『流れ星が消えるまでのジャーニー』論

はじめまして、まるのゐです。「MUSIC♪DAWN」良かったですね。アーカイブに期限があるのでまだ見てない方は急ぎましょう。ブルーレイを買うのも良い。両方ならなお良い。でも今回の主題は現在開催中のイベント、『流れ星が消えるまでのジャーニー』です。シナリオを読んでない方は読んできましょう。こちらのイベントは11月10日正午までです。

※この記事は、タイトル通りシャニマスイベントコミュ『流れ星が消えるまでのジャーニー』の考察とか感想とかそんな記事です。ネタバレが含まれていますのでそれを理解していただいたうえで、お楽しみいただければ幸いです。

今回のイベントはアルストロメリアの新シナリオですが、主題となるのは甜花と甘奈です。内容だけで言えばよくある双子ネタであり、大きな波乱や象徴的なメタファーなどがあるわけでもなく淡々と日常が描かれていきます。ある意味雰囲気重点なこのコミュにあーだこーだ言うのは野暮かもしれませんが、それでも散りばめられたエッセンス1つ1つに注目し、深堀りをしたいという思いを抑えきれませんでした。

シナリオの流れとしては、甘奈が風邪をこじらせる→甜花に風邪がうつる→無事に治って3人でふたご座流星群を見る。という流れです。いやほんとびっくりするほど波乱がない。風邪をひいている間、千雪さんとプロデューサーが世話を焼いたりしていますが、本当にそれだけ。この物語の本質は現実の出来事でなく、幼少期の回顧、そして双子の在り方の変遷です。

ふたりで、ひとり

エピローグ冒頭では大崎姉妹の幼少期、2人がそっくりであること、同じものを着て食べて、一緒であることが強調されます。そして2人が一緒であることを幼い2人が好ましく思っていることも示されます。

幼少期の双子は本当に区別がつきません。その理由として自らで選択をすることがないからだと私は考えます。親から平等に愛を受け取って、平等に同じものを与えられます。双子だから絶対に同じものを与えようとは親は必ずしも思っていないでしょうが、別々のものを用意する理由もありません。

大崎姉妹には幼少期にふたご座流星群を見に行ったというエピソードがあります。このとき2人は、流れ星にデビ太郎という同じお願いをして、結果として大崎家にはデビ太郎がやってくることになります。このとき、デビ太郎は親から与えられたものではありません、2人がお願いをして得たものです。何かを星に願うということは自発的な選択行為です。同じ願いがハモったということは、この瞬間まで2人の同一性がある程度保たれていたとみるべきでしょう。

本当にそっくりな双子の姉妹、そっくりなのは当たり前。

ふたりは、ふたり

しかしそんな2人にも変化が訪れます。学校で買うことになる裁縫セットの柄、大きな選択ですね、私はドラゴンのやつ頼んだ記憶があります。ここで甜花と甘奈は異なる柄を選択します。クリスマスのプレゼント、甜花はゲーム、甘奈はコスメ。2人の選択は異なり始めます。

見た目はそっくりでも中身は違う。当たり前のことですが、人はやはり見た目の印象に引っ張られがちです。だからこそ甜花は甜花、甘奈は甘奈と素で言い切ってしまえるプロデューサーの株がストップ高なわけですが、双子の入れ替わりを提案しようとして甜花は思いとどまります。2人がそっくりでないことを一番強く自覚しているのはやはり甜花と甘奈です。違うところはいいところ。もし甜花に甘奈の代わりが務まってしまえば、それは甘奈という個人の否定に繋がります。そっくりな双子だからどちらでもいいよ、となってはいけないわけです。

とここまで来てふととあるアイドルを思い出しました。「双海亜美」です。765ASの1人…1人?であり、その正体は双子の小学生双海亜美・真美が交互に演じる2人で1人のアイドルです。現在では双海亜美・真美はビジュアルや性格の差が大きくなり、ユニットすら分かたれて2人のアイドルになっていくわけですが、そういった点で今回のシナリオは初期の双海亜美に対して否定的な内容を含んでいます。

本当にそっくりな双子の姉妹、そっくりなんてそんなことない。

さんにんなら、アルストロメリア

さて、このイベントで千雪さんはいったいどのような存在だったのでしょうか?本イベントでは大崎姉妹の双子性が注目されているがゆえに、千雪さんの存在感は大きくありません。しかし、大崎姉妹の中での千雪さんの存在はもう何にも代えがたいところまで大きくなっています。一緒に居るのが当たり前、そしてそこはデビ太郎と共通する部分でもあります。星が流れたから、デビ太郎が家に来た。星が流れたから、千雪さんが家に来た。双子の大崎姉妹だった2人は、千雪さんと出会い、アルストロメリアになった。

このイベントで千雪さんは特別なことは何もしません。そして特別でなくともただ甜花と甘奈に寄り添っている存在で居続けるというのがこのイベントでの千雪さんの大きな役割だと考えます。そしてそれと対照的に、ラッキーアイテムのはずのおおきなデビ太郎はそばに居ません。流れ星の日からずーっと一緒に居続けたのはデビ太郎の役目だったはずなのにです。その役目はデビ太郎から千雪さんにバトンタッチされるのでしょう。

デビ太郎が見守り続けた甜花と甘奈は千雪さんという新たな当たり前に出会い、より成長します。お店で出会ったアルストロメリアのファンは、甜花と甘奈を間違えてしまいます。雑誌に載ってた甘奈ちゃん、ラジオが上手な甜花ちゃん、違うところは良いところ。双子だけれど同じじゃない。でも間違えちゃうくらいそっくりで、双子だからそっくりで、そっくりなのは嬉しくて、だからありがとう。

そっくりが当たり前だった幼少期、違うところを意識してそっくりでないと自覚して、違うところも一緒のところもありのままで受け入れた。

本当にそっくりな双子の姉妹、そっくりですか?ありがとう!

流れ星が消えるまでのジャーニー

最初はそっくりが当たり前で、違うところがどんどん増えて、違うところも同じところも全部まとめて好きになった。そんな双子の成長をずっと見守ってきたやつがいる。

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というわけでまさかのデビ太郎回でした。甜花と甘奈はアイドルという新しいステージに上がり、そこで千雪さんと出会いアルストロメリアになって3人でいることが当たり前になった。そこにデビ太郎はついていきません、忙しくなれば甜花と甘奈がデビ太郎のことを思っていない時間は増えるでしょう、一緒に居ない時間の方が多くなるでしょう。しかしデビ太郎はそれを祝福しているのです。セピアの森でチカチカ光る流れ星の記憶、幼い頃の2人の記憶、まだ忘れたわけじゃないけれど、いつか消えてしまうもの、でも消えるまでの旅路はデビ太郎が覚えている。千雪さんあとはよろしくね。そんなデビ太郎の声が聞こえてきそうです。千雪さんもとんでもない責任を気づかぬうちに背負っているのかもしれませんね。

初めて2人でふたご座流星群を見てから、次に見るまでの間で、甜花と甘奈は大きく成長しました。1回目は2人だった、2回目は3人になった。1回目は2人で1つのお願いをした、2回目の3人はどんなお願いをしたのでしょう?同じ願い?違う願い?それがどんな願いだとしても、この流れ星からアルストロメリアの新しい旅が始まるのでしょう。

双子の大崎姉妹、間にデビ太郎、ずーっと一緒が当たり前。

甜花に甘奈、そして千雪さん、アルストロメリアが当たり前。

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