根も葉もRumor ~AKB48再始動~

2021年9月29日。AKB48の新曲『根も葉もRumor』が発売された。
前作、『失恋ありがとう』の発売日である2020年3月18日から、約1年半ぶりのシングル。
AKB48単独でのシングルは2010年12月8日発売の『チャンスの順番』以来ということらしい。

そんな曲の歌詞ということで、どんなものになっているか、見ていきたいと思う。

過去と現在

この曲の歌詞の登場人物は二人。
AKB48のシングルにはありがちな「僕」と「君」。
以前、シングル曲の一人称と二人称を確認したときの記録を見ると、約半分で「僕」と「君」が登場している。
その点では、AKB48らしいということができる。

ただ、そこに描かれている人物は今までと同じかというとそうではない。

ちょっと会ってないうちに
見違えるくらい

こう最初にあるように、「君」の変化した姿が描かれている。

だってあの頃はまだ
ポニーテールにシュシュ

こう続いていることから分かるのは、以前までのAKB48のイメージからの変化を歌詞にしているということ。
二番の歌詞にも同様のフレーズが見られる。

僕が知ってる君は
前髪ぱっつんで
スカート翻しながら
いつも走ってた

一番の歌詞の「ポニーテールにシュシュ」も二番の歌詞の「スカート翻しながら」もそれぞれ、AKB48のシングル曲である『ポニーテールとシュシュ」と『スカート、ひらり』を思わせる歌詞だ。

ここで描かれているのは、過去のイメージから脱却し、現在のイメージへと変化していく流れであるように思う。

過去の積み上げの中に現在がある。
ただ、過去は過去。その頃から今のAKB48は変わった。
学生のイメージから大人のイメージへの変化という部分が強調されて描かれている。

ターゲット層の拡大

では、変化したことで、どうなのかという部分に注目していきたい。

先ほどの一番の「ポニーテールにシュシュ」という歌詞からの続き。

声なんか掛ける気になれずに
素通りしてた

ここで表現したいのは、ターゲット層の拡大のイメージではないかと思う。
今まで、AKB48に興味がなかった層にも、今のAKB48を見てほしい。
「素通りしてた」層でも、見てみたらその印象が変わるかもしれない。
そして、新たな「僕」となってAKB48を見ていってほしい。
そういうメッセージが伝わってくる。

未来へ向かう意思

ここから、サビの部分で描かれるのは、未来へと歩む意思だ。
それが特に強く描かれているのは二番の最後のフレーズ。

僕が引き受ける
いつかきっと届くだろう
未来も過去も根も葉もRumor

過去も含めて今がある。
今の姿を見て、改めて好きになった「僕」は過去も未来さえも引き受けて「君」と一緒に歩んでいきたい。
そういうメッセージで締めくくられている。

ここ数年のAKB48のシングル曲の歌詞を見てみると、『ジワるDAYS』、『サステナブル』、『失恋、ありがとう』と言うなれば「終わってしまった後」の曲が続いていたように思う。
「終わってしまった後」だとしても、君の行く道を応援しようという『ジワるDAYS』。
「終わってしまった後」だとしても、自分が信じ続けていれば終わっていないという『サステナブル』。
「終わってしまった後」だとしても、それをバネにして生きていくという『失恋、ありがとう』。

そういったこれまでの流れを断ち切るように描かれた、未来へと歩んでいく強い意思。
久しぶりのシングル、久しぶりの単独シングルとして相応しいものになっていると思う。


AKB48のオタクたる「僕」たちも、過去を引き受けて未来へとAKB48と共に歩んでいこうと思わされた。

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