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『怪物』だーれだ


『怪物』だーれだ

サスペンスだと思っていた
全然違った

静かに粛々と進むものがたり
多少の違和感がずっとつきまとう
のちのち事件が起こって誰が犯人?となるのかと見落とさないようじっくり観察しながら観た

けど思っていたのとまったく違った

視点が変わるだけで起こった出来事ってこんなにも変わるんだとぞっとした

そして前半と後半、同じ時系列が繰り返される

前半で感じた色々な違和感に答えが見つかり、はっとする場面がいくつもでてくる

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自身の中で起こる自然な感情を受け止めきれず“怪物”と呼んだのかな

親、大人目線のどろどろとしたものがたり、子ども目線のキラキラしたものがたりの対比が美しくて余計にもどかしかった

子どもの目線も人によってこんなにも違ってくる

始めのうちは校長先生の態度にイライラしていたけれどその態度にも色んな理由が隠されていることに気が付いていく

すると同情心のようなものが湧いてきて、なぜだかかばいたくなってくるから不思議
担任の先生もそう

色んな面を知っていくことでこんなに寛容になれるのは不思議


今ネットの誹謗中傷などが問題視されているけれども、当事者を多角的に知ることができると色んな事柄に寛容になっていけるのかなと感じた


後々、あの時の音が校長先生と湊の音と気が付いたとき、困惑した
静かに優しい、悲しいと感じたから
何かの遠吠えのように聞こえる


湊の父親の亡くなった本当の理由もあとからわかり、湊の母親があれだけお父さんは立派な人だと言っているのもわかった


始めはそんな部分を息子に強要するもんじゃないよ、と思っていたのに、あれは母親なりの精いっぱいの虚勢だったんだと理解


人は信じたいものを信じて生きているのだなと感じた


あの校長先生にだって守りたいものがあった

その中に夫から向けられる愛情に応える自身も含まれていたように感じ救われる

学校の地位や名誉、自身のことだけではない気がしたから

もちろん湊の件での学校でのやり取りには心底苛立ったけれども、穏便に済ませたい諸々の背景が分かると同情心も芽生えた


湊にはそれが出来なかった
まだ子どもだから
依里に対する気持ちを「怪物」だと思い込んでしまった

色々な経験を経て多少ずるく、うまくつきあっていけるものなのに

二人の秘密基地、インディアンポーカーの
なまけものの答えに依里の大人の部分が垣間見えた

きっと湊よりほんの少しのずるさを知っているような気がしてそれはそれで胸が痛かった
依里と父親との生活の中で身につけたものなんだろう

あふれる太陽の光といきいきとした緑、その中で戯れる二人は天使のようだった


最後はすべてのしがらみから解き放たれ自由になった二人
詳しい描写はなかったけれど私は二人がこの世から解き放たれたのだと解釈


長い線路を2人で手を取り合いながら揚々と渡っていく姿を想像した


そして美しいピアノの旋律に癒された
二人の世界を見守るような旋律が優しかった



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鑑賞後にパンフレットを買って喫茶店へ飛び込んだ
数々の写真がさらに癒してくれた
何かのタイミングが違っていたなら、もう少しずるく生きられたら
そんな言葉も吞み込んで昇華された

とにかく美しい映画
少年ならではの煌めき
ずるさを知らず、美しいからこそ胸が熱くなる
そんな映画だった


パンフレット 美しい写真の数々


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長くなりました!
ここまで読んでくださり、ありがとうございました

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