこんなこといっちゃいけないのわかってます、性格が悪くてごめんなさい。
正直、もう2.5次元界隈の情報もききたくないし、彼が関わった作品の原作の情報すらもしりたくない。

幸にして、わたしにはモーニング娘。という、またべつジャンルの「推し」がいる。二次元では、アイドルマスター シンデレラガールズも大好きだ。だから、まだ、趣味というようなものはあるにはある。
そのたくさんある好きなもののなかでも、小澤廉がいままでわたしの1番だった。小澤廉を推すことは、わたしの生きがいになっていた。次の生きがい、つまり「推し」を作ることはもうきっと、ないだろう。

この辺りで、いい歳だしオタクをやめて婚活でもはじめようか、なんて思ったこともこの1週間のうちにあったし、人生に迷いが生じて占いをしてもらったら「あなたは結婚したほうがいいわ」なんていわれたけれど、そもそもわたしは対人恐怖症(今は社会不安障害っていうらしい。小澤とはまったく関係がないが今年の初めから心療内科にも通院している)で、特に男性に対して恐怖感が強いことを思い出してやめた。占いのおばさんにもいったんですけどね。小澤のイベントに行く時だけはそういったことを都合よく忘れており、わたしも大概神経図太いなあとはいま思った。文春の記事は、そういった意味でも非常にショックで、さらに男性不信が強まった。会社で男性社員と話すのも嫌だし、電話受けた取引先の相手が男性だとびびるし、仕事帰りの夜道、自分の後ろを男の人が歩いてるだけでもう怖い。もうよくわからないから文春を訴えるか!?いやいやいやいやお門違いもいいとこ、なんて脳内会話をひとりでずっと続けている。
何度か行った接触イベントで、小澤に対してすら怖いと思う時があったことも、いま思い出した。多分基本的には、接触は塩対応ではなく、神対応の部類だとは思う。ただ、あきらかにイライラしてるなあというと感じる日もあった。でもそれは人間だし、お仕事だし、たくさんのファンと長時間いろんな話をして、元々アイドルだったからか知らないがチェキのポーズも特にハグとか密着するものは禁止ということ以外は割と自由(だったとおもう)なので、壁ドンでチェキとってください×4の直後とか、そりゃイライラするよなあとも思った。ちなみにそのときわたしは怖かったので1番楽そうなピースでおねがいした。
そもそも対人恐怖症で口下手だから、接触イベントの時にはいつも緊張してほとんど話せないキモオタだが、たった一度だけ、彼とたくさん話が出来て、彼を笑わせることができて、わたしの話を(その日の昼にみた彼の舞台の感想)を目を見てしっかり聞いてくれて、喜んでもらえたことがある。そのときがもしかしたら1番幸せだったかもしれない。その思い出だけを何度も何度も思い出しては元気をもらっていたから、それは嘘だと思いたくないないし、嫌な記憶にもしたくない。
今でもそう思ってしまうのだから、なんというか、オタクってばかだなあ。オタクっていうかわたしなんですけど。主語を大きくしてすみません。女って単純……


「俳優・小澤廉」が大好きだった。卒業してしまったけれど「アイドル・小澤廉」も大好きだった。卒業ライブもいったよ。これまでハロオタとして何度もアイドルの卒コンには足を運んでいるけれど、あんなにしゃくりあげるほど泣いてしまったのははじめてだった。道重さゆみのときですら、静かに泣いたのに。約3年という短い期間ではあったが、彼を推していた期間は、とても楽しくて、仕事をしていたときの、小澤廉のことはたぶん、どうしても嫌いになれない。今まで、プライベートはただのファンのわたしには関係のないことだから、きっちり仕事している時だけが、わたしにとって完璧な「推し」であればいいと思っていた。でも、あの記事がでてしまったからには、もうそうも言ってられない。ファンの前で笑顔をみせている裏で、彼女に暴力を振るったり、中絶させたり、自殺未遂にまで追い込むようなことをしていたのが本当なら、いくら仕事を完璧にできても、それがチラついてしまうのでまともに彼をみることができないだろう。今まで知らなくてよかったのか、もっと早くにこの事実が世に出るべきだったのか、何ともおもえない。被害女性のことを考えたら、もちろん、早く公になって小澤から解放された方がよかったということはわかる……ああ、でもそうだね、もっと早くにこの事実がわかっていたら、小澤廉を知ることもなかっただろうし、ここまでたくさんの人に迷惑をかけて傷つけることもなかったんだもんね。それだけ被害女性の方が辛い思いをして犠牲になっている中、わたしは勝手に推しを最高だと褒め称えて、お芝居を見て感動して、元気をもらって「生きててよかった」なんて思ってしまったんだ……。最悪だ。私は最低だ。
それなのに、グッズも出演作の円盤も片付けることができない。いつか時間が経って、自分の中で消化することができたら、大好きだった作品をまたみたいと思う日が来ると思ってる。一人の女性が苦しんでいるのに。本当にわたしって最低だ。どうしようもない男だったよ小澤は…それなのにまだみたいだなんて最低。わかんない。でも作品は好きだったから、みたいんだよな……本当に最悪だ。

