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「ひとりぼっちじゃない」⑤


原作を読む前の最後の感想。
(まだ読んでないんかい)

4/2(日)に観に行ったのが最後だった。
近隣での上映ラスト、4/6(木)にもう一度と思っていたのだけど、どうしても体調が整わず悔しかった。
だってこの作品、すごいパワー使うもん。頭チリチリ、脳シューシューになりながら熱を感じてしまうほど。
生半可なパワーでは見られないとあきらめた。

そもそもなんでこんなにこの作品にはまってしまったのか改めて考えてみた。
私は少しとろいところがあって、次々におそってくる場面転換とかセリフの早いやり取りとかが苦手。途中で考えてしまうのを諦めてしまうことがある。

伊藤ちひろ監督のインスタライブに参加してお話しされるテンポ、間が好きなのだと思った。緊張感がほぐれていく感じ。
『ひとりぼっちじゃない』にもその優しい間がずっと続いて、おいてけぼりにされることなくずっと映像の中に居られた感じがとても心地よかった。
こぽこぽ。いきいきとした緑。雑音もなく、湿度や気温をずっと感じた。宮子の部屋は誰にでも優しい。映画内では結果危険な場所でもあるわけなんだけど。

結果6回観て、新たに気が付いたことなどをつらつらと。
①~④の考察もお時間あればご覧ください。
どうぞゆっくりしていって下さい。



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〈新たな気づき〉
始めのころはススメ、ちゃんとコンコンとノックして呼び鈴押して宮子が招いてくれるのを待っている。
どんどん大胆になるところ、面白いな。
入るよーって声かけて勝手に入って行ったり、がちゃがちゃっと鍵がかかっているのに呼び鈴連打したり、ドア、ドンドンって叩いたり。本当は誰もが勝手に出入りしているのに。
ここは宮子との距離が縮まってきているとうーっかり勘違いしてしまうところ。
勝手にプリンとか食べちゃってマウント取りだしちゃう。
お風呂入ったり自慰で部屋を汚したり。自分のものだと思いたくなるんだよね。

蓉子と言い合いになる川のシーン。
一瞬あの世とこの世かと思った。または夢と現実。蓉子は力強く走っていったね。 
あの思い切りがないと脱出できないほど心地よい場所だったのかな。

6回目にしてやっと白いワンピースが小劇場に着ていったものと似ていることに気が付く。
これってお相手は「宮子ちゃん」と呼んだあの男性っていう匂わせなのかしら。
クレヨン…かなあ? 
あー、脱いでいたからわかんないんだよね。
ああ、ここ。ほんと面白いなあ。

最初の方は宮子と会話がほぼかみ合ってないのにスルーしちゃうススメ。
やっと最後の方で問い詰めていくことができるようになっていく。成長したね。

最後の別れの時、もう一度物置を開けるススメ。
なんてかわいそうな目で三角座りした自身を見ているんだろう。
とても印象的な表情だった。

最後のキス、ススメは思いの丈を込めて愛情深く大事そうにキスをするけれどそこで気が付いてしまう。宮子は目を開けて平然としているじゃないか、と。
ああ、僕は一人で恋をしていたのだ、恋人同士なんかじゃなかったんだ。
ずっとひとりぼっちだったんじゃないか、と。目が覚めた瞬間に思えた。


<謎からの考察>
結局「ススメ」は苗字なのか名前なのかわからなかった。
他にも車いすに乗せられた人、自死した人、背中にあたった何か、鏡に映った男、最後にほほを撫でた男、道路に横たわる宮子、突然消えた蓉子、最後の木彫りの宮子、牛柄のうさぎ。まだまだたくさん謎がある。
伊藤監督は正解は言わない、って言われていた。
うーん、どれだけ仲良しの友だちでもパートナーでも、そして自分のことだって理解できないことたくさんあるなあと思う。
このままずっとこれってどうなのかな?どういう意味があるのかな?って考えて自身の考えを文章や言葉にして他の方と話せること。これが「ひとりぼっちじゃない」、の正体のような気がしている。
この映画を通してたくさんの人と語り合えた。

そして、宮子の部屋はSNSの世界のようにも感じてきた。
SNSでも気の合う、見方の似た方と繋がる。
一見宮子の部屋のように心地よいが残念ながら現実に触れあい、温度を感じることはできない。
最後の最後で宮子の部屋、やっと外の音がする。電車の音がする。風の音がする。家にいてネットの中では感じられない外の音。
始めの嗅覚、味覚、聴覚の話しを思い出す。
ススメのように一歩踏み出して外界に触れ、自分以外の誰かと目を見つめて語らい、手を握り、温度を感じることが必要な時期だと感じた。
必要に迫られ色々と遮断されたここ数年、今からがそのタイミングだよと教えられたように感じた。
私にはこの作品はとても優しいメッセージに受け取られ、あたたかく、勇気をもらえた大事なものになった。


感想は以上です。

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ここからはざっくばらんに。
箇条書きにします。

<好きポイント>
▪ジャボチカバの実を口に入れられるところ。ころ、ころ…と音がする。この音好き。
食べてみたいな。

▪小劇場で最前列の男性のことを「知り合い?」って聞いてるのにわからない?スーパーの店員さんだよ?ってすっとぼける宮子。総じてすっとぼけているところがもうたまらなく好き。

▪小劇場のあと階段を下りながら文句言うところ。
のどぼとけ、首の筋のぴくぴくがイライラしてる感じが好き。

▪みやちゃんのこと、知りたくないんですか?の蓉子の目。うわあ。

▪ススメが鍵をしめてせっかく二人きりでいるのにピンポーンと鳴ったら扉を開けにいくところのススメの表情!イチ押し!
なんで開けに行くのさ、知らない男性が入ってきたらどうしよう、とドキドキとかイライラがじわじわ変わるところ好き。

▪物置のぞき穴からの目のぱちぱち。

▪道路横たわりからすっすっと歩き始める宮子と蓉子。なんとも言えない。
蝉のようにこそっと見ているススメがシュール。

まだまだたくさん。あげたらきりがないのでこのへんで。

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貴重なお時間をくださりありがとうございました。
また素敵な作品に出会えますように。
まるいち

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