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ヤツが来る

 ハラが痛ェ・・・。誰しも経験のあることだろうとは思うが、私の肌感覚では女性より男性の方が明らかに腹痛を起こしやすい。アポも取らずに急にやって来て人類を困らせる急なハラ痛のことを、私は憎しみを込めて『ヤツ』と呼ぶ。時に凶暴化し、罪のない私を恐怖のドン底に陥れる悪魔だ。聞きたくもないであろう話で申し訳ないが、今回は失礼ながらそんな『ヤツ』の癖のある凶悪な部分を紹介する。


本屋・図書館
 大型の本屋には長い時間滞在することができる。2時間位は全く平気だ。旅、教育、宗教、はたまた芸術部門の音楽、楽器、絵画、写真、マニアックなところで宗教や仏像などなど。図書館も同様であり、今の住まいに引っ越す理由の一つは図書館が近かったことである。休みの日にフラッと立ち寄ってさまざまな書籍を眺めて手に取る時間は何者にも代え難いものだ。
 しかしそんな至極の一時を、しばしば『ヤツ』が壊しに来る。なぜか本がたくさんある所にいると私はハラが痛くなるのだ。紙のせいなのか、印刷のインクのせいなのか。だから私は初めての本屋や図書館では、まずトイレの位置とその本屋の混み具合を確認することにしている。

空港
 何に対してもどんな時にも切羽詰まったギリギリは嫌いだ。ソワソワするからだ。時間がギリギリ、ガソリンがギリギリ、ここで今日『うん』と言ってくれなければ計画がオジャンになるギリギリ・・・。どれもハラが痛くなる元だ。私は電車を2路線乗り継いで通勤しているが、朝の最寄駅のホームでは乗る一本前の電車の発車を目の前で見送る。その後一番前に並び、次に来たいつもの電車に乗るのが決まりだ。乗り継ぎ駅でも同じく、到着している電車には乗らず、次に来る電車に乗るために一番前に並ぶ。そんな工程をたどりながら、職場に着くのは始業のおよそ1時間前だ。この話をすると人からは驚かれるが、私の中のスタンダードでありルーティーンでもあるので、今のところ変えるつもりはない。
 ところで空港というものは何もないのにソワソワするところだ。搭乗手続きを終え、そろそろ機内への案内が始まって・・・。フライトまでの時間がいよいよ無くなってきたよーというそんな時にニヤリと笑って『ヤツ』が来る。嗚呼。私は天を見上げる。連れの者には『も〜、もっと前に行っててよ〜』などと言われながら、私はトイレに駆け込むことになるのだ。『だって今まで大丈夫だったんだからしゃーないやろ!』と1人呟きながら。

バリウム検査
 年齢的なこともあり、定期的にガン検診を受ける。胃には微塵も痛みや違和感はないのでオプションの内視鏡(胃カメラ)検査は今のところパスしている。だって痛そうで怖いじゃないか。『今は口からじゃなく鼻から入れるからスムーズに痛みなく検査ができますよー』と案内には書いちゃいるが、鼻から⁉︎ 胃に⁉︎   冗談じゃない。
 ところであのバリウムというもの、以前に比べたら随分美味しくなった。なんだかフルーティーだ。氷と一緒にミキサーにかけたらスムージーになりそうでもある(ならんなw )。右だ 左だ 一回転だ と言われる例の撮影はともかく、胃の検査が済んだ後の問題は飲んでいるバリウムを、いかに早く体外に出すかである。
 検査前の問診時に下剤を貰うのだが、看護師さんに『便秘気味ですか?追加分も出しときます?』と聞かれた私は『いや、便通はいたって順調なので結構です』と最低回数分しか貰っていなかった。・・・それが悪かった。私は初めてバリウムが出ない苦しみを体験することになるのであった。下剤の効果虚しくとにかく出てこない。こんな時に限って『ヤツ』は来ない、来てくれないのだ。
 次の日に出なければ病院を受診するようにと書かれた案内書を見て私は便秘薬を買いに走った。緩下剤(かんげざい)と呼ぶらしいのだが、要するに下剤である。そして・・・。
 尾籠な話で申し訳ないが、便秘の後の下痢はすごい。かなり踏ん張ってやっと栓がボンッと抜けた後、間髪入れず大阪府のある地域に局所的なゲリラ豪雨が降ったのだった。・・・ゴメンなさい。


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