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銀シャリ橋本がスターになる為の戦略

この記事はYouTubeにアップした動画「銀シャリ橋本がスターになる為の戦略」の台本です。動画で見ることを前提に書いたものなので記事としては読みづらい部分があると思いますのであしからず。

動画はこちらのリンクからどうぞ。



芸人考察ラジオです。
いきなりですが、今回の結論を申し上げましょう。

銀シャリの橋本さんがスターになる方法、それは…
漫才界の東京03飯塚悟志を目指すべし。

この結論に向けて考察を進めていきましょう。

考察の動機

そもそも、なぜ橋本さんがスターになる方法を考えるのかというと、
9月27日放送、あちこちオードリーのなかで橋本さんご本人が「もう僕はスターになれない」と言っていたからです。

「漫才には自信があるけれどテレビタレントとしての自分には自信がない
テレビに出てる人は同期や後輩でも憧れて萎縮してしまう。」

という悩みを橋本さんは抱えているそうなんです。

周りの共演者から「橋本君はスターじゃないけど、劇場は確約されているよ」と言われると「なんでみんな、『銀シャリには舞台がある』って言うんですか。テレビにこんな出方がありますよって誰もアドバイスしてこない」と嘆いていました。

数々の芸人さんたちから才能を認められ、M-1グランプリの王者にまでなった人がこんな悩みを抱えているのか、と僕は番組を見ていてぐっと心が動きました。ただのイチお笑いオタクの意見に過ぎないですが、橋本さんがスターになる為の作戦を真剣に考えてみようと思ったのです。

そして考え出した結論が、先程申し上げた、漫才界の東京03飯塚悟志を目指す作戦です。飯塚さんと言えば、誰もが認めるコント界の大スター。主戦場をテレビではなくあえて舞台のコントに切り替えたことで、逆にメディアの内外で圧倒的な評価を勝ち取った方です。銀シャリも漫才界のスターになることで、舞台だけでなく逆輸入的にメディアでのポジションが確立できる。

どうして僕がこんな結論に至ったのか、あちこちオードリーでのご本人の発言を引用しながら解説していきましょう。

橋本はNO.2なのか?

まず、あちこちオードリーを見た全体的な感想としては、橋本さんに自信がなさすぎるな、と感じました。というのも、「どんなスターになりたいんですか?」と聞かれて「メインというよりは、みんなに重宝されるNO.2になりたい。南キャン山里さんや陣内智則さんのような系譜のスターになりたい。」と言っていたんです

確かに、橋本さんの現在の立ち回り、今オファーが来ている仕事はそういった二番手のポジションかもしれません。しかし、そこが自分にとってベストな居場所ではないんだということに橋本さんご自身はもう気づいているはずです。

なぜなら、「銀シャリは、誰の船にも乗っていない。お前はここのナンバー2だ、ナンバー3だと言われて船に乗っているわけではない」とご自身で発言されているからです。

しかし、例に上がった山里さんは世に出る前から千鳥さんのもとでNO.2の動きをしていたし、陣内さんも千原ジュニア軍団のNO.2でした。このポジションの素養がある人は、売れる前から先輩にその才能を見抜かれて、NO.2の役割を任されるのでしょう。

橋本さんはツッコミや司会の技術力があるので、つなぎ役の仕事をこなせてしまうんですが、本来のニンはNO.2ではないのです。もしNO.2のニンがあるなら、橋本さんほどの実力者は既にどこかの船から声がかかっているはず。

若林さんも「銀シャリは、よしもとなのに二人で漕いでるイメージがある
稀有な存在」だと評していました。どの船にも乗らず、つまりは誰の派閥にも入らずにここまでやってこれたのは、銀シャリはNO.1になるべき存在だからでしょう。そのNO.1というのが、僕は漫才界のNO.1だろう、と思うわけです。

そもそも、テレビが劇場よりも上という感覚自体が正しくありません。自分自身がベストな表現を出来る居場所があればいいわけでテレビに拘る必要はないんです。この価値観の転換を、コントの世界で実現させた立役者が東京03です。音楽のアーティストがライブの宣伝としてテレビに出るように
メディア出演をコントツアーの宣伝の為に使っていくという活動のスタイルを確立した東京03は、コント芸人に新しい生き方を示してくれました。
彼らに憧れた後輩の芸人たちはみな単独ライブ中心の活動スタイルを目指しています。

それはまるで、かつての橋本さんがテレビの中のジュニアさんやダウンタウンさんに憧れたからこそ、今でもテレビで活躍したい!テレビに出ていることが凄いんだという価値観を持ち続けているように、東京03は後輩コント師の目標となる新しい価値観を作り上げたわけです。

つまり、「スター」というのは後輩たちが憧れる新しい価値観を作り上げた人のことを言うのではないでしょうか?

