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キャッチコピーを書いていたら、TOKYO MXでバイきんぐ小峠さんのコピーを書くことになった話

はじめまして。私はPRAP JAPANという、企業の広報をサポートする会社で働く、コピーライター・プランナーの丸山優河と申します。

この度、TOKYO MXのアートバラエティ番組『小峠英二のなんて美だ!』の1月3日・1月10日放送分「キャッチコピー」がテーマの回に、若手コピーライターとして呼んでいただきました。

※以下、放送内容のキャプチャは番組より許可をいただき掲載しております

※宣伝会議賞というコピーライティングのアワードきっかけでお声がけいただきました。そちらについての記事も、興味があればぜひ読んでいただけると嬉しいです


バイきんぐ小峠さん・乃木坂46の池田瑛紗さん・アートディレクターの中谷日出さん・コピーライターの谷山雅計さん
という、ものすごいメンバーの皆さんと、キャッチコピーのことをお話ししました。


そんな中、コーナーの1つとして、バイきんぐ小峠さんのキャッチコピーをご本人に提案する、という大変貴重な体験をさせてもらいました。

全部で140案を制作しまして、番組ではその中からコピー案3点+簡単な説明をお話ししました。

このnoteでは、さらにその補足として、提案までのプロセスでどんなことを考えたかの苦悩や、コピーの詳しい解説を書いています。

番組を観てくださった方、コピーライティングって面白いかも?と感じてくださった方にとって、少しでも興味を持っていただける内容になっていたら嬉しいです。

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● 小峠さんのキャッチコピーを作る!?

ディレクターさん:
「小峠さんのキャッチコピーを作って、収録中に発表してもらいたいのですが…!」

そんなお話をいただいたのは、番組の出演に向けて打ち合わせをしているときでした。

予想外の相談にビックリしましたが、お笑いも小峠さんもめちゃくちゃ好きだったので、こんな面白いチャンスはない!と思い快諾しました。

しかし、実はこの依頼、ふだんの仕事でのコピーライティングとは性質がだいぶ異なります。

そもそもコピーライティングとは何か?をざっくり説明すると、依頼主のビジネスの課題を突き止め、その解決のための言葉をつくる仕事です。

つまり、コピーには課題解決というゴールがあります。

ところが今回は、コピーライティングについて知ってもらうために、小峠さんのコピーを作るという極めてレアなお題です。

そうなると、キャッチコピーの対象=小峠さん自体をどうしたいかの目的がそもそもありません。

そして、目的がなければその先の課題→解決案も言葉にすることができません(必要がありません)。


これではコピーが考えられないので、小峠さんをビジネスの商材として捉え直し、今回のお題を所属事務所やマネージャーさんからの依頼と想定。

・うちのバイきんぐ小峠を、もっと売り込みたい

という相談を受けたとざっくり仮定し、考え始めました。

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● 小峠さんをどう売り込む?を考える

小峠さんを売り込むとはすなわち、
「TV番組・CM・芸能イベントなどの仕事に起用される機会を増やす」
ということになります。


現在、小峠さんは年400超の番組に出演されています。

このレベルの芸人さんのおおよそラインとして、1番組50万円のギャラをもらっているとすると、キャッチコピーの力でさらに10番組の出演を増やせれば、一行の言葉が500万円の価値を生んだと考えることができます。

そんな役割を担う言葉を考えるわけですが、ここで大切なポイントがあります。

それは ”特徴の描写” ではなく、”新しい提案” をすることです。

例えば、一見ありそうなキャッチコピーとして

・おもしろスキンヘッド
・福岡が生んだ天才コント師

みたいな言葉が想像できますが、これはダメな例といわれます。

「スキンヘッドだ」「コントが面白い」「ツッコミが上手い」といった、誰もが既に知っている情報を伝える言葉では効果が見込めません。

あるTV局のプロデューサーが、次のバラエティ番組で誰を起用するか悩んでいるとします。

そこへ「小峠さんは ”おもしろスキンヘッド” ですよ!」と伝えたとして、そんなことはもう知っているので、よしじゃあ小峠さんにしよう!とはなりません。

だからこそ、小峠さんを更に売り込むためには、今認識されている以上の新しい価値を提案する必要があります。

では、その価値とは何なのか?

