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社会人のための学び直し数学【高校数学2次関数編その1】

1.関数の表現

 大きさが無視できる物体を秒速 $${9.8}$$ m/s の速さで,地上から真上に投げ上げたとします。そして,投げ上げた瞬間を $${0}$$ 秒としたときの経過時間を $${x}$$ として,時間 $${x}$$ での地上からの高さを $${y}$$ としましょう。

【参考】普通,文字には単位が含まれていると考えるので,単位を強調したいときは $${x}$$ [s],$${y}$$ [m] と,文字の後ろに [ ] を付けて表します。ここでは,$${x}$$ の単位は秒([s] と書きます),$${y}$$ の単位はメートル([m] と書きます)です。

$${y}$$ は $${x}$$ を用いて $${y=-4.9x^2+9.8x}$$ と書くことができます。
投げ上げて $${1}$$ 秒後の高さを知りたければ

$$
y=-4.9×1^2+9.8×1=4.9
$$

のように $${x}$$ に $${1}$$ を代入します。
投げ上げて $${2}$$ 秒後の高さを知りたければ

$$
y=-4.9×2^2+9.8×2=0
$$

のように $${x}$$ に $${2}$$ を代入します。

 $${x=2}$$ の場合は高さが $${0}$$ m となっていますがこれは,投げ上げた物体が再び地上に戻ってきた時間が,物体を投げ上げた $${2}$$ 秒後であると考えることができます。物を真上に投げ上げて,しばらくして地上に戻ってくる様子をイメージしてみて下さい。

 このように時間 $${x}$$ を決めれば式 $${y=-4.9x^2+9.8x}$$ から,その時間での高さ $${y}$$ が決まります。このことを高さ $${y}$$ は時間 $${x}$$ の関数であるといいます。

 一般に $${f(x)}$$ を上の式のように $${x}$$ を用いて表現した式とします。そして,$${y}$$ と $${f(x)}$$ の間に $${y=f(x)}$$ という関係があって,$${x}$$ の値を 1 つ決めると,それに対応して $${y}$$ の値がただ $${1}$$ つ定まる場合,$${y}$$ は $${x}$$ の関数であるといいます。(注:ここで $${x,y}$$ は実数)
また,$${x}$$ を独立変数,$${y}$$ を従属変数とよびます。そして,式 $${f(x)}$$ が $${x}$$ の 2 次式になっているときの関数が,2 次関数です。

 したがって,$${y=-4.9x^2+9.8x}$$ から,物体を真上に投げ上げたときの高さは,時間に関する 2 次関数として表現できることになります。
 ところで,$${y=-4.9x^2+9.8x}$$ で $${x=3}$$ とすると $${y=-14.7}$$ と計算できて,高さが $${-14.7}$$ m と負の数になってしまいます。これは物体が地上より下にあることを意味するのですが,実際は地上で留まるはずなので $${2}$$ 秒より先の時間で $${y}$$ を考えても得られるところがありません。また,$${x}$$ には負の値を代入(投げ上げる前の時間を考えることに対応)しても式自体は成立しますが,高さ $${y}$$ を考える限り同様に得られるところがありません。このような場合には,時間に制限をかけて

$$
0≦x≦2
$$

とします。すなわち,$${y=-4.9x^2+9.8x}$$ を考えるとき $${x}$$ は $${0}$$ から $${2}$$ までの間で変化させるということになります。この独立変数 $${x}$$ のとり得る値の範囲を定義域といいます。この定義域に応じた従属変数 $${y}$$ のとり得る値の範囲を値域といいます。
$${y=-4.9x^2+9.8x}$$ においては,今の場合,定義域は $${0≦x≦2}$$ となり,値域は $${0≦y≦4.9}$$ となります。$${x=0}$$ で $${y=0}$$ であり,$${x=2}$$ で $${y=0}$$ なのだから,値域は $${0}$$ ではないのかという疑問が浮かぶかもしれません。値域の考え方は,今後の主題の 1 つなので,ここでは詳しく説明しませんが,疑問は疑問として持ち続けてください。今後,解法が示されたとき「ああ,そうなのか」と納得するのも学習の楽しみの 1 つです。
今後の記事を楽しみにお待ちください。

練習問題 1 次関数 $${y=x+1}$$ の定義域が $${0≦x≦5}$$ のとき,値域を求めよ。

【答】$${1≦y≦6}$$
【解説】$${y=x+1}$$ から,$${x}$$ が増加すれば $${y}$$ もそれに応じて増加することがわかる。そして,$${x=0}$$ のとき $${y=1}$$ であり,$${x=5}$$ のとき $${y=6}$$ であることから,$${y}$$ は $${1→6}$$ と増加していくと考えられる。したがって,値域は $${0≦y≦6}$$ である。

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