見出し画像

美容文化論 ー日本髪 種類②ー

《日本髪の型 つづき》

3.兵庫髷髷(ひょうごま((わ))げ)
 簡単にいえば 束ねた髪で輪を作り、余った毛先で『根』(ポニーテールをくくったところ)に巻きつけた髪型。『ひょうごまげ』とも『ひょうごわげ』ともいう。

立兵庫(兵庫髷の一種)
伊達兵庫(兵庫髷((横兵庫))の一種)

 初期の兵庫髷は立兵庫と呼ばれる高さのある細長い髪型だったが、時代が降ると下の画像のように蝶々が羽根を広げたような髷が出てくる。時代劇で花魁が描かれる時には一律に必ずこの髪型なのもおかしなことなんだけど、この『羽根』も 時代でかなり流行の形が変わる(髷部分の先端が丸みを帯びていたり尖っていたり)し、簪(かんざし)も地域によって(当時の三大遊郭である江戸吉原、京都島原、大坂新町)種類や差し方に特徴があった。
 ちなみに髪飾りとしての簪(かんざし)は、髪に刺す方の反対側は、耳かきの形をしている。これは元々本当に耳かきの役割をしていたんだけど(頭皮も掻いていた)、それが象徴として残った(今でも簪の先は耳かきの形をしてる)訳だ。同じ美容師であっても、髪結いを生業にされている方々は今も簪のことを俗称で『耳かき』と呼ぶ。


4.笄髷 (こうがいまげ)

笄(こうがい)

 笄(ま、棒ですね)を使って髪をまとめた髷の総称。起源は垂髪(すいはつ)の女官たちが、普段は長い下げ髪が作業の邪魔にならないよう、笄にクルクルと巻きつけてアップスタイルにしたのが笄髷の始まりらしい。もちろんONの時には髪を垂らしておく必要があったため、非公式な場だけの話。
 ちなみに『垂髪』は『すいはつ』と読むが、『御垂髪』になると『おすべらかし』になる不思議。

垂髪の女官(江戸時代)

 『こうがい』というのは『かみかき=髪掻き』の音便(おんびん)だという。言葉というものは得てして元の発音が変わる音便と呼ばれる変化をするが、『かみかき』から『こうがい』になるのは無理がないか? 『かみかき』➡︎『こうかき』➡︎『こうがき』➡︎『こうがい』、バンザーイ!バンザーイ!!は ちとキツいのではないだろうか?

 代表的な笄髷の一種である『先笄(さっこう、京都ではさらに縮まり さっこ)= 本稿テーマ画像』は、若い女性の髷として結われ、江戸時代後期には新婦の髪として定着した。既婚女性の髷としては江戸の「丸髷」に対して、上方ではこの先笄が長らく愛好されたのだが、もう一つこの髪型で特筆すべきは、舞妓さんが襟替え(舞妓を卒業し芸妓に昇格すること)直前のほんの僅かな期間だけ、儀式のように結う髪型だということだが、このことについては別稿にて。

 以上 種類①の1. から 種類②の4. までの4つが日本髪の構造上の種類だが、結髪の歴史は知れば知るほど奥が深く、興味は尽きない。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?