今、彼がなにをしているのか、なにを考えているのかわからないし、今後彼がどういう道をたどっていくのも、想像もできないです。あの記事の内容がすべて事実ならば、ただただ被害女性には誠意を持って償って欲しいし、彼女の身が守られることを心の底から願っています。そして、多大なる迷惑をかけたであろう仕事の関係者への謝罪も、しっかり行なって欲しいです。

もし、彼が今後も俳優だったりなにか表舞台にでてくることがあっても、あの記事が捏造だったという証拠か何かがない限り、これからの彼の活動を応援することはできません。

こうして気持ちを文章にして公開することに、意味は多分ない。ただのかまってちゃん行動です。あと、わたしはぼっちオタクだったので、他の小澤ファンの動向がまったくわからないから、こういうオタクもいるんだよってことを知って欲しかったという気持ちもちょっとあります。現場にちょこちょこいるけどいつもぼっちで暗い感じのオタクがわたしでした。そして、ネット上は同様に小澤廉ファンのお気持ち表明の文章がいくつかアップされていて、少しだけですが読んで、それに感化されたというのもあります。他にも読んでないものがあるので、これから探して読んでみたいと思います。
たしかに、整理のつかないこの気持ちを文章にしてみると、ちょっとだけ楽になった気がする。こんなとりとめのない、長いしょうもないかまってちゃん文章を読んでくれた方がもしいるなら、ありがとうございます。

そして、同じく2.5次元舞台界隈のファンの皆様、この度は本当に申し訳ありませんでした。わたしが謝ることじゃないのはわかってます、でもごめんなさい。とくに、わたしが最も好きな「舞台 劇団シャイニング」シリーズのファンの方(結局名前出しちゃったよ)、本当に本当にごめんなさい。あったかどうかわからないレビュー楽しみにしてたのに、多分もうやらないとおもう。ごめんなさい。やったとしても小澤廉はいないし、レビューのためだけに新しいイッキをキャスティングすることは無いと思うんだ。それかイッキ抜きでやるのかもしれない。わたしは劇シャイがだいすきだけど、小澤廉が演じるイッキのいない、レビューはみにいけません。もし、レビューが開催されて、新しいイッキがきたら、どうか前任のことは忘れて、かわいがってあげてください……。レビューを待ってるファンが多いことももちろん知ってますが、ごめんなさい、わたしは開催が決まってもおめでとうと心の底から言うことができません。できなくなってしまいました。本当にごめんなさい。わざわざ言うなって感じだろうけどいっちゃった。本当にごめんなさい。きっともう少し時間が経ったらちゃんとおめでとうといえるようになりたいとおもいます。ごめんなさい。もう2.5次元舞台界隈と、あと、だいすきなうたプリからはおそらく離れると思うので、皆様にこれ以上不快な思いはさせることは無いと思います。ごめんなさい。ごめん。うたプリまでみるのが辛くなっちゃうなんて思わなかった。小澤が演じたのは音也じゃないのにね。音也のこと、だいすきだったよ。かわいくてかっこよくて、音也がいちばんアイドルの中で輝いているよ。音也が大事に演じたイッキの後任が、とんでもない不祥事をおこして、ほんとにごめんなさい。パイフロをみにきてくれた寺島さんにも申し訳ない気持ちでいっぱい……とかいいだすときりないからやめます。うたプリだいすきでした。音也が好きでした。でも、ごめんなさい、いまは辛いから、離れます。





最後に、俳優の小澤廉さんへ。今までたくさんの元気と勇気と感動をくれて、ありがとうございました。舞台のあの板の上のど真ん中で、照明をあびて、キラキラと輝くあなたがなにより好きでした。わたしの生きがいでした。

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