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『逃げきれた夢』感想(ネタバレあります)


お、重っ

不器用で作り笑いの父役
当たり障りのない嫌われない先生役
話の通じない老父の息子役
拒絶される夫の役
ほんとのことは言えない親友の役
なのに5年前の卒業生である教え子には少し本当のことを吐き出せる
不思議なバランスなんだけどあるある、って思わせる
近すぎて遠すぎて言えなかったり、会えるタイミングの頻度で言えなかったり、なんかわかるなあ

不器用で当たり障りのない感じでのらりくらりとしてきたことの積み重ねの結果だろうか
結局誰にも本音が言えない

酔っ払って駄々をこねるように、妻と娘に訴えるけども最後には自ら取り下げてしまう

年老いて会話の成り立たなくなった父には少し漏らすけれど、やはりぎこちない笑顔でカラ笑いが胸をギュッと締める


最後に教え子にぽろりと本音をこぼせたことがスッキリしたのか、歩く後ろ姿は今までのどの姿より元気に見えた
タイトルの夢は教え子の夢のことなのかな?
少し魅力的に思えたかも知れない教え子の夢に協力しちゃうのかとハラハラ

結局、教え子には
後悔しないように生きろ!
…いや、後悔してもいいか、と言葉をかけて別れるのだけど

そっか、あれは自分にも向けて言った言葉なんだな

この作品を見た人は
ああ、まどろっこしい、ここで親友に全部打ち上げれば良いのに!
妻と子にほんとのこと言えば良いのに!
少しくらい小狡い先生でも良いのに!
父にちゃんと聞いて欲しいと訴えればいいのに!
と思うんじゃないかしら

そしてそれは今生きている私たちにも言えること
後悔しても良い、こんな人生も悪くない
そして同じく後悔しても良いならもう少し本音を言ってみても良いんじゃないでしょうか、と優しく問いかけられた気がした


うーん。久々父に電話しよかな

まるいち

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