それを探し、言葉に収めていく、この過程こそがコピーライティングである…と私は考えています。

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● 実際に書いたコピー140案

そんな方向性を決めて、キャッチコピーを考えていきます。

ちなみにキャッチコピーづくりというと、独特なセンスを持った人間がサラリと一行書き上げてハイ完成!なイメージがあるかもしれません。

しかし、実際はそうではありません。特に若手のうちは、何十時間もかけて100案書いてみて、そのなかで1案でもマシなものが出たら御の字…という、実はとても泥くさい世界です。

今回の場合、コピーの提出は打ち合わせの3日後だったので、仕事が終わった後ずーーーっと、文字通り三日三晩小峠さんのことを考え続けました。

帰りの電車でも、トイレでも、風呂でも、布団の中でも・・・

この期間、小峠さんを世界で一番思っていたのは、恐らく僕だったのではないかと思います。

かくして、140案を書き出しました。

とりあえず出し切ったこの状態だと、単なる描写に留まっているものや、意味がよく分からないものも多いです。

それでも、量を出すなかで固定観念を脱せたり、書く方向が見えてきます。

提案に堪える案はこの過程を通じて生まれるので、良い案ではないものも全て出した上で、絞り込みとブラッシュアップを行っていきます。

最終的に、番組では以下の3つのコピーを紹介させてもらいました。

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小峠さんと絡めば、必ず笑いに変えてくれる安心感があります。

また、丸坊主のシルエットも、日本人にとっては親しみを感じやすいフォルムだなと思いました。

番組の放送もお正月時期なので、小峠さんをお坊さんや初日の出に見立てたりと、坊主頭イジリに新しいバリエーションが生まれる期待ができるタイミングです。

ということも踏まえ、収録現場を盛り上げてくれる小峠さんの価値に、より情緒的なありがたみをプラスできれば、という意図で提案したコピーです。

年末年始には、お笑い系の番組も多く放送されます。

このコピーで小峠さんを売り込んで、共演者や制作スタッフの方に「ただ面白いだけじゃなく、なんか縁起も良さそう」と思わせられれば、特に正月時期の番組出演をさらに増やしたり、より多くのカットで使ってもらえる…という効果が見込めると思いました。

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小峠さんには、ロックファッションへの強いこだわりや、外車が好きな一面をお持ちで、おしゃれとの親和性があります。

この側面にもっと気付いてもらえれば、ファッションチェック系の番組や、ライフスタイル誌の取材なんかでより起用される可能性が生まれる。

そんな提案のきっかけを、小峠さんのど真ん中であるお笑いとブリッジさせながら、「着こなす」というワードを入り口にして作ったコピーです。

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今回作った140案の中では、これが一番良いと思います。

コロナ禍で、テレビや動画配信サービスを観る機会が増えましたが、これらのメディアの画面はすべて四角です。

小峠さんのまん丸で分かりやすいシルエットは、そんな四角い画角に収まることでより映えると思いました。

そして、この ”画になる” という価値は、番組やCMを作る立場からすると極めて重要です。

テレビのスタッフが出演者を決めるとき、はたまた広告代理店がクライアントにCMを提案するとき、小峠さんを起用するなら理由が必要になります。

そんなとき、「小峠さんは、”四角い画面に映える丸” なので目に留まりやすいです」という説明ができると、説得力がありそうだと思いました。

このコピーなら、所属事務所やマネージャーさんが営業資料に書き入れたり、広告代理店がプレゼンで伝えたりと使いやすく、ちゃんと機能するのではないかと思い、イチオシとさせていただきました。

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なお、番組側のチョイスで他の案もピックアップいただきました。

昔からバイきんぐが大好きだったので、コピーで小峠さんに笑ってもらえて、しかもツッコんでもらえてめちゃくちゃ嬉しかったです!

そして小峠さんには、ピックアップ案の中から

こちらのコピーを選んでいただきました!

また、なんと乃木坂46の池田さんに、「とんがりフレーズ丸坊主」というコピーが印象に残った、とめちゃくちゃ嬉しいお言葉もいただきました・・・!

池田さんのコメントをお聞きして、確かに「東海道中膝栗毛」のリズムと一緒だ!と気付きました。

思えば、口の端に乗りやすい名作コピーには7・5調のリズムがすごく多いので、やはりとても収まりの良い音数なのだろうな・・・と感じました。


以上が、小峠さんのコピーを考えるにあたって考えた流れです。

変わったお題ではありましたが、振り返ってみると、全体の過程や考え方は実際の仕事と同じものでした。

これを読んでくださった方が、コピーライターという仕事について、へ~そうなんだと思ってもらえるポイントが一つでもあったら嬉しいです。

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※掲載内容は私個人の見解によるものです。所属する企業の立場や見解を反映するものではありません

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