見出し画像

社会人のための学び直し数学【中学数学関数編その2】

2.2次関数

 1 辺の長さが $${x}$$ の正方形の面積を考えてみましょう。正方形の面積は (1 辺の長さ)×(1 辺の長さ) で与えられるので,$${x×x=x^2}$$ となります。この 1 辺の長さをいろいろと変化させて面積がどのように変化していくかを見ていくために,面積を $${y}$$ とおきましょう。すると $${y=x^2}$$ という式を考えることになります。

【参考】前回の 1 次関数の回では,変化させる量 $${x,y}$$ を変量と呼びましたが,今回は,おもりの重さのように具体的な量を変化させるのではなく,1 辺の長さを変化させて面積を考えるというような抽象的な数値の変化を考えるので,$${x,y}$$ を変数と呼びます。変量と変数という用語は全く同じ意味で使いますが,変量は主に統計学で,変数は主に数学で使われます。

 $${x}$$ を 0 から 0.5 刻みで変化させ,それにともなって $${y}$$ の値がどう変化するかを表にすると次のようになります。

この表から変数 $${y}$$ が変数 $${x}$$ に比例していないことは明らかです。$${x}$$ が 2 倍,3 倍,・・・になっても,$${y}$$ は 2 倍,3  倍,・・・になっていません。そしてこのことは,$${y=ax}$$ と $${y=x^2}$$ の $${x}$$ の次数の違いからも推測できます。(数学において,次数の違いは大きな違いを生みます。)
それでは,単純な規則は見いだせないでしょうか?
$${x}$$ を 1 から 2 まで 2 倍に変化させると,$${y}$$ は 1 から 4 へと 4 倍に変化しています。
$${x}$$ を 2 から 6 まで 3 倍に変化させると,$${y}$$ は 4 から 36 へと 9 倍に変化しています。

一般化できるように考えましょう。
$${α≠0}$$ として,$${x}$$ を $${α}$$ から $${nα}$$ まで $${n}$$ 倍に変化させます。$${x=α}$$ のとき $${y}$$ は $${y=α^2}$$ で,これを $${y_1}$$ としましょう。すなわち $${x=α}$$ のとき $${y}$$ は $${y_1}$$ で,具体的には $${y_1=α^2}$$ です。同様に,$${x=nα}$$ のとき $${y}$$ は $${y=(nα)^2=n^2α^2}$$ で,これを $${y_2}$$ とします。すると,$${x}$$ を $${n}$$ 倍したとき $${y}$$ が何倍になるかは $${\cfrac{y_2}{y_1}}$$ を計算することでわかります。

$$
\cfrac{y_2}{y_1}=\cfrac{n^2α^2}{α^2}=n^2
$$

すなわち,$${y_2}$$ は $${y_1}$$ の $${n^2}$$ 倍になっています。これは,一般的な式なので,どんな変数 $${x}$$ の変化に対しても変数 $${y}$$ の変化はこのようになっているのです。

 まとめると「$${y=x^2}$$ では,$${x}$$ を $${n}$$ 倍にすると $${y}$$ は $${n^2}$$ 倍になる」です。このことを,変数 $${y}$$ は変数 $${x}$$ の 2 乗に比例するといいます。

 一般に $${y=ax^2}$$( $${a≠0}$$ )において,変数 $${y}$$ は変数 $${x}$$ の 2 乗に比例しており,変数 $${y}$$ は変数 $${x}$$ の 2 次関数であるといいます。変数 $${x}$$ が $${x}$$ の 2 次式なので,2 次関数なのです。

 次の問題を考えてみましょう。
時速 30 ㎞ で走行する,ある自動車の制動距離は 8 m です。この自動車が時速 60 ㎞ で走行したとき,制動距離は何 m になるでしょうか。ただし,制動距離は時速の 2 乗に比例することがわかっています。

【解法1】
時速を $${x}$$,制動距離を $${y}$$ とすると,$${y}$$ は $${x}$$ の 2 乗に比例するので $${y=ax^2}$$ と書くことができる。また条件から $${x=30}$$ のとき $${y=8}$$ であるから
$${8=a×30^2}$$ より $${900a=8}$$
よって,$${a=\cfrac{8}{900}=\cfrac{2}{225}}$$ となり $${y}$$ と $${x}$$ の関係は $${y=\cfrac{2}{225}x^2}$$ でなければならない。
したがって,$${x=60}$$ のとき

$$
y=\cfrac{2}{225}×60^2=\cfrac{2^5×3^2×5^2}{3^2×5^2}=2^5=32
$$

注)計算しやすいように,$${2×60^2}$$ や $${225}$$ を素因数分解しています。
ゆえに,求める制動距離は 32 m である。

【解法2】
制動距離が時速の 2 乗に比例することから,時速が 30 ㎞ から 60 ㎞ に 2 倍となっている場合,制動距離は $${2^2}$$ 倍,すなわち 4 倍になる。したがって $${8×4=32}$$ より,求める制動距離は 32 m である。

解法1の $${y=ax^2}$$ という式を定める方法は,特定の時速における制動距離を計算するのに便利ですが,変化を主として考えるときは,解法2のように比例することに焦点をあてて考える方が簡単です。

 次に変化の割合について考えましょう。1 次関数では変化の割合が一定値になっていましたが,2 次関数ではどうなのでしょうか。
最初から一般化して考えます。
2 次関数 $${y=ax^2}$$ で $${x_1≠x_2}$$ として,$${x}$$ を $${x_1}$$ から $${x_2}$$ まで変化させたときの変化の割合を求めましょう。
$${x}$$ の変化量は $${x_2-x_1}$$ です。
 $${x=x_1}$$ のとき $${y=ax_1^2}$$
 $${x=x_2}$$ のとき $${y=ax_2^2}$$
なので,$${y}$$ の変化量は

$$
ax_2^2-ax_1^2=a(x_2^2-x_1^2)=a(x_2+x_1)(x_2-x_1)
$$

です。
注)ここで,因数分解の公式 $${a^2-b^2=(a+b)(a-b)}$$ を使っています。
したがって,変化の割合は

$$
\cfrac{a(x_2+x_1)(x_2-x_1)}{x_2-x_1}=a(x_2+x_1)
$$

となります。

これは明らかに $${x_2+x_1}$$ の取り方次第で,その値は異なってきます。
1 次関数のように一定値にはなりません。
実は図形的に見れば,ある特徴をもっているのですが,これはずっと後,高校数学での話題になります。楽しみにお待ちください。

練習問題 2 次関数 $${y=3x^2}$$ で $${x}$$ が 2 から 6 まで変化するとき,変化の割合をもとめなさい。
[ヒント]変化の割合は $${3(6+2)}$$ で与えられる。

【答】24

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?