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社会人のための学び直し数学【高校数学方程式編その5】

5.2次方程式④

 多項式について次の定理が成り立ちます。

$${x}$$ の多項式 $${f(x)}$$ が,2つの多項式 $${g(x)}$$,$${h(x)}$$ を用いて
$${f(x)=g(x)h(x)}$$ のように因数分解できるとき,$${f(x)=0}$$ が $${α}$$ を解にもてば,$${α}$$ は $${g(x)=0}$$ または $${h(x)=0}$$ の解であり,この逆も成り立つ。
すなわち「$${f(α)=0⇔g(α)=0}$$ または $${h(α)=0}$$ である」

【参考】数学で $${A⇔B}$$ と書くと,$${A}$$(仮定)ならば $${B}$$(結論)が成り立つとともに,$${B}$$(仮定)ならば $${A}$$(結論)も成り立つことを表します。このとき $${A}$$ と $${B}$$ は同値であるといいます。

 前回の解の公式からわかるように,一般に2次方程式の解は2つあります。そこで,2次方程式 $${a_2x^2+a_1x+a_0=0}$$ の解が $${x=α,β}$$ であるとすれば,上の定理から $${a_2x^2+a_1x+a_0=0}$$ は
  $${a_1(x-α)(x-β)}$$
と因数分解できることがわかります。
これは,$${a_2α^2+a_1α+a_0=0}$$ のとき $${x-α}$$ は $${α-α=0}$$,
$${a_2β^2+a_1β+a_0=0}$$ のとき $${x-β}$$ は $${β-β=0}$$
となっているからです。
まとめると
 2次方程式 $${a_2x^2+a_1x+a_0=0}$$ が $${x=α,β}$$ を解にもてば
 $${a_2x^2+a_1x+a_0=a_2(x-α)(x-β)}$$ と因数分解できる
となります。このとき右辺の $${x^2}$$ の係数が $${a_2}$$ になるように
$${(x-α)(x-β)}$$ に $${a_2}$$ がかけられていることに注意してください。

因数分解は,多項式の変数 $${x}$$ の値に関わらずつねに成り立つ恒等式なので
 $${a_2x^2+a_1x+a_0=a_2(x-α)(x-β)}$$
と因数分解できたならば,右辺を展開した
 $${a_2x^2+a_1x+a_0=a_2x^2-a_2(α+β)x+a_2αβ}$$
は恒等式であり,
$${a_1=a_2(α+β)}$$,$${a_0=a_2αβ}$$ でなければなりません。
すなわち $${α+β=-\cfrac{a_1}{a_2}}$$,$${αβ=\cfrac{a_0}{a_2}}$$ となります。
まとめると
 2次方程式 $${a_2x^2+a_1x+a_0=0}$$ の解が $${x=α,β}$$ ならば
 $${α+β=-\cfrac{a_1}{a_2}}$$,$${αβ=\cfrac{a_0}{a_2}}$$
 である
となります。これを2次方程式の解と係数の関係といいます。(これは解の公式を使って確かめることもできます。)

【参考】恒等式とは,変数 $${x}$$ になにを代入しても成り立つ式のことで
$${a_nx^n+a_{n-1}x^{n-1}+…+a_1x+a_0=0}$$ が恒等式のとき
$${a_n=a_{n-1}=…=a_1=a_0=0}$$ となることが基本です。

 それでは,2次方程式 $${x^2-x-6=0}$$ を解いてみましょう。
前回導いた2次方程式の解の公式を使えば必ず解くとことができるのですが,因数分解がすぐにわかるので,それを利用します。
すなわち,$${x^2-x-6=(x+2)(x-3)}$$ なので
$${x^2-x-6=0}$$ は $${(x+2)(x-3)=0}$$ より
$${x=-2,3}$$ が解となります。
このように,もしも2次式が因数分解できるのであれば,解を求めることは解の公式を使うより簡便です。

 次に,2次方程式 $${x^2+2x+4=0}$$ の解を $${x=α,β}$$ とするとき
$${α^2β+αβ^2}$$ の値を求めてみましょう。
$${x^2+2x+4=0}$$ を解の公式を使って解けば $${x=-1\pm\sqrt{3}i}$$ となるので,
 $${α=-1+\sqrt{3}i,β=-1-\sqrt{3}i}$$
または
 $${α=-1-\sqrt{3}i,β=-1+\sqrt{3}i}$$
として,$${α^2β+αβ^2}$$ に代入して求められます。しかしとても面倒です。
そこで,解と係数の関係の出番です。
解と係数の関係から
 $${α+β=-2,αβ=4}$$
です。
よって,
 $${α^2β+αβ^2=αβ(α+β)=4×(-2)=-8}$$
となります。
 ちなみに,$${x^2+2x+4=0}$$ の解は $${x=-1\pm\sqrt{3}i}$$ なので
$${x^2+2x+4=(x+1-\sqrt{3}i)(x+1+\sqrt{3}i)}$$ と因数分解できることがわかります。この因数分解は,普通考える有理数の範囲の因数分解と違って,複素数の範囲で因数分解したものとなっています。

練習問題(1)2次方程式 $${x^2-5x+6=0}$$ を解け。

(2)2次方程式 $${x^2+3x+9=0}$$ の解を $${x=α,β}$$ としたとき
 $${α^2β+αβ^2}$$ の値を求めよ。

【答】(1)$${x=2,3}$$(2)$${-27}$$

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