君は「驚異の伸張法」をおぼえているか

「驚異の伸張法」。

それを初めて知ったのは、ジャンプだったかガンガンだったか。

あの頃、少年誌も少女誌も、巻末にはうさんくさい小物の通販や情報商材の宣伝が載っていた。
最近は読んでいないのでまだその広告があるのかわからないけれど、「サン宝石」は数年前に店舗ができていたので、きっとまだ掲載されているのだろう。

あのうさんくさいページには、夢があった。
鞄やベルトループにつけてアクセサリーにも。クールでキケンな香りのするアイテム、手錠。
これさえあれば気分は国家スパイ。盗聴器。
修学旅行先の土産屋で買うやつは土産用のオモチャじゃん?これは絶対本物じゃん?ヌンチャク。
これさえつければ女はメロメロ、俺の虜。フェロモン香水。
札束風呂で美女を二人はべらせるというよく考えたらわけのわからない絵面をうさんくさい広告の代名詞にまで押し上げた立役者(たぶん)、金運ブレスレット。

本当に効果があるのか。
よく見たら全部末尾に「!?」がついてる。(例:毛穴の汚れがこーーーんなに取れる!?)
ないっぽい。
でもほしい。
「たぶん嘘だろうな」とはわかっているのに、なぜか欲しくなる。

理屈ではどうにもできない、妖精の存在を信じたいようなそんな気持ちが、あの「!?」で締められた効果を本物だと言って聞かない。
あの気持ちは間違いなく、ロマンだった。

私は中学生の頃、そのうさんくさい情報商材を一つ、誕生日プレゼントに買ってもらったことがある。
それが「驚異の伸張法」だった。

たしか2万円くらいだったか。よく買ってくれたものだと思う。
「身長がぐんぐん伸びる!」という謳い文句に惹かれた私は、両親を「これは絶対本物だから!!!」と説得した。(騙されやすい人がよく言うやつですね)

ずっしりと重い段ボールが届き、わくわくしながら開封した。
中から出てきたのは、薄い教本の束と一本のビデオ、猫背矯正ベルト、それから振込み用紙と茶封筒。
使い方を読むと、なにやら教本に従って毎日エクササイズを行い、定期的に提出物を茶封筒で送ると修了証書がもらえるらしい。
振込み用紙は、提出物の採点を受けるためにかかる費用のもので、申し込み時と同じくらいの価格を定期的に振り込む必要があるらしい。

身長を伸ばすメソッドの修了証書って、何・・・?

全然いらないのでそんなものは振り込まない。
身長が伸びればそれでいい。

宇宙のパワーでも目覚めていそうな「サイバーメガネ拭き」みたいな表紙の教本にはヨガのポーズがひたすら載っている。
ヨガの呼吸法、内臓の位置を整えるという「鋤(すき)のポーズ」、そのくらいしか覚えていない。ていうかそのくらいしかやってない。

だって難しいんだもの。ヨガのポーズ。
頭の後ろに脚回んないし。

テキスト1冊目の3つめのポーズくらいまでしかまともにやったことがないかもしれない。
真面目に全部やらなかったからなのか、伸張法に効果がないのかは真面目にやらなかったのでわからないが、身長は成長期としては誤差くらいしか伸びなかった。

それでも、ヨガは気持ちよかったので別に効果が無かったとしてもいいかな、と思っている。
「身長がぐんぐん伸びる」とは言えないが、少なくともなんか気持ちいいのでおすすめしたい。

「伸張法」で検索すると、教本がフリマアプリでずいぶん安く売られていた。
自分の教本はたしか捨てたと思うけど、ちょっと「また欲しいな」と思ってしまっている。

よろしくお願いします!