過去のテレビスターが輝いていたから、今でもテレビの方が凄いと感じる。
ならば自分がスターになる為には、先人が作った価値観に合わせるのではなく後輩の為に次なる生き方を提示することが必要でしょう。テレビを目指すよりも、銀シャリみたいに漫才をした方が自由だし、稼げるし、カッコいい。そう思わせる新しい漫才師としての生き方を提示して古い価値観を転換させることで、漫才界のスターになれるわけです。

では目標が見えたところで、それに向けて出来る、具体的な3つの戦略をお話しましょう。

戦略①「後輩を育てて、最強の漫才師軍団を作る」

先程も取り上げましたが「誰の派閥にも入っていない」「よしもとなのに二人で漕いでる」という発言。これは番組内では、橋本さんと鰻さん二人だけの実力でここまでのし上がってきたから特定の先輩に懇意にしてもらったわけじゃないという意味で話されていました。

しかし、この言葉の裏には「銀シャリについてきている後輩もいない」という負の側面もあるわけです。良い意味でも悪い意味でも、今の銀シャリは二人のイメージが強いんです。

そして、佐久間さんのYouTube企画「銀シャリの天下取り将棋」。ここで、銀シャリが天下を獲る為に必要な共演者を自ら選んだ際にも名前を挙げたのは同期や先輩が多く、自分らを慕ってくれる後輩の名前は挙がりません。
同期から愛されてる自信は伝わってきて非常に良いんですが、それと同じくらい信頼できる後輩たちを育てていくのが今後は重要になるでしょう。逆にジャニーズの方々を語る時の雰囲気はとっても良かったです。若いころから彼らの成長を見守ってきたからこそ、お互いに良い信頼関係が築けているのでしょう。芸人、特に漫才師の後輩も同じように育てていく必要があります。

なぜなら、誰の船にも乗っていない以上、自分たちがNO.1になる覚悟を決めて、後輩たちを自分の船に乗せていく必要があるからです。

史上最強の漫才師軍団を作って、その中からM-1王者を輩出する。橋本さんが一番自信のある漫才を最大限活かす作戦はこれだと思います。

戦略②「漫才師として、圧倒的な集客力を身につける」

ここでは仮に、銀シャリの単独ライブ・センターマイク1本で武道館1万人を埋めること、とします。

なぜなら、後輩を育てているだけではただの指導者になってしまうからです。なので、後輩から何人M-1王者が出てこようとも、一番カッコいい漫才師は銀シャリだと、そう思わせる為に、1万人の前で漫才する圧巻の姿を後輩たちに見せる必要があるわけです。

更に言えば、普段のライブの動員数や配信チケットの販売数もトップクラスで居続けることが出来れば、軍団の後輩たちの経済基盤も安定させられます。「銀シャリさんについていけば、漫才だけでちゃんと稼げる。」圧倒的な実績と集客力を身に着けて、それを後輩たちに還元することで漫才師を夢のある職業に出来るはずです。

かつて島田紳助さんはM-1グランプリを立ち上げた際に「漫才に恩返しがしたい」と言いました。たしかに時代的にはお笑いは下火だったし、その中でも漫才はコントに比べて劣勢の立場でした。そんななか紳助さんはM-1を始めたことで「漫才師からテレビスターになれる」という夢を見せてくれたわけです。

しかし、それはあくまでも「漫才師」は出発点で、ゴールは「テレビスター」という価値観でした。

そして時代は変わり、テレビの製作費が右肩下がりで、テレビで稼ぐのは難しくなった。逆に、お笑い芸人でも大規模な会場のライブが出来るし、配信チケットも売れるようになりライブで稼ぐのが主流になりつつあります。
ここで、漫才師はテレビへの通過点ではなく「漫才師」そのものが夢のある職業であるという価値観を作り上げることが出来れば、その価値観を作った人は、新たな漫才界のスターになれるでしょう。

