「くぐるたびに穏やかなドラマ」
あわただしい駅の改札。
ラッシュの時間なのか、どっと人がおりて無表情な空間に
オセロが一気にならぶように黒い人々の波が広がる。
毎朝通勤で見かけるおじさんは、目が見えないようで
白い杖を片手に行先を探っている。
特に誰かに声をかけているわけではないけれど、
見かけるたびに、見知らぬひとがそっと手を差し伸べていた。
「大丈夫ですか」「手伝いましょうか」
ある人はコートを着た黒のハットがよく似合った50代くらいの熟年サラリーマン紳士、真面目そうな20代くらいのOL。
何も