妄想プロ野球日記〜その04.餃子の食べ方にうるさい山井さんの話〜

(今日の登場人物)

どうも阪神タイガース期待の新星・金城です。これを言うとキャプテンの糸原さんに「『期待』は良いけど『新星』は腹立つわ」って言われたことがありますが、僕はまだ新人でトガってるんで、心の中ではうるせえよと思ってます。

さあ今日は「餃子の食べ方にうるさい山井さんの話」をしたいと思います。


名古屋ドームでのオープン戦後、

反省会も兼ねて糸原さんと近くの餃子屋さんに行った。
優しい老夫婦が2人でやっていて、座敷が3つとカウンター6席の小さな店だった。暖簾をくぐり、やってる?と言わんばかりの雰囲気を醸し出して

金城「2人なんですけど、いけます?」

と言うと店主のおじいさんは何も言わずに、座敷の方に「どうぞ」という手をした。

金城「あ、いけるみたいです」

と言い中に入ると仕事終わりのサラリーマンで賑わっていて、僕らでちょうど満席になった。お通しの「ササミをゴマだれで和えたやつ」を食べながら、生ビールで乾杯してると1人のお客さんがやってきた。

??「あ、いっぱいだな〜」

店主が何を言わずに「ごめん」という手をして、そのお客さんが「ああ、いいよ」と顔をして少し店内を見渡した時に僕たちと目が合った。

3人「あ。」

山井大介さんだった。現在、プロ野球界で最年長現役投手のあの山井大介さんだった。日本シリーズで8回まで完全試合を達成しながら落合監督に交代を命じられたあの山井大介さんだった。というかこの独特なスポーツサングラスは絶対に山井大介さんだった。

※ということは先ほどの「目が合った」という表現は「目が合ったような気がした」の間違いです。お詫びして訂正を申し上げます。

糸原・金城「あ!おはようございます!」

山井「おー!お疲れ様!」

糸原「あ!僕たち全然1杯で出るつもりだったんで、ここ使ってください!」

山井「いやいやいいよ全然。1杯で帰らないでしょだって笑」

糸原さんの気遣いを僕は察した。恐らく最初に頼んだ餃子を全て持ち帰りにして、本当に1杯で帰るつもりだったんだろう。糸原さんは以前に「他球団の先輩ピッチャーには恩売っとけ。ノーアウトランナーなしの場面とかでは結構甘い球増えるから。これマジで。」と言っていた。

糸原「いやいや本当に!大介さんを手ぶらで帰らせるわけにいかないっすよ!」

糸原さんのオリンピック名言モジリが炸裂したが、山井さんは多分知らないようで。

山井「いやいやそんな。あ、じゃあ一緒食うか?俺出すからさ」

と不発に終わった。

糸原「いやいやそんなそんなご馳走になるのはアレですけど・・・!え、でも山井さんが嫌じゃなければ是非ご一緒させてください」

山井「じゃあスパイがてら一緒食うか。笑」

いい感じで挨拶と乾杯をすまし、お待ちかねの焼餃子6枚がやってきた。

山井「やっぱり1杯で終わる気ねぇじゃねえか笑」

糸原「すいません笑」

金城「糸原さんがそれ言った時、僕急いでお持ち帰り用のプラスチックあるか確認しましたよ笑」

糸原「バカ。言うなそれ。山井さん気遣うだろ笑」

山井「もう遣ってるわ笑」

僕がその間にタレを入れる醤油皿を用意して、酢+醤油+ラー油をいい感じで入れようとした時だった。

山井「まずは酢で食えよ!?!?」

一瞬ビクッ!!!ってなったけど、すぐに平静を装い「あ、そうっすよね!」と言わんばかりの笑顔で新しい醤油皿をもらいに行こうとした時だった。

山井「えーっとごめん。1,2,3,4...醤油皿15枚もらってくれる?」

一瞬15枚ッ!?!?ってなったけど、そこも平静を装って「はい!」と新しい醤油皿を15枚もらった。

そして山井さんは1人5枚ずつ醤油皿を1枚の取り皿の周りに等間隔に置き「山井流 餃子魔法陣」を完成させた。そして上から順番に時計回りにタレを入れていった。

1.酢のみ
2.酢+コショウ(多)
3.酢+醤油
4.酢+醤油(少)+ラー油+コショウ(少)
5.醤油+ラー油+ニンニク(少)

いや確かに美味そうなんだけどさ。美味そうではあるんだけど、せめて醤油皿2枚までじゃね?って思って周りの目が気になりずっと恥ずかしかった。

山井さんはどんな顔して食べてるんだろうとふと見ると、右手の人差し指と中指をピンと伸ばし、陰陽師のように空中を何度か斬るような仕草をした。そしてその右手を顔の前まで戻し小さく「・・・いただきます」と言った。サングラスでハッキリ見えなかったが目の奥にはうっすらと涙を浮かべていたようにも見えた。

そして山井さんはおもむろに紙とペンを取り出し「①1→2→4」「②3→4→5」「③1→3→5」と謎の暗号を書き出した。暗号⑧まで書き終えると山井さんは

山井「ほい。この順番で食うのがオススメだから」

とどのタレをどの順番で付けて食べるかまで指定してきた。さすがに粘り強いバッティングが持ち味の糸原さんも今回ばかりは粘り切れてなかったけど、5のタレだけは大絶賛していた。

そして話が盛り上がってる時に僕が暗号⑥チャレンジをして少し間違えると、山井さんはどんなに話が盛り上がっていても話を止め

山井「あ、そこ5のタレじゃなくて3のタレね」

といちいち指摘してきた。サングラスでよく見えなかったけど、恐らく瞳孔はギンギンに開いてたと思う。

山井さんは真剣な野球の話の中でも「俺はスライダーを投げる時は、水餃子の表面を撫でるイメージで投げてる」とか「監督の役割ってのは餃子で言うところの皮、大して味はしないけど皆そこを見てる。そして俺ら選手はもちろん餡。」とか「落合監督はマジで揚げ餃子くらい頭固ぇかんな」などいちいち餃子で例えてきて少し疲れた。

そして最後に糸原さんが

「山井さんにとって野球って何ですか?」

とプロフェッショナル仕事の流儀で最後にする質問をした。そして山井さんは「野球か・・・」とじっくり悩んでいた。そしてスガシカオ作曲のあの曲が脳内で流れてきて、ついに。

「ラー油かな。合ってもなくても良いけど、無いと寂しい・・・かなぁ。」

♪ずっと探していたー理想の自分ってーもうちょっとカッコよかったーけれどー

「やっぱり餃子は家族だったり友達だったりするし、野球は餃子じゃねえんだよな〜」

♪世界中にあふれているため息と〜

「酢とかコショウって言うとまた言い過ぎな部分もあるからさ。だから俺にとっての野球はラー油かな。あってもなくてもいいや」

♪君と僕の甘酸っぱい挫折に捧ぐ〜

「これから2人もさ、野球界で辛いことあると思うけどそれぐらいの気持ちで頑張った方が長続きするから。これから頑張れよ・・・。」

2人「・・・はい!」

♪あと一歩だ〜け前に〜進もう


「でもなんだかんだで、」

もういい、もういい。

〜その04.餃子の食べ方にうるさい山井さんの話〜おわり

※これらは全て妄想です。

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