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社会人のための学び直し数学【高校数学2次関数編その4】

4.2次関数とx軸との共有点

 関数 $${y=x+1}$$ のグラフ(直線)は点 $${(1,2)}$$ を通るでしょうか?
このことを考えるには,$${y=x+1}$$ の $${x,y}$$ に $${x=1,y=2}$$ を代入して,式が成り立つかどうかを確かめます。$${2=1+1}$$ ですから,確かに成り立ち,関数 $${y=x+1}$$ のグラフは点 $${(1,2)}$$ を通るといえます。

 一般に,$${y=f(x)}$$ のグラフが点 $${(a,b)}$$ を通るなら $${b=f(a)}$$ が成り立ちます。逆に,$${b=f(a)}$$ が成り立つなら,$${y=f(x)}$$ のグラフは点 $${(a,b)}$$ を通ります。

 今回は上述の内容をもとに,2 つのグラフを与える式(そのグラフの方程式といいます。)と 2 つのグラフの共有点交点接点を合わせて共有点といいます。)との関係について考えます。特に,2 次関数のグラフ(放物線)と $${x}$$ 軸との共有点を中心に考えていきましょう。

【注】交点は交わる点,接点は接している点です。

 手始めに,異なる 2 つの直線が同一の平面上にあるとします。この 2 つの直線が交わることがないとき,2 つの直線は平行であるといいます。この定義から,平行でない 2 つの直線は必ず交点をもちます。
このことを方程式で考えると,
2 つの直線の方程式を $${y=mx+n,y=m'x+n'}$$ としたとき
$${m≠m'}$$ であるなら交点をもつといえます。

【参考】直線の方程式が $${y=mx+n}$$ と書けるとき,$${m}$$ を直線の傾き,$${n}$$ を直線の切片といい,異なる 2 つの直線が平行であることと,異なる 2 つの直線の傾きが等しいことは同値(数学的に同じ)です。

 それでは,方程式が $${y=-2x+5}$$ と書ける直線と,$${y=3x-5}$$ と書ける直線の交点を考えてみましょう。(2 つの直線の傾きは,それぞれ $${-2,3}$$ で,等しくないので,必ず交点をもちます。)

【注】今後「$${y=f(x)}$$ のグラフ」と書かずに,単に「$${y=f(x)}$$」と書いて「~のグラフ」を省略します。式がグラフについてなのか,単に方程式についてなのかは,それぞれの記述の流れから判断してください。

ここで交点は,$${y=-2x+5}$$・・・① 上の点でもあり,$${y=3x-5}$$・・・② 上の点でもあるので,①,② の式を同時に満たす $${x,y}$$ が交点の $${x}$$ 座標,$${y}$$ 座標です。したがって,これを求めるには ①,② を連立させて解けばよいことになります。
すると,①,② より $${3x-5=-2x+5}$$ から $${5x=10}$$
よって,$${x=2}$$ となり,$${x=2}$$ を ① に代入すると
  $${y=-2×2+5=-4+5=1}$$
なので,交点の座標は $${(2,1)}$$ です。
【参考】もちろん $${y}$$ 座標については,$${x=2}$$ を ② に代入しても求められます。

 それでは,2 次関数 $${y=x^2-x-2}$$ と $${x}$$ 軸との共有点の座標を求めましょう。
$${x}$$ 軸は,$${y=0}$$ のところで $${x}$$ 軸に平行に伸びた直線ですから,その方程式は $${y=0}$$ となります。($${x}$$ のどんな値に対しても $${y=0}$$ となるからです。)
よって,求める共有点の $${x}$$ 座標は $${y=x^2-x-2}$$ と $${y=0}$$ を連立させた $${x^2-x-2=0}$$ の解となります。
具体的には $${x^2-x-2=(x+1)(x-2)}$$ と因数分解できることから
$${(x+1)(x-2)=0}$$ より $${x=-1,2}$$ となり,
共有点,ここでは交点は $${(-1,0),(2,0)}$$ です。

