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社会人のための学び直し数学【中学数学関数編その1】

1.関数

 コイルばねを用意して,おもりとともにつり下げます。おもりの重さを次々に変えて,ばねの伸びを計測したところ,その様子は下の表のようになっていました。

表 1

この表から何が読み取れるでしょう。
おもりの重さが 10 g ずつ増えていることでしょうか?
それともばねの伸びが 0.5 cm 刻みになっていることでしょうか?

おもりの重さとばねの伸びを,ばらばらに考えてもそれ以上の情報は得られません。例えば,おもりの重さが 125 g だったらばねの伸びは何 cm になるかといったような問いに答えることができません。
そこで,おもりの重さとばねの伸びの関係を導くことを考えます。
表1から,おもりの重さを 10 g 増やすとばねの伸びは 0.5 ㎝ 伸びることが読み取れますので,おもりの重さの変化に対するばねの伸びの変化の割合を考えましょう。変化の割合を考えるという手法は,2 つの変化する量(変量)の関係を見ていくときの最も基本的な考え方になります。

[参考]小学校で学んだ算数の復習になりますが,ある量 $${x}$$ が $${a}$$ だけ変化したとき,それにともなって $${b}$$ だけ変化する量 $${y}$$ について,$${x}$$ の変化に対する $${y}$$ の変化の割合は $${\cfrac{b}{a}}$$ と計算します。

おもりの重さの変化 10 に対して,ばねの伸びの変化が 0.5 なので,その変化の割合は $${\cfrac{0.5}{10}=0.05}$$ となります。そして重要なことは,おもりの重さのどんな変化に対しても,このばねの伸びの変化の割合が一定値になっていることです。
例えば,おもりの重さを 10 g から 90 g へ $${90-10=80}$$ だけ変化させます。そのとき,ばねの伸びは 0.5 cm から 4.5 cm へ $${4.5-0.5=4.0}$$ だけ変化しているので,変化の割合は $${\cfrac{4.0}{80}=0.05}$$ と確認できます。
ここで,おもりの重さを $${x}$$ [g],ばねの伸びを $${y}$$ [cm] としてみましょう。
おもりをつるさない場合のばねの伸びは当然 0 cm なので,おもりの重さを 0 g から $${x}$$ [g] に $${x-0=x}$$ 変化させたとき,ばねの伸びは 0 cm から $${y}$$ [cm] へ $${y-0=y}$$ だけ変化したと考えられます。よって,変化の割合は $${\cfrac{y}{x}=0.05}$$ とならなければなりません。
すなわち,おもりの重さ $${x}$$ とばねの伸び $${y}$$ の間に $${y=0.05x}$$ という関係が成り立ちます。

 一般に,変量 $${x}$$ と $${y}$$ の間に $${a}$$ を 0 でない定数として $${y=ax}$$ の関係があるとき,$${y}$$ は $${x}$$ に比例するといいます。そして,比例する 2 つの変量の特徴は,一方を 2 倍するともう一方も 2 倍に,一方を 3 倍にするともう一方も 3 倍に・・・という関係があることです。これは $${\cfrac{y}{x}=a}$$ という関係から $${\cfrac{y}{x}}$$ の分母子に同じ数をかけても $${a}$$ が変化しないし,逆に $${a}$$ が変化しないためには,分母子に同じ数をかけなければならないことから理解できます。そして,この $${a}$$ のことを比例定数といいます。

 したがって,表1で与えられるようなおもりの重さ $${x}$$ とコイルばねの伸び $${y}$$ について,$${y}$$ は $${x}$$ に比例して,比例定数は 0.05 であるとなります。この関係が導ければ,先ほどの,おもりの重さが 125 g のときばねの伸びがどれほどになるかという問いに答えることができます。$${y=0.05x}$$ の $${x}$$ に 125 を代入して $${y=0.05×125=6.25}$$ より 6.25 cm です。

 つぎに,ばねの伸びではなく,コイルばねの長さを考えましょう。おもりをつるさないときのばねの自然の長さを 10 cm とします。すると,おもりの重さとばねの長さの関係は,表1を修正して次のようになります。

表 2

ここで,おもりの重さを $${x}$$,ばねの長さを $${y}$$ とします。するとどうやら $${y}$$ は $${x}$$ に比例していないようです。$${x}$$ を 2 倍,3 倍・・・しても,$${y}$$ が 2 倍,3 倍・・・となっていません。
それでは,変化の割合はどうなるでしょう。
ばねの長さは,おもりをつるさないとき 10 cm で,10 g のおもりをつるしたとき 10.5 cm だから,変化の割合は $${\cfrac{10.5-10}{10-0}=\cfrac{0.5}{10}=0.05}$$ であり,10 g のおもりをつるしたとき 10.5 cm,90 g のおもりをつるしたとき 14.5 cm なので,変化の割合は $${\cfrac{14.5-10.5}{90-10}=\cfrac{4.0}{80}=0.05}$$ となります。すると変化の割合については,ばねの伸びの場合と同じになりそうです。いったいどういうことなのでしょう。
 これは $${x=0}$$ のとき $${y=10}$$ となっていることが関わっています。おもりの重さとばねの伸びの比例関係を利用しましょう。ばねの長さが $${y}$$ のとき,ばねの伸びは $${y-10}$$ と書けます。ばねの伸び $${y-10}$$ はおもりの重さ $${x}$$ に比例して,かつその比例定数が 0.05 であったので,$${\cfrac{y-1}{x}=0.05}$$ が成り立つはずです。
すなわち,$${y=0.05x+10}$$ が $${x}$$ と $${y}$$ の関係で,これは,$${y}$$ が $${x}$$ に比例する $${y=ax}$$ という式とは異なります。

 一般に,変量 $${x}$$ と $${y}$$ の間に $${a,b}$$($${a≠0}$$)を定数として $${y=ax+b}$$ の関係があるとき,$${y}$$ は $${x}$$ の1次関数であるといいます。$${y}$$ が $${x}$$ に比例する $${y=ax}$$ は1次関数 $${y=ax+b}$$ で $${b=0}$$ となる特別な形だっだのです。そして,重要なことは $${y=ax}$$ も $${y=ax+b}$$ も $${y}$$ の $${x}$$ に対する変化の割合が $${a}$$ となっていることです。つまり,1次関数は変化の割合が一定値になっている関数なのです。

 ところで関数とはなにか?
$${y=ax+b}$$ は,$${x}$$ の値を 1 つ定めるとそれにともなって $${y}$$ の値をただ 1 つ定めることができます。このとき $${y}$$ は $${x}$$ の関数であるといいます。
また,$${y=ax+b}$$ で $${ax+b}$$ が $${x}$$ の 1 次式になっているので,$${y=ax+b}$$ を1次関数というのです。

練習問題 1次関数 $${y=-2x+3}$$ の変化の割合を求めなさい。

【答】-2

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