その為にも、漫才の技術や面白さだけでなく、集客力や圧倒的な売り上げも重要なポイントになるのです。

戦略③「漫才の歴史をまとめた学術書を書く」

正直、①と②の戦略は漫才が上手な芸人さんならどなたにも当てはまってしまうようなものだったかもしれません。しかし、この漫才の歴史を学術書にまとめる作戦は橋本さんにしか出来ないスペシャルな戦略です。

4月14日公開のYouTubeの中で、あの千原ジュニアさんが「橋本のツッコミ論を聴きたい」と言っていました。これは最大級の褒め言葉。ツッコミ芸人としての橋本さんの言葉には、理論を語れるほどの充分な説得力があるのです。

であればこの「ツッコミ芸人代表」のイメージを「漫才師代表」にするための一手が重要です。つまり「橋本のツッコミ論を聴きたい」ではなく
「橋本の漫才論を聴きたい」と思ってもらいたいわけです。

最近、いち漫才師から漫才師代表の格に上がったのがナイツの塙さんでしょう。漫才協会の会長に就任したことも影響しているかもしれませんが、一番大きいのは、やはり漫才本の出版です。ラジオや雑誌で喋るよりも、本という形にしてまとめると「こんなにも理論と分析がしっかりしているんだ」という格式高いイメージを持ってもらえます。塙さんはそのイメージがついたことで、M-1審査員のオファーが来たわけです。

この、真面目なイメージをつけることが出来る「本」の特性を最大限活かすためには、芸人さんが出しがちな苦労話のエッセイや自分語りの内容ではなく、歴史的な史料としての価値がある「漫才の歴史」をまとめた学術書を出すのがいいのではないでしょうか?

日本の芸能史に詳しい大学の教授などと連携しながら漫才の起源から最新のライブシーンまでを網羅した漫才の歴史書・決定版を出すわけです。

その中の目玉として、吉本が誇る伝説的な漫才師たちへのインタビューを橋本さんが行うと面白いでしょう。

このような、歴史をまとめる活動は、橋本さんが所属する吉本興業が全面的にバックアップしてくれるはず。なぜなら吉本は、「うちは歴史ある会社だ」というイメージが、のどから手が出るほど欲しいからです。

詳しく話すと長くなるので要点だけまとめると、今から110年以上前の1912年に吉本興業を作った創業家一族と、ダウンタウンを育てた大崎前会長ら現経営陣の間における経営権争いによって、現在の吉本興業は正式には、2007年に設立された新会社という扱いになっているのです。

しかし、今の吉本興業の主な取引先は、経産省や外務省をはじめとする政府機関や地方自治体など、公の団体。そんな公共の仕事をする時に重要なのが、出演するタレントの知名度や人気以上に、会社自体が有名で、なおかつ100年以上の伝統があるんですというイメージをもってもらうことなわけです。公の仕事に値する会社ですよという箔が必要なわけですね。よしもと100周年、110周年と年数を強調したイベントに力を入れるのも、吉本には歴史があるというイメージを持ってもらいたいからでしょう。

そんな吉本興業の代表商品である「漫才」の歴史をまとめる活動は、事務所が出来る限りのサポートをしてくれるはずです。西川きよし師匠や阪神巨人師匠をはじめとする名だたる漫才レジェンドたちやその漫才師たちを支えてきたマネージャーや作家、テレビの関係者さんたちに広くインタビューをすることが出来れば本の深みが増します。

もしかしたら、大崎前会長の協力があれば、紳助さんやダウンタウンさんへのインタビューも出来るかもしれません。

これをただのインタビュアーではなく、漫才師として実力も実績も充分な橋本さんが聞き手になることで、当時の出来事の羅列だけでなく、漫才の技術論を含めた深い漫才論が聞き出せるわけです。

メディアでのポジション

ここまでの話をまとめると、後輩の漫才師を育て、圧倒的な集客力を身につけて、日本イチ詳しい漫才の歴史書を編纂する。これをすることで業界関係者は「漫才のことなら橋本に聴こう」となるわけです。この空気が作れたらメディアでのポジションは約束されたようなもの。

東京03の飯塚さんにはコントの話を聞きたくなりますよね。
逆に言えば、コントについて話す場所には飯塚さんに居て欲しいからキャスティング会議で一番に名前が挙がる。最近の若手から、過去の名作、
今後作りたいコントの話まで全て飯塚さんから聴きたい。

かもめんたるの岩崎う大さんも、キングオブう大で審査・寸評してる時の
輝き方は凄い。この人がコントについてどう感じたのかみんなが聴きたいのです。

漫才の代表者になれば、こういう存在としてメディアに呼ばれ出します。
それなら橋本さんは自信をもって話せるし、その場を自分の教科書の空気に出来るはず。漫才論を自由に話していい場所でこそ、橋本さんの話術はより一層輝くのです。

そしてゆくゆくは、M-1の審査員を務めつつ、有吉の壁やにちようチャップリンのような若手ネタ番組の司会が出来たら最高でしょう。
「橋本に漫才を認められたら一流」という空気が出来たころに、そのイメージをコントやピンネタ・大喜利などの別競技にもスライドさせて、「橋本にネタを認められたら一流」という空気に出来れば、ネタ番組の司会にキャスティングしたくなるスタッフはいるはずです。

橋本のライバルは誰か?

では最後に、この作戦を行う際のライバルは誰になるか。

漫才本の編纂は非吉本の塙さんには難しいでしょうし、本の説得力が増すという意味で漫才の本場関西出身であることは博多大吉さんより優位な点でしょう。さらに現代漫才で最も大きな大会、M-1グランプリ優勝という肩書きも、お二人にはない橋本さんの強みです。

こうなると、ライバルはただ一人。
中川家の礼二さんです。同じ関西出身で、吉本所属。M-1王者である点も同じ。バックボーンが全く一緒でキャリアは向こうが10年以上上なので権威性では勝てません。

なので礼二さんよりも、橋本さんの話を聞きたいと思わせる何かが必要になります。僕はそれを「ライブ芸人の情報収集」だと考えます。自分たちと同じ劇場出番の芸人だけでなく、芸歴数年、ライブにしか出てないような芸人のネタまでチェックして「今、この若手が凄い」という話を常に出来るようにしておくことが礼二さんにはない強みとして活きてくるはずです。

レジェンド漫才師の技術論から、最新のライブシーンの若手のことまで話せる、幅の広い漫才専門家になれれば、礼二さんより橋本さんに話を聞きたいと思わせることが出来るでしょう。

橋本は目標を見失っている?

さて、このプレゼンを作るにあたって、過去のインタビューや出演動画を多数見返したんですが、橋本さんは恐らく、M-1を取ったあとから目標を見失っているのではないでしょうか。面白い漫才を作る・目の前のお客さんを笑わせる。その努力は誰よりもしているはずなのに思うような評価を得られない。活躍の場を与えてもらえない。一番大きな賞レースを取ってしまった今、何をすれば努力を認めてもらえるのかわからない。多くのインタビューを聞き返していると、そんな感覚なんだろうなと感じました。

ここからは、僕の仮説なんですが。芸人さんは、自分の才能・面白さを業界に認めてもらった次の段階では、いかに周りを輝かせたか、いかに周りの芸人が120%の活躍を出来る場所を作れたか。という基準で、評価される時期がくるはずです。松本さん然り、内村さん然り、ジュニアさんも有吉さんも
川島さんも若林さんも、周りの芸人が最大限のパフォーマンスを出来る環境づくりに心血を注ぎだしたタイミングがあるはずなんです。
自分の才能がもう認められつくした30代後半から40代前後の芸人にとっては、後進の育成をすることこそ、周囲から一番求めれ、感謝され、巡り巡って自分の評価をあげることになる重要な仕事なんです。

そういった意味でも、最強の漫才師軍団を作って若手にスポットを当てていく活動は、向こう10年の銀シャリのキャリアにおいて重要なピースになるはずです。

この、後輩を輝かせることで上がっていく「芸人の格」の話は
こちらの動画で詳しく話しているのでぜひご覧ください。ではまた。



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