 一般に 2 次関数 $${y=ax^2+bx+c}$$ と $${x}$$ 軸との交点の $${x}$$ 座標は 2 次方程式 $${ax^2+bx+c=0}$$ から求められます。
2 次方程式の解の種類については,以前,判別式 $${D=b^2-4ac}$$ により分類しました。
  $${D>0}$$ のとき異なる2つの実数解
  $${D=0}$$ のときただ 1 つの実数解重解という)
  $${D<0}$$ のとき異なる 2 つの虚数解
となるのでしたが,これを,2 次関数のグラフと $${x}$$ 軸との共有点の関係としてまとめると
  $${D>0}$$ のとき異なる 2 つの共有点をもつ(交点をもつ)
  $${D=0}$$ のときただ 1 つの共有点をもつ(接点をもつ)
  $${D<0}$$ のとき共有点はない
となります。
$${x}$$ 軸,$${y}$$ 軸で張られる座標平面は,2 つの実数で指定される点の集まりなので,$${D<0}$$ のときの 2 次方程式の場合は,共有点は存在しないという結論になります。
よって,グラフとの対応は次の図のようになります。

図4-1

 次に,$${y=x^2-3x+k}$$ が $${0<x<1}$$ の範囲では,ただ 1 点で $${x}$$ 軸と交わるとします。このとき $${k}$$ の条件を考えましょう。
これは 2 次方程式 $${x^2-3x+k=0}$$ が $${0<x<1}$$ の範囲では,ただ 1 つの解をもつ $${k}$$ の条件を求めることと同値です。
図 4-1 では $${D>0}$$ であるか $${D=0}$$ かのいずれかの場合に該当しそうです。
しかし,$${D=0}$$ はあり得ません。何故か。
それは,次の理由によります。
$${y=x^2-3x+k=\left(x-\cfrac{3}{2}\right)^2-\cfrac{9}{4}+k}$$ と変形できるので,放物線の頂点の座標は
  $${\left(\cfrac{3}{2},-\cfrac{9}{4}+k\right)}$$
となります。
そして,この放物線が $${x}$$ 軸と接するなら接点の座標は
  $${\left(\cfrac{3}{2},0\right)}$$
となりますが,この点は $${0<x<1}$$ の範囲にないからです。
【参考】もちろん,このとき $${k=\cfrac{9}{4}}$$ であり,$${D=0}$$ です。

ということで,$${D>0}$$ のもとで 2 次方程式の解を考え,
解の公式から $${x=\cfrac{3±\sqrt{9-4k}}{2}}$$
なので,そのうち,1 つの解が $${0<x<1}$$ となり

 $${0<\cfrac{3-\sqrt{9-4k}}{2}<1}$$ または $${0<\cfrac{3+\sqrt{9-4k}}{2}<1}$$

と考えます。しかし,

 $${0<\cfrac{3+\sqrt{9-4k}}{2}<1}$$

はあり得ないないので($${\sqrt{9-4k}<0}$$ となってしまい矛盾します。)
 
$${0<\cfrac{3-\sqrt{9-4k}}{2}<1}$$

となる $${k}$$ の条件を求めればよい,となるのです。
しかし,この不等式から $${k}$$ の条件を導くのは少し面倒です。
もっと簡単に $${k}$$ の条件を求めてみましょう。
ポイントは,$${0<x<1}$$ の範囲は,放物線の対称軸の左側にあるので,$${x}$$ が増加すると $${y}$$ が減少するというグラフの特徴を利用することです。
すなわち $${x=0}$$ のとき $${y>0}$$ であり,$${x=1}$$ のとき $${y<0}$$ であるとすれば,そのグラフは必ず $${0<x<1}$$ で,ただ 1 点で交わるのです。下の図で,その様子を確認してください。

したがって,$${x=0}$$ のとき $${y=k>0}$$,
$${x=1}$$ のとき $${y=-2+k<0}$$
なので,$${0<k<2}$$ であることが求める条件です。

練習問題 $${y=x^2-3x+k}$$ が $${x}$$ 軸と異なる 2 点で交わる $${k}$$ の条件を求めよ。

【答】$${k<\cfrac{9}{4}